菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ご指名・ご購入ありがとうございま~す! ~笑いたいなら、一枚いかがですか?安心と実績、笑いの保証 約束編~』

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(2010/01/13)
とろサーモン

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とろサーモンは2002年4月、宮崎県出身の若者二人によって結成されました。うち一人の名は村田秀亮といい、吉本男前ランキングでは上位に食い込む程のイケメンでした。もう一人は久保田和靖といい、吉本ブサイクランキングでは上位二食い込む程のブサメンでした。同じ高校で知り合った二人は、卒業後にNSCを入るという約束を交わします。ところが、あろうことか、ただ質問に答えるだけで合格すると言われているNSCの入学試験で、久保田さんはうっかり不合格になってしまいます。うなだれる二人……しかし翌年、久保田さんは改めて試験を受けて、無事に合格を果たしました。そんな紆余曲折を経て、とろサーモンは結成されたのです。

とろサーモンのネタといえば、一般的には“シカト漫才”が知られているのではないでしょうか。“シカト漫才”とは、村田さんの話している話題で久保田さんがボケているのに、村田さんはツッコむことなく文字通りシカトし続けるというスタイルの漫才です。二人はこの“シカト漫才”を、土曜日の八時台を代表するバラエティ番組「めちゃイケ」の人気企画「笑わず嫌い王決定戦」で披露することで、一気にその知名度を広げることになりました。この番組が放送されたのは、2005年2月のこと。コンビが結成されてから、およそ三年が経過した頃でした。

それから更に二年半後の2007年10月、とろサーモンは初めてのDVDをリリースします。その名も、『ご指名・ご購入ありがとうございま~す! ~感謝してます編~』。これは同年5月に行われた単独ライブの映像に加え、7月に新しく撮影したベストネタの映像を収録した、まさに彼らの過去と現在が共存している作品でした。ちなみにこの作品は、本編の収録時間よりも特典映像の収録時間が長いという、あんまり売り文句にならないようなことをアピールした作品でもありました。そんなことアピールされましても。

今作『ご指名・ご購入ありがとうございま~す! ~笑いたいなら、一枚いかがですか? 安心と実績、笑いの保証約束編~』は、そんな第一弾DVDから二年三ヶ月後の2010年1月にリリースされました。その内容は、2009年10月に行われたDVD撮影用ライブの様子を収録したもの。つまり今作は、DVD撮影用に選抜されたネタを収録した、近年のとろサーモンの演芸を映し出したベスト作品だといえます。

しかし、実際にDVDを再生してみて、驚きました。というのも、オチが雑なんです。凄く雑なんです。久保田さんのボケも、村田さんのツッコミも、きっちりしっかり面白いのですが、とにかくオチが雑だったんです。元々とろサーモンは、それほどオチを重要視しないコンビではあったのですが、今作に収録されているネタは、かつて見せていた「あえて雑に見せている」という感じではなく、むしろ「オチが思いつかないから投げっぱなしにしている」という印象の残るものでした。

今作の一本目に披露されている漫才、『新谷さん』。これは、久保田さんがバイト先で好きになった女性「新谷さん」が、ある日突然いなくなってしまったのだけど、何処へ行ってしまったのだろう……と、村田さんに話をするネタです。新谷さんと村田さんを巡るエピソードによって構築されているこのネタですが、そのオチはなんと「それにしても新谷さん、何処に行ったんやと思う?」「知らん!」。……見事なまでの投げっぱなしです。新谷さんとの思い出話に終始して、新谷さんがどうしていなくなってしまったのか、新谷さんが何処へ行ってしまったのか、まったく触れないうちに漫才は終わってしまうわけですから。もちろん、オチを重視しない漫才は、他にも数多く存在します。ただ、「新谷さんが行方不明になった」という、とてもドラマを匂わせる導入であるにもかかわらず、こういう投げやりなオチにしてしまうのは、あまり良いこととは言えないでしょう。

でも、ネタ自体の質が落ちているわけではないんですよね。久保田さんが村田さんの舌になりたいという気色の悪い妄想を繰り広げる漫才『ベロ』、借金まみれになった男たちがボウリング場でボーリングの球を返却する仕事に精を出すコント『ボーリング』、駐車してはいけないところに自転車を駐車した男を注意してみたら頭がオカしい人だった漫才『自転車』など、久保田さんのオカしい雰囲気を存分に活かしたネタも、ちゃんと披露されています。ただ、一本目のネタがこういうネタだったので、観終わった後はあまり良い印象が残りませんでした。……まあ、少し前から、「とろサーモンのネタが投げやりになってきている」という評判を聞いていたので、そういう印象が強く残ってしまったというだけなのかもしれませんが。

そんな本編に対し、特典映像は物凄い内容でした。題して、「72時間寝させません!! こんなやったら芸人辞めたいくライアーゲーム」。このゲームは、密室に久保田さんを含めた数名の芸人を閉じ込めて、72時間寝なければ賞金を受け取ることが出来、寝てしまえば罰ゲームを受けることになってしまうというものです。これがまた、久保田さんの人間性が垣間見える内容で、とても面白かったです。こういう「電波少年」的な企画が、元々好きなほうだからだとは思いますが。人によっては嫌悪感を示してしまうかもしれませんけど、個人的には本当に楽しめました。ただ、こちらの特典映像は、レンタル版には収録されていないので、実際に購入されないと観られないという……どうしても気になる方は、頑張って買ってください。それだけの価値はあると思います。


・本編(65分)

「オープニングVTR」「漫才:新谷さん」「漫才:ベロ」「コント:結婚スピーチ 心底暗男」「漫才:万引きGメン」「VTR:2010 YUBI SOCCER」「コント:ボーリング」「漫才:自転車」「コント:バッティングセンター」「コント:隣人」「VTR:口紅妖怪を探せ!」「漫才:タクシー」「コント:変態が好きやねん」「コント:ごっこ」

・特典映像(49分)

「72時間寝させません!! こんなやったら芸人辞めたいくライアーゲーム

「屁を臭いヘラヘラ笑う人たちの会 SEASON 1」

「屁で濡れ衣を着せられた男の復讐 SEASON 2」