菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『流れ星単独ライブ 力作』

流れ星 単独ライブ「力作」 [DVD]流れ星 単独ライブ「力作」 [DVD]
(2009/12/23)
流れ星

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流れ星の漫才は、漫才というよりも芝居という印象がある。一応、スタイルとしては典型的な漫才コントなんだけど(それこそアンタッチャブルサンドウィッチマンの様にオーソドックスな)、その内容があまりにも非現実的過ぎて、いわゆる漫才コントのカテゴリーとは違うモノになってしまっているような気がする。実際、彼らがこれまでに漫才の題材として取り上げてきたものを並べてみると、やれ「マグロの一本釣り」だの、やれ「プチ修行」だの、やれ「ゲートボール」だの、いわゆるオーソドックスな漫才とは一線を画したものが殆どだ。

それなのに、流れ星の漫才は決して分かりにくい作りにはなっていない。設定は異質だけれども、ネタが無意味に飛躍することはないし、マニアックすぎるボケが挿入されることもない。彼らが「爆笑オンエアバトル」で無傷の二十連勝を達成していることが、その事実を証明している。オーソドックスな笑いとは無縁の存在であるかのように見える流れ星の漫才だが、その背骨は間違いなくオーソドックスなのだ。そんな彼らが、どうしてM-1の決勝に行けないのか、不思議で仕方がない。なんでだろう。動きの表現がやたらと多いためだろうか。

そんな流れ星が、2009年8月に行った単独ライブを収録したDVDがリリースされた。タイトルは「力作」。M-1グランプリ2009の予選を目前に控えていた時期に行われた単独ライブらしい、漫才に力を入れていることが伝わってくるタイトルだ。ただ、収録されている漫才を見ると、意外とそうでもなかったり。

最初の二本、瀧上が「田舎に泊まろう」で訪れた謎の村でとんでもない事件に巻き込まれる『田舎』と、小学生の頃に体験しただろう学級会でのやりとりをツッコミを要せずに再現する『男女』は、かなりちゃんとしていたと思う。ちなみに『田舎』は、一部を改変したバージョンがM-1の敗者復活戦にかけられていた。今回の単独ライブの中で、最もしっくりいったネタだったのだろう。ここまでは良かったんだけどなあ。

この後で、かなーり愚図ついてしまった。具体的には書かないけれど、小さいハプニングが続いて、アドリブでフォローし続けた結果、本来の流れから外れすぎてしまった印象。まあ、そういうユルーい展開もまた単独ライブの醍醐味ではあるのだけれども、それなりに完成された漫才を観たかったなあ……という気もする。“躾ロボ”とか、“宇宙人をナンパ”とか、かなり面白くなりそうなキーワードがあっただけに。

2010年6月に結成十周年を迎える流れ星。M-1グランプリに出場できるのも、この年で最後になる。他のどの漫才師よりも面白いとまでは言わないにしても、独特の世界観を上手く反映した漫才は、もうちょっと評価されてもらいたい。この2010年大会でこそ、彼らの漫才をM-1決勝の舞台で見てみたいけれども……どうだろう。大衆向けにするための無個性で技術重視の漫才が評価されつつある昨今のM-1は、もはや流れ星の様なスタイルを受け入れられる舞台ではないのかもしれないなあ。それでもきっと、彼らは最後まで戦い続けるのだろうけど。むう。


・本編(97分)

「オープニング」「漫才:田舎」「ブレアヒッジプロジェクト」「漫才:男女」「生ける伝説 瀧上伸一郎」「漫才:躾」「ライブ直前 楽屋隠し撮り」「漫才:演技」「ちゅうえいプレゼンツ ~相方へ感謝を込めておもてなし~」「漫才:宇宙」「エンディング」

・特典映像(32分)

「“力作”ライブを振り返ってみよう」