菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『エルダーソルジャーズ』

エルダーソルジャーズ [DVD]エルダーソルジャーズ [DVD]
(2010/07/07)
内村光良さまぁ~ず (大竹一樹三村マサカズ)

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2009年11月から12月にかけて行われた、『ハンブン東京』『子どもさんかん日』に続く内村光良ウッチャンナンチャン)プロデュース舞台公演第三弾『エルダーソルジャーズ』を収録。タイトルは“高齢の戦士”を意味している。出演は内村光良、さまぁ~ず(三村マサカズ大竹一樹)、キャイ~ン(ウド鈴木天野ひろゆき)、杉崎真宏入山法子汐見ゆかり。なお、杉崎はかつて安井順平とのコンビ“アクシャン”として活動していた。脚本を内村光良の従兄弟にあたる内村宏幸、演出を工藤浩之が担当。

五人の中年男たちが、薄暗い奇妙な施設に拉致される。彼らはそれぞれ仕事も違えば境遇も違う、お互いに面識のないまったくの他人だ。そこに怪しげなスーツの男が現れる。男は防衛省のエリート役員を自称し、彼らを集めた理由は「国家の危機を救うため」なのだと五人に説明する。最近、巷で起きている爆破事件は国家に対するテロ行為であり、今後想定される危機的状況を対処するために、彼らは強制的に招集されたのだ。どうして彼らでなくてはならなかったのか。実は、彼らはそれぞれ特殊な能力の持ち主で、男はその能力に目をつけていたのである……。

先にも書いたように、『エルダーソルジャーズ』は内村光良プロデュースの舞台としては『ハンブン東京』『子どもさんかん日』に続く三度目の公演。過去二回の公演はいずれも人間ドラマの中にコント的な笑いを盛り込むストーリーになっていた。そのためか、それらのストーリーは何処となく偽善的で、都合のいい夢物語を構築しているようにも見えた。しかし今作は、とにかく笑いを重視した内容になっており、ドラマ性はあまり顔を出していない。特に、これまでの舞台に見られた人間ドラマの要素は、まったくと言っていいほどに感じられなかった。せっかく芸人を五人集めたのだから、徹底的に笑える舞台にしよう……という意図があったのだろう。

今作の最大の魅力は、それら五人の中年芸人たちの個性と合致した超能力のチョイスだろう。下ネタでお馴染みの三村マサカズは“時間停止”能力を駆使して、登場する女優たちにドン引きレベルのセクハラを繰り広げる。ウド鈴木は“超記憶”能力を使い、これまでに見聞きした全てのことを思い出したり思い出せなさそうになったり。この他、神経質の大竹は心を読み、アクション演技が得意なウッチャンはひたすら丈夫、なんでもそこそこ優秀な天野ッチは都合良く使えない予知夢……。それぞれのキャラクターを存分に活かした能力が当てられていたように思う。

ただ、超能力の設定が出演芸人たちの本来の持ち味を重視し過ぎていたために、少しばかり内輪ネタの傾向が強まってしまった感もあった。本来の芝居としての面白さよりも、出演陣がテレビで見せているような面白さを、彼らのことを知っていることを前提として観客が楽しんでいるような、そんな空気を感じたのである。これは芝居の楽しみ方、見せ方としてはどうだろう。そういう笑いをすべきではないとは言わないが、それが強く見えてしまう、感じられてしまう舞台は、僕は宜しくないと思う。それは逆に、そういうことを気にしない人には、純粋に楽しめる舞台と言えるのかもしれないが。

あと、この話とは別に、大竹一樹のキャラクターがいまいち把握されていなかったことが、ちょっとだけ気になった。いや、厳密に言うと、過去二回の公演においても、大竹の演じるキャラクターは何処か人間的な部分がテキトーに扱われていて、それが今回も気になった……と書くべきだろう。それだけ人間性が見えてこない人、ということなのだろうか。うーん。

ウッチャンナンチャンウリナリ!』『内村プロデュース』など、ウッチャンメインのバラエティ番組を楽しく観ていた人ならば楽しめる作品……というか、メインの五人が好きな人なら、ごく当たり前に楽しむことが出来る作品だと思う。ただ、そこそこ芝居を鑑賞した経験がある人は、たぶん今作に違和感を覚えるんじゃないか。だって、別に芝居である必要がないからね、こういう笑いを生み出したいのなら。でも、じゃあダメだったのかというと、それはそれで判断が難しい。面白い芝居だったことには違いないので……。


・本編(DISC1:124分)

・特典映像(DISC2:115分)

「メンバー自己紹介」「笑いに包まれた稽古風景」「笑いに包まれた舞台裏風景」「本公演中の色んなコト…」「日替わりゲスト」「メンバーが語る思い出のシーン」「千秋楽…」