菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『キュートンDVD』

キュートンDVDキュートンDVD
(2010/03/03)
増谷キートンくまだまさし

商品詳細を見る

先鋭的コント集団、キュートンによる自身初の単独作品。キュートンとは、ピン芸人として活動している増谷キートン椿鬼奴くまだまさし、しんじの四人と、コンビとして活動しているアホマイルドの計六名から構成されており、昨今のお笑いブームにおける中心番組の一つ「あらびき団」で披露した“ポージング”ネタ(既存曲に合わせてカッコいいポーズをキメるパフォーマンス)が人気を博し、その知名度を急速に上昇させた。既に第二弾DVDを七月にリリースすることも決定しており、その人気は中途半端なものではない。

今作には、2009年12月5日にルミネtheよしもとで行われたキュートンライブ、その名も「ルミネtheキュートン」公演の様子が収録されている。お笑いナタリーに掲載されたレポートによると、当日は漫才も披露されたらしいのだが、それは収録されず。但し、それ以外のネタは、全て収録された模様(一部のネタは危なっかしすぎたのかカットされているけれど)。ジャケットの裏を見ると、収録されているネタは六本のみであるように見えるが、実際は“ポージング”を含めた様々なネタが収録されている。ネタの本数が少ないのではないかと危惧して、購入を躊躇している人は安心していいだろう。

正直言って、今作にはそれほど期待していなかった。「あらびき団」で観るたびに爆笑していた“ポージング”のネタは大好きだったけれど、彼らからほのかに漂うアンダーグラウンドな空気が、閉鎖的な笑いを生み出していることを予感させていたからだ。勿論、そういった笑いが嫌いなわけではないのだが……“ポージング”の様に、純粋に楽しさを追求した笑いを演じてみせた彼らには、そういう笑いが似合わないような気もしていたのだ。ああ、フクザツに揺れる乙女心。誰が乙女だ。

しかし、蓋を開けてみると、今作は“ポージング”と同じベクトルの楽しさを追求した笑いに満ち溢れていた。タイトルにまったく偽りのない『三文芝居・政権交代』に始まり、くまだまさしの大道芸を堪能できる『ボリショボイ大サーカス!』、椿鬼奴の歌声とアホマイルド高橋台本によるコントが余すことなく披露された『鬼奴&クニに乾杯!』、若手の芸人たちが自身のゲロネタを次々に披露していくコーナー『キュートンゲロネタSHOW!』と、とにかく一本一本のネタが総じて楽しい。一部音声がカットされてしまった『悪魔の黒ミサ』と、ライブパフォーマンスとしての色合いが強い最後のコント『海苔キュートン』は、やや消化不良ではあったが、演者や客席が心の底から楽しんでいるということが、よく伝わってきた。満足、満足。

それにしても、これまで単なるオツマでしかないと思っていたアホマイルド(“ポージング”でいうところの、腕に某コブラっぽいものを仕込んでいるレオタードの高橋と、まわしを締めているくまだまさしじゃない方の坂本によるコンビ)が、今作ではかなりの活躍を見せていたのには驚いた。まず坂本だが、こちらは弁が立ちぶりに驚いた。坂本は『キュートンゲロネタSHOW!』でMCを担当していたのだが、非常に声が良くて聞き取りやすく、安定した進行を見せていた。普通にバラエティタレントとして活躍できる技量があるのでは。一方の高橋は、とにかくネタを書く才能に長けている。『鬼奴&クニに乾杯!』で見せた彼の笑いは、シンプルでかつ下らなく、もう「面白い!」の一言だった。なんでも、あの“ポージング”ネタを開発したのも、彼だとか。うーん、凄い。

キュートンとしての活躍とは別に、アホマイルドのコンビとしての活躍にも期待したいところ。いや、本当に。


・本編(87分)

「三文芝居・政権交代」「ボリショボイ大サーカス!」「鬼奴&クニに乾杯!」「キュートンゲロネタSHOW!」「悪魔の黒ミサ」「海苔キュートン

・特典映像(12分)

「しんじ単独ライブ ~喰うばあああああああい~」「おまけゲロ その1、その2」

・副音声

キュートンメンバーによる本編オーディオコメンタリー