菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『チーモンチョーチュー』(チーモンチョーチュウ)

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(2010/06/23)
チーモンチョーチュウ

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チーモンチョーチュウ。変な名前である。客に覚えてもらう必要があるためか、お笑いコンビの名前は基本的に個性的でヘンテコだが、その中でも彼らの名前は特にヘンテコだ。なにせ、その名前の由来がさっぱり分からない。語呂の良さに着目したにしても、言葉が複雑過ぎる。気になったので調べてみたら、なんと「友達が有名格闘ゲームバーチャファイター」の必殺技“裡門頂肘(りもんちょうちゅう)”を“チーモンチョーチュウ”と言い間違えた」ことから由来しているのだという。ヘンテコなコンビ名は、その由来もまたヘンテコだった。

ちなみに、このチーモンチョーチュウという名前も、たびたびその表記を間違えられるらしい(チーモンチョウチュウ、チーモンチョーチュー等)。言い間違いから始まったコンビ名が更に間違えられるなんて、なんだか混沌としていて面白い。それ故に、所属事務所である吉本興業も、たびたび彼らにコンビ名の変更を提案していたという。それでも彼らは、頑なにチーモンチョーチュウという名前にこだわり続けた。一体何が彼らの意思を強固にしたのかは分からないが、そのヘンテコな名前に対し、彼らが非常に自己主張の強いコンビだということは間違いないようだ。

チーモンチョーチュー』は、チーモンチョーチュウにとって初めての単独DVDである。タイトルは、間違えられやすい自身のコンビ名を皮肉って付けたのだろうか。2010年4月12日に行われたライブ「THE BEST」の様子を収録しており、タイトルからも分かるように、これまでに彼らが生み出してきたネタから厳選された漫才・コントが披露された傑作選ともいえる内容になっている。ちなみに、ライブで流されたという幕間映像は収録されておらず、ただひたすらにネタ・ネタ・ネタのオンパレード。近年稀に見るストイックな内容に、些か驚かされた。

収録されているのは、六本の漫才と六本のコントに一本の映像コントの計十三本のネタだ。チーモンチョーチュウのネタといえば漫才のイメージが強かったのだが、コントもなかなか良い。ちょっとブラックなオチに走りがちな傾向はあるものの、漫才の余芸としてではないきちんとしたコントが披露されていた。中でも、内容のコミカルさにい対して、物凄いエンディングを迎えてしまう『ノリ輔おじさん』と『ぷにゅ公』は必見だ。暗転と同時に悲鳴が上がっていた……。

しかし、彼らの本芸はやはり漫才。今作では、『通販番組』『おばあさんを助ける』『三文字ゲーム』『百人斬り』『歯医者』『勇者』のネタが披露。厳選されたネタというだけのことはあって、相方イジリに直球な下ネタ、動きを多用したネタに言葉の余韻で笑わせるネタなど、様々なスタイルで高水準な漫才を楽しむことが出来た。中でも、彼らの代表作とも言える『三文字ゲーム』は、その完成されたフォーマットに改めて感心した。三文字だけで会話することで、通常のしゃべくり漫才の様に余計な言葉を必要としないため、中堅の漫才師の様に十分な間を用いた漫才を演じられる。実に、さりげなく凄さだ。この『三文字ゲーム』のスタイルは、現在だけではなくこれからも活用することの出来る、物凄いフォーマットだと言えるのかもしれない。

ヘンテコな名前のヘンテコなコンビ、チーモンチョーチュウ。しかし、彼らのネタは単なるヘンテコではなく、きちんと作り上げられたヘンテコだ。ふわっとした空気を保ちながら、実直に自身の笑いへと立ち向かっていく彼らは、果たして何処に辿り着くのだろうか。……案外、演芸場で高年齢層を相手に「三文字ゲーム」とかやっていたりするのかもしれない。あまりバラエティで活躍するイメージがないのだが……果たして。


・本編(129分)

「漫才1」「漫才2」「漫才3」「漫才4」「漫才5」「プロテインの魔人」「ノリ輔おじさん」「ぶにゅ公」「欧風雑技団」「白井クイズ」「コンビニ」「おまけ:下ネタ漫才」「おまけ:下ネタコント「診察」」

・特典映像(32分)

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