菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『キャン×キャン 単独ライブ“琉Tube”』

キャン×キャン 単独ライブ“琉Tube” [DVD]キャン×キャン 単独ライブ“琉Tube” [DVD]
(2010/03/03)
キャン×キャン

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別に何かしらかの思い入れがあるわけではないんだけれど、一度でいいから沖縄に行ってみたいと思っている。目的はない。別に思い入れがあるわけでもない。ただ、行ってみたいのである。行って、それなりの観光をしてきて、帰宅したときに「沖縄に旅行に行ってきたよ」と友人知人に触れ回りたいのである。でも、そこには何の理由も、意味もない。まあ、旅行というのは、往々にしてそういうものだが。

しかし冷静になって考えてみると、別に沖縄じゃなくてもいいじゃないか、という気もする。高校を卒業するまでは地元である香川で過ごし、大学の四年間を広島で怠惰を貪り、社会人になってからは再び香川にトンボ帰りした僕には、まだまだ足を踏み入れていない場所が嫌というほど存在している。それら数多ある未開の地の中から、どうして沖縄が一先ずの選択肢として浮かんでくるのか。

その理由は、沖縄には「非日常的な光景」が期待できるからではないか、と思う。僕らは日頃、日本的に築かれてきた様々な文化を肌で体感していて、それはそれで別に悪いというわけではないんだけれど、でもそればっかりだと飽きてしまう。どんなに美味しい食べ物だって、そればっかり食べさせられていたら食傷してしまうのと同じだ。そんな時、非日常的な時間を求めて旅行をしようというときに、自然と非日本的な空間へと足を向けてしまうのは、是当然の摂理だといえるだろう。

と、いうわけで、一度でいいから沖縄に行ってみたいと思うのだが、そう簡単に行くことは出来ない。もし行くとなると、フトコロと時間に結構な余裕がある時じゃないといけないし、それなりの準備もしなくてはならない。滞在時の宿泊施設の予約も必要だし、時間が限られているから出発前にきちんとスケジュールを立てなくてはならない……と、アレコレ大変だ。だからまあ、そういう面倒をきちんとこなせるような気持ちになるまで、僕はとりあえずキャン×キャンの漫才を観て沖縄を感じることにしている。これなら手軽だし、なにより面白いのがいい。

キャン×キャンの漫才には、沖縄の風が吹いている。もちろん、直に吹いているわけではない。本当に吹いていたとしたら、漫才中ずっと玉城の頭がパカパカ状態になってしまって集中できない。あくまで感覚的な話である。感覚的な話なので、理解できない人も少なくないのではないかと思う。でも、それは確かに吹いている。長浜が沖縄の土壌で育んできた感性より生み出されたギャグが爆発するたびに、玉城が沖縄弁混じりのツッコミを返すたびに、そこには沖縄の風が吹く。

「琉Tube」という、沖縄出身であることを全面的に押し出したタイトルの今作は、そんなキャン×キャンの沖縄愛に満ちた作品だ。本編では、お馴染みの漫才に加え、普段はあまり披露されることのないコントや長浜のピン芸、玉城のパカパカヘアーを徹底的にイジくり倒した幕間映像に身内ネタなどが披露されている。また、特典映像には、同じく沖縄出身のコンビしゃもじを加えた四人による「沖縄人にはすべらない話」を収録。沖縄なんくるないさー精神によって生み出される笑いからは、相変わらず南方の風がざわざわと吹き込んでくる。

ただ、この風は、純粋な沖縄の風ではないような気もする。ひょっとしたらキャン×キャンというコンビは、独自の文化が築かれた沖縄出身であるということを隠れ蓑にした、単なるイカれた二人組なのかもしれない。……ということを、長浜の「剣の舞」を使ったギャグを観たときに、ふと思った。やはり沖縄の風を感じるためには、現地に行かなくてはならないのかもしれない。うん。


・本編(70分)

「オープニング」「漫才~ひとつめ~(沖縄風番組/沖縄料理屋)」「パカジェクトX」「ペット番組」「親子クイズ~父~」「漫才~ふたつめ~(ゴキブリ)」「親子クイズ~母~」「ショートショート」「パカCHANGE」「親子漫才」「長浜之人」「漫才~みっつめ~(沖縄のヤンキー/検問/嫁)」「琉球ゲイバー」

・特典映像(40分)

「沖縄の人にはすべらない話」「玉城親子の楽屋」