菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『エレ片コントライブ コントの人3』

エレ片コントライブ ~コントの人3~ [DVD]エレ片コントライブ ~コントの人3~ [DVD]
(2010/01/29)
片桐仁エレキコミック

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バカバカしい笑いを追求し続けているコント師エレキコミックと、知的でアーティスティックな空間作りで一部のお笑いフリークに高い支持を受けているラーメンズのモジャモジャの方こと片桐仁によるユニット、エレ片。2005年に活動を開始した当初は、お互いの持ちネタに客演する様な形式のネタを披露していた彼らですが、今ではすっかりユニットオリジナルのコントを量産できるほどの完成されたトリオコント師へと成長を遂げました。

エレ片のコントは、もっぱらエレキコミックの「バカ」な笑いを主流としたものになっています。まあ、ラーメンズのネタ書きを担当している人が無関係なユニットなので、そうなって然るべきだといえるでしょう。ちなみに、エレ片が結成される以前には、エレキコミックラーメンズによるユニット“エレラー”が結成されていたそうです。四国エレラー。……言ってみただけです。この二組は学生時代に知り合い、意気投合してユニットを結成。ともにプロデビューを果たし、現在でも付き合いがあるというのですから、凄いですね。

今作『エレ片コントライブ コントの人3』は、エレ片名義では六枚目の単独作品となります。2009年9月に東京・大阪・名古屋で行われたライブ「エレ片コントライブ ~コントの人3~」より、東京は新宿シアターモールで行われた回を収録しています。過去の「コントの人」においても、やはり「バカ」な笑いを追求していた彼ら。今回のライブでも、勿論そのスタイルが崩れることはありません。

例えば、混浴で女性のおっぱいを眺めたい男たちによる、白熱したリハーサルの様子を見せた『混浴大作戦』。ブサイクな女子高生二人組によるストリートライブと、そんな二人の行動にツッコミを入れ続けるもだんだんと曲の世界観に飲み込まれていくサラリーマンの葛藤を描いた『シトラスラベンダー』。元気をアピールする居酒屋のフルスロットルなテンションが、次々と巻き起こる異常な言動を当然のように繰り広げる『居酒屋頂上』などなど。シンプルなシチュエーションの中で縦横無尽にボケまくる三人の、活き活きとしたバカバカしさが堪能できる内容に仕上がっていました。

ところで、今作には副音声として、三人によるコント解説も収録されているのですが、それによると、今作で披露されているコントの何本かは、実話を元にして作られたそうです。そして実は(ダジャレではない)、上で名前を挙げた三本のコントは、その実話をもとにして作られたコントなのです。それを意識して観ると、これらのコントのシチュエーションは、いずれも現実に起こりうることばかりだということが分かります。つまり彼らは、実際に起こった出来事を土台にすることで、ただバカバカしいだけではなく、きちんと地に足着いたバカバカしい笑いを作りあげたということです。

それにしても、今の彼らの勢いは異常です。先にも書きましたが、今の彼らはもはや単なるユニットとしての範疇を飛び越え、一組のコント師として十二分に完成されていると言えるでしょう。その完成度は時々、“エレキコミック”“ラーメンズ”として生み出している笑いを、瞬間的とはいえ抜き去っているように感じてしまうことすらあります。そんな彼らを見て、ふと思うことがあります。もし、このエレ片というユニット名義で、キングオブコントに出場したとしたら、彼らは何処まで食い込むことが出来るのだろうか、と。……ひょっとしたら、決勝行っちゃうかもしれません。今の彼ら、それほどに勢いがあると思います。

なお、特典映像には、7月20日に行われた「エレ片フェス2009」のステージでデビューを果たした女性(?)ユニット“危険日チャレンジガールズ!”のレコーディング風景と、ステージでのライブ風景が収録されています。本編のガチンココントライブに対し、こちらの映像はとてもユルくて内輪向けの内容になっていますが、披露されている楽曲のクオリティはガチンコです。無駄に完成されています。真剣にバカをやっている三人の雄姿(?)を、堪能して下さい。


・本編(74分)

「激怒店長」「オープニング」「混浴大作戦」「卓球中年仁ちゃん」「帰ってきた出山」「シトラスラベンダー」「居酒屋頂上」「夏をかける少女」「エンディング」

・特典映像(12分)

「危険日チャレンジガールズ!物語」「危険日チャレンジガールズ!LIVE」

・副音声:エレ片3人によるコント解説