菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

バナナマン傑作選ライブ「bananaman Chop」

バナナマン傑作選ライブ bananaman Chop [DVD]バナナマン傑作選ライブ bananaman Chop [DVD]
(2010/07/28)
バナナマン設楽

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お笑い芸人がベストライブを行うことがある。ベストライブというのは、文字通り過去の単独ライブなどで披露してきたネタを改めて再演するライブのことだ。世間にそこそこ名前が知られるようになった芸人が行うことが多く、その知名度によっては公演がDVD化されることも少なくない。過去の例でいうと、アンジャッシュ、インパルス、陣内智則バカリズムラーメンズなどの芸人は、ベストライブを行った経験がある。いずれも、ネタの面白さには定評のある面々ばかりだ。

関東のアンダーグラウンドでコントを作り続けてきたバナナマンも、2006年からベストライブを行っている。が、バナナマンのベストライブは、他の芸人のベストライブとは些か状況が違う。というのも、バナナマンのベストライブは、その内容の殆どが過去の単独ライブDVDに既に収録されているネタなのだ。先にも書いた様に、ベストライブを行う芸人の大半は、世間にそこそこ名前が知られるようになった芸人なのだが、これは過去のネタを観てもらえる機会がないから行うという趣が強い。いわば「これまでの僕たちを見てください」と芸人自身が言っているわけだ。しかし、バナナマンの場合、それらのネタの殆どが既に単独ライブDVDとして世間に公表されている。これは一体、何を意味しているのか。

これはあくまでも個人的な見解だが、バナナマンがベストライブを行い始めた2006年の頃、彼らはスランプに陥っていたように思う。最初にその雰囲気を感じたのは、2004年の単独ライブ「Elephant pure」だった。それまで手放しに面白かった彼らの単独ライブが、この年から微妙に退屈になってしまったのである。その原因となったのは恐らく、事務所の吸収合併だ。そもそも彼らはM2カンパニーという事務所に所属していたが、この単独ライブが行われる前の年に同事務所はホリプロコムに吸収合併されている。時期的なことを考えても、この環境の変化が彼らのライブに少なくない影響を与えたことは、ほぼ間違いないだろう。バナナマンがベストライブを始めたのは、丁度そういう時期だった。

その状況から察するに、もしかしたら彼らにとってベストライブというのは、いわば芸人としての確認作業といえるのではないだろうか。過去に披露してきたコントの数々を再演することで、これまでに自らがどのようなコントを演じてきたのか、改めて認識するために、ベストライブと称して過去のコントを演じてみせたのではないだろうか。もちろん、あくまでも推測である。

バナナマン傑作選ライブ『bananaman Chop』は、『bananaman Punch(2006)』『bananaman Kick(2008)』に続く傑作選シリーズ第三弾だ。今回、これらのシリーズをまとめたDVD-BOXも同時発売されているので、傑作選ライブはこれで一区切りを迎えたということなのだろう。バナナマンのきちんと代表的なネタを抑えた“Punch”、個性の強いネタを中心にまとめた“Kick”と比べて、“Chop”は全体的に捻りの入ったネタが選ばれている印象を受けた。特に『ブルーフォーブラッフォーガングリフォン』が再演されたのには驚いた。また、今作で再演されているネタの大半は、彼らがスランプに陥っていた頃の単独ライブで披露されたネタでもある。もしかしたら、リベンジとしての意味もあるのかもしれない。

収録されているコントの大半は既に観たことのあるネタばかりだったので、特に大きな感動を覚えることはなかった。ただ、日村が女性だということが発覚する初期コント『The truth』を観ることが出来たのは、少し嬉しかったか。過去のライブで披露されたコントも、中身が今風に改変されていることが多く、色々と見どころの多い内容だったと思う。

現在はスランプを脱し、きちんと面白い新作コントを生み出し続けているバナナマン。もはや彼らに過去を振り返らなくてはならない理由などはないが、また思いついた頃にこういうライブをやってもらいたい。ただ、どうせやるのなら、DVD化されていないネタの方が、個人的には嬉しいのだけれども。『土下座』とか『統と亀』とか、観たいなあ。


・本編(133分)

「ブルーフォーブラッフォーガングリフォン」「pumpkin」「The truth」「Destroy the composition」「先輩とオマエ」「ハナからのハジマリ」「赤えんぴつ」

・特典映像(5分)

「赤えんぴつ(オマケ)」