菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「ヨーロッパ企画「曲がれ!スプーン」」(2010年5月19日)

ヨーロッパ企画「曲がれ!スプーン」 [DVD]

ヨーロッパ企画「曲がれ!スプーン」 [DVD]

 

ヨーロッパ企画第28回舞台公演『曲がれ!スプーン』を収録。2009年、本広克行監督が同名の映画作品を手掛けているが、今作はその原作である。ちなみに、本広監督が2005年に手掛けた映画『サマータイムマシン・ブルース』も、ヨーロッパ企画の舞台を映画化したもので、どちらも脚本をヨーロッパ企画の主宰である上田誠が担当している。DVDに書かれている上田の挨拶文によると、「映画版は可愛らしく心温まるニュアンスに、対して舞台の方はそういう要素を一切ナシに」とのこと。

クリスマスイブの夜、町外れの寂れた喫茶店“カフェ・ド・念力”に、特に共通点の無さそうな男たちが集まっていた。彼らの正体はエスパー。日頃は能力を隠して生活しているエスパーたちを集めて、ちょっとしたパーティをやってみようという魂胆なのである。電気器具を操作できる“エレキネシス”、人の考えていることを読み取る“テレパシー”、様々なモノを透かして見ることが出来る“透視”……それぞれの能力を披露していくエスパーたち。と、そこへ最後のエスパーが遅れてやってくる。あまりにも堂々としたその男の前で、改めて自分の能力を披露していくエスパーたち。ところが、実はその男はエスパーではなく、何の事情も知らずにやってきた単なるビックリ人間だった……! しかもこの男、この喫茶店で某番組のADと待ち合わせをしているという。果たしてエスパーたちの運命は……!

挨拶文の通り、この舞台には感動的な要素はまったく含まれていない。エスパーたちはエスパーならではの苦悩を語ることなく、お互いに絶妙な距離感でテキトーなやりとりを展開するばかり。でも、そのテキトーなやりとりが、なんだか心地良い。「透視でアダルトビデオのモザイクの裏見るんでしょ?」「テレキネシスで責任押し付けてきた工場長飛ばした」「時間を止めてキスしても固い」など、やけに男臭い話題が飛び出しているのも、心地良さの原因だろうか。大学生が麻雀をしながら会話をしているようなイメージ。そういう空気が好きな人なら、楽しめるかもしれない。

構成も良かった。ネタバレになるので書けないが、ゆっくりと二転三転するストーリーが非常にエキサイト……はしていなかったけれど、ドタバタとした流れが古典的なコメディの様で楽しかった。ヨーロッパ企画の舞台は『サマータイムマシン・ブルース2005』の時もDVDを鑑賞したが、その時よりも格段に展開が上手くなっているようだ。

感動も悲哀もない、ただただ冗談と雑談だけで構築されているような舞台のためストーリーに重厚さはないけれど、見ていて楽しい舞台だった。映画版……はどうなんだろうか。面白いのかな。


・本編(107分)
出演:石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力、山脇唯
・特典映像(40分)
ヨーロッパ企画のあすなろサイキック」「追加公演エピローグスペシャルバージョン」

・音声特典
中川晴樹、諏訪雅、上田誠本広克行による副音声解説