菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ザ・ギース『ALTERNATE GREEN』

THE GEESE ALTERNATE GREENTHE GEESE ALTERNATE GREEN
(2010/06/30)
THE GEESE(ザ・ギース)

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後には何も残さない。何も残らない。それを信念に、決して古びない笑いを生み出し続けている“ナンセンスの帝国”ことシティボーイズを師事している彼らもまた、同様の信念を抱いている。彼らのコントの後にも、やはり何も残さない。何も残らない。ただ、彼らにはまだ、シティボーイズのナンセンスな笑いの後に漂う寂しさが足りない。それを会得すれば、彼らは更に伸びるのではないかと思うのだが、そこまで似せる必要もない気もする。何にせよ、今の彼らのコントは、正統にシティボーイズのナンセンスを引き継いでいる。素敵なことだと思う。

そんなコンビ、THE GEESEにとって六度目となる単独ライブ『ALTERNATE GREEN』が無事にDVD化された。前作『Dr.バードと優しい機械』だけで終わることなく、こうして続けざまにリリースされるということは、きっとこれからの単独もDVD化されるのだろう。素直に嬉しい。彼らの様な職人タイプのコント師が生み出すライブは、きちんと作品として残るべきだ。なんなら、以前の単独ライブから傑作ネタを集めたベストライブなどもやってもらいたい。……贅沢かな。

それにしても、素晴らしいほどに意味がない。テレパシーが使える者同士が美容師と客という関係で接触するも特にドラマを起こさない『テレパシー美容室』も、某番組で取り上げられた「じゃない方」というフレーズを使用して繰り広げられるOLの会話の妙を描いた『じゃない方OL』も、芝居から現実へと切り替わる合図「カット」を巧みに利用したハイセンスコント『CUT』も、まったくもって意味がなかった。中でも『大人の階段』は、何か深い意味があるように見せかけておいて、実はまったく意味がないという、とてもナンセンス度の高いコントで大満足。コント師としての実力は、以前よりも格段に上がっているように思う。今年はキングオブコント決勝、あるんじゃないだろうか。

ただ、これらのコントは、些か設定の独自性に頼り過ぎている様な感もあった。前回の単独でもそうだったが、彼らはコントの設定を真面目に捉え過ぎているきらいがある。もっと設定を破壊して、更にナンセンスな笑いを生み出していけそうなのに、そこにいかない。あえてそういう作りにこだわっているのかもしれないが、個人的にはもうちょっと暴発した彼らの笑いが観たい。もうしばらくしたら、そういう笑いも生み出していけるようになるのだろうか。

シティボーイズの背中を真っ直ぐに追いかけているコント師THE GEESE。その活動が評価されたのか、今年のシティボーイズミックス(注:シティボーイズが年に一度行っているコントライブ。タイトルの“ミックス”は必ず客演が組まれることから)に、彼らの同胞であるラバーガールとともに出演することが決定している。敬愛する芸人の芸を間近に見ることで、彼らの芸にも大きな変化が表れる……そんなこともあるのだろうか。いざ行け、更なるナンセンスの深淵へ……!


・本編(71分)

「オープニング」「テレパシー美容室」「じゃない方OL」「男子ショートプログラム」「新メニューの試食」「CUT」「尾関オーディション」「大人の階段」「エンディング」

・特典映像(20分)

「カーテンコール」「舞台裏」「再演コント「AD」」「再演コント「妄想料理教室」」

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