菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ヒッシノパッチ』(カナリア)

カナリアLIVE『ヒッシノパ ッチ』 [DVD]カナリアLIVE『ヒッシノパ ッチ』 [DVD]
(2010/01/13)
カナリア

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テレビでは一言ネタばっかりやっているイメージの強い、カナリアの漫才とコントを収録した作品。なんでも、2009年9月に行われたベスト漫才ライブとベストコントライブで披露されたネタから、それぞれセレクションした内容になっているらしい。いわば、ベストオブベスト。本編には漫才が四本とコントが四本、特典映像には漫才が一本とコントが二本、それぞれ収録されている。また、特典映像には漫才やコントとは別に、漫才ライブ後に行われたという「カナリア歌謡ショー」なる謎の宴を収録している。なにがなにやら。

スーツ姿のイメージが強いためか、個人的に「カナリア=漫才師」という印象があったのだが、実際にネタを観ると、むしろコント師としての方がこなれている。極道映画に出演している女優のセリフが本来の極道映画の趣旨とはまったく違うものになっていく『萬田原志摩子』、子どもが拾ってきたペットを道端に返しに行くという定番のシチュエーションを司会者に置き換えた『司会者』、ラジオ番組のゲストにやってきた女性アイドルの奇妙な感性が浮き彫りになっていく『Music Box』など、しっかりとナンセンスな設定に下らないボケを盛り込んだ、安定感のあるコントを披露していた。なんでキングオブコントでは予選敗退してるんだろう……。

一方の漫才では、特定のスタイルにこだわらない多種多様さを見せていた。ボケ役の安達がボケを演じることを嫌がり始める『ボンと安達』(M-1グランプリ2009の敗者復活戦でも披露)、交尾の後でメスに食べられるオスカマキリの悲哀を真剣に演じようとする『カマキリ』、式の日は芸名ではなく本名で呼びこんでもらいたいというボン溝黒の要望をことごとく無視し続ける『結婚式』などなど。良く言うとフリーダムに笑いを構築しているということだが、悪く言うとカナリアならではの漫才のスタイルを見出せていないということである。彼らがM-1の決勝戦に勝ち上がることが出来ないのは、そういう芸人としての不安定さが関係しているのかもしれない。

そんな二人のネタを見ていると、ある三組の芸人が頭に浮かんできた。まず浮かんできたのは、同じくイケメンのボケが印象的なチュートリアル。続いて浮かんできたのは、絶妙に狂気の香りを漂わせている安達のボケと共通点が多い様に感じた野性爆弾。そして、イケメンとひょうきんという組み合わせから、キングコング。恐らく、カナリアというコンビは、この三組のお笑いコンビが混合することで生まれたキマイラ(遺伝子組み換え怪物)なのではないかという推論を立ててみたのだけれど……どうでもいいか。うん。


・本編(92分)

「漫才:ボンと安達」「コント:萬田原志摩子」「漫才:カマキリ」「コント:司会者」「漫才:結婚式」「コント:Music Box」「漫才:お年寄りを大切に」「コント:愛ゆえに…」

・特典映像(43分)

「フォークデュオカナリア歌謡ショー」「コント:マジックショー」「漫才:インストラクター」「コント:喫茶ボストン」