菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ハマカーンネタベスト「カードボード、ウォレット&スリー・ボクサーパンツ」

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(2010/07/21)
ハマカーン

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気付けば、ハマカーンのことを七年以上も見守っている。キーストンプロというこじんまりとした芸能事務所に所属していた彼らは、その当時あんまり面白くない漫才を演じていた。それがゆっくりと面白い漫才を演じるようになり、“下衆の極み”という印象的なフレーズを用いた漫才を開発し、昨年にはM-1グランプリ決勝の舞台に進出するのではないかと言われるようになったのだから、どうなるものか分からない。あの頃、彼らのことを“つまらない”の一言で切り捨てていた人たちは、今の彼らの姿をどう捉えているのだろうか。……案外、喜んでいたりするのかもしれない。厳しい目で見てきた芸人が、無事に花開いた姿を見て。

今作は、そんな“下衆の極み”というフレーズを用いた漫才で注目を集めるようになったお笑いコンビ、ハマカーンのベストネタを披露したライブ「はまかん大辞典」を収録した作品だ。ハマカーンといえば漫才のイメージが強いが、今作に収録されているネタの殆どはコントである。実は、彼らはコント師としてもそこそこに注目を集めており、昨年のキングオブコントでは準決勝に進出している実力者だ。見ると、そのコントは確かにソツがない。誘拐犯の身代金受け渡しの場にホームレスの格好をして現れた刑事が、ついついなりきりすぎてしまう『身代金』。お互いのあまり公表したくないエピソードを暴露し合う『ノンフィクション作家』。かつてのクラスメートの話をする浜谷、しかしその正体がどう考えてもアレな『宇宙人』。いずれも確かに安定して面白く、それなりに笑えるコントだ。ただ、それらのコントは全て、ハマカーンじゃなければならないというほどの出来ではなく、あまり良くない言い方をするならば単独ライブで披露される程度の出来。面白くないわけではなく、むしろ面白かったのだが……彼らじゃなければ表現できない笑いは、そこにはなかったように思う(浜谷による神経質さを匂わせるボケの根底にはさまぁ~ず大竹の気質を感じた点は些か興味深かったが)。

一方、僅かに収録されている漫才は、その多くが“下衆の極み”漫才という布陣。こちらは流石の安定感を見せており、いずれも浜谷の「下衆の極み!」という決めフレーズが非常に心地良く響いていたが、そのフォーマットを用いない漫才が観たかったような気もする。まあ、そちらは既存作品『ハマカーン in エンタの味方!爆笑ネタBEST10』を観ればいいのだろうが……彼らのことを知ろうと今作に手を出した人に、もっと彼らの漫才を知ってもらえるいい機会だったと思うので、なにやら惜しい。

ただ、ハマカーンの現状を窺い知ることが出来るという意味では、今作はやはり貴重。副音声に収録されているオーディオコメンタリーを含め、彼らのことをより深く知ることの出来る作品なのではないかと。


・本編(68分)

「本の妖精」「漫才「海」「身代金」「ボクサー」「漫才「ロボット」」「ノンフィクション作家」「ストリートミュージシャン」「宇宙人」「漫才「ゴキブリ」」「漫才「ラーメン」」「10年後」

・特典

映像:「浜谷柔道五番勝負」(22分)

副音声:ハマカーンによるオーディオコメンタリー