菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『モンスターエンジンDVD2』

モンスターエンジンDVD2モンスターエンジンDVD2
(2010/06/30)
モンスターエンジン

商品詳細を見る

M-1グランプリ2008・2009二年連続決勝進出、キングオブコント2009決勝、第31回ABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞受賞。若手の芸人としては、かなり高い評価を得ているモンスターエンジン。しかし、その本芸を観る機会は未だに少ない。恐らく世間において彼らのネタといえば、神を名乗る上半身裸の男たちが戯れる『神々の遊び』や、不思議なブレスレットを身に付けた日から右手がモンスター化してしまった学生の日々を描いた『ゴッドハンド洋一』の様な、ショートコントのイメージが強いのではないだろうか。事実、M-1グランプリでの漫才も、キングオブコントでのコントも目にしている僕にとっても、モンスターエンジンのネタといえばそれらのショートコントが先に思い浮かぶ。

そういう意味で、モンスターエンジンはかなり微妙なポジションにあるコンビだと言えるだろう。賞レースの評価に対して、強く印象に残るようなネタはあまり作られていない。しかし、漫才やコントの様な本芸ではないショートコントが、世間で高く評価されている。面白い芸人なのか。それとも面白くない芸人なのか。その間で、モンスターエンジンはゆらゆらと揺れている。僕は彼らに対し、そういうイメージを持っていた。

モンスターエンジンDVD2』は、彼らにとって二作目となる単独作品だ。前作は自己紹介の意味を込めて漫才・コント・ピン芸などをバリエーション豊かに収録していたが、今作は『ゴッドハンド洋一』シリーズを中心に数本のオリジナルコントを収録している。まったくの余談だが、近々彼らのトークライブを収録した『モンスターエンジントーク』もリリースされるという。所属事務所が彼らに対して強く期待を寄せていることが、よく分かる。

収録されているコントを観てみると、これがまた統一感を感じさせないタイプのネタばかりで驚いた。砂を集めている高校球児たちに、生意気な小学生が非情な言葉を投げかける『高校野球』。海に行きたいと大林に持ちかけた西森が、当日になってまったく行く気を無くしてしまう脱力コント『海』。実家を取り壊すことになった老人が、壊される場所とともに今は亡き妻との思い出を生々しく訴えかける『とりこわし』。時に乱暴になり、時に理不尽になり、時に欲情する彼らの笑いをあえて言葉にするとしたら、それは“人間の生臭さ”なのかもしれない。……と思っていたら、『河川敷』の様にナンセンスなコントもある(説明するとネタバレになるので自粛。ただ、メチャクチャ面白い!)。どうにもこうにも、自由すぎる芸風だ。

正統派のフリをした歪んだ漫才を吐き出し、自身のスタンスがまったく見えてこないコントを作成し、片手間に作った様な中二病ショートコントを撒き散らし続けるコンビ、モンスターエンジン。彼らは一体何者なのだろうか。次回作『モンスターエンジントーク』を観たとき、その正体を掴むことが出来るのだろうか。


・本編(75分)

高校野球」「ゴッドハンド洋一1 修学旅行」「演歌」「ゴッドハンド洋一2 休み時間」「海」「ゴッドハンド洋一3 追試」「とりこわし」「ゴッドハンド洋一4 休み時間」「結婚の挨拶前夜」「ゴッドハンド洋一5 下校」「ゲームセンター」「ゴッドハンド洋一6 3ヶ月後」「河川敷」「河川敷~その後~」「漫才」

・特典映像(6分)

「教習所」

・関連記事

 ・『モンスターエンジンDVD』