菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『JARUJARU IN LONDON』

JARUJARU IN LONDON [DVD]JARUJARU IN LONDON [DVD]
(2010/09/29)
ジャルジャル

商品詳細を見る

今をときめく若手コント師ジャルジャルが、イギリスの都市ロンドンでライブを行ったという。ロンドン。僕には縁のない街だ。ビートルズの音楽は大好きだし、シャーロック・ホームズのドラマも大好きだけれど、これから先の人生においても、僕がロンドンと関わりを持つことはないだろう。まあ、ひょっとしたら、どうなるか分からないが。人生、一寸先は闇である。目測通りに進むとは限らない。

それにしても、どうしてジャルジャルはロンドンでライブを行ったのだろう。ロンドンに思い入れがあるのだろうか。なんでも後藤はビートルズのファンらしいから、ひょっとしたらそうなのかもしれない。ただ、思い入れのある場所だからといって、わざわざそこでライブをやろうという発想にはならない筈だ。では、何故。特典映像に収録されている記者会見によると、彼らはロンドンでもファンを獲得することを目的として、今回のライブを行ったという。……なにやら、釈然としない。それならば、エンターテイメントの本場というイメージがあるアメリカでやった方が、ロンドンよりも幾らか良かったのではないか。無論、勝手な言い分である。

さて、本編を見ると、イギリス人の観客を相手に、慣れないロンドンの舞台でコントを披露する二人の姿を観ることが出来る。当然だが。二人が演じているコントのうち半分は、既に『ジャルジャルの戯』(※ジャルジャルの代表的なコントを収録したシリーズ。全三巻)で披露されたネタで、残りの半分は、『サイン長い奴』『着信あり』『くしゃみとゲップとあくび』など、初めてDVD化されたネタである。なかなかいいバランスだが、鑑賞後は深く物足りなさを覚えた。きっと、全体のネタの傾向のためだろう。

今作で披露されているコントの多くは、『ハンドイートマン』『柔道』『手押し車』などのシンプルでアクション性の強いネタだ。おそらく、ロンドンでの公演を意識して、そういった類いのネタを選択したのだろう。だが、その結果、コントライブとしては些か偏った構成となってしまった。言葉の通じない観客を相手にしている以上、それは仕方がないことなのかもしれない。ただ、それならば、落語の海外公演の様に、字幕を表示する装置を使えばいいのではないか、という気もする。……実はこのライブ、イギリス人の観客を収容しておきながら、ジャルジャルのセリフは全て日本語、その言葉にまったく解説がなされないという、なんとも不親切な演出を取っているのである。エンターテイメントの送り手として、この対応はどうなのだろうか。

どうも今作は、「ロンドンで公演を行う」こと自体が目的で、それさえ出来れば後は特に何も考えていないようなところがあった。はっきり言ってしまうと、彼らの所属事務所が「ウチの芸人はロンドンで単独公演をやった」という結果を残したくて、無理やりやらせたような印象を残したのである。もしも、彼らが本気でロンドンのファンを増やそうと考えていたのだとしたら、これから先のことも視野に入れた内容にする筈だ。その割には……どうも……。

ジャルジャルコントライブDVDを観るのであれば、今作よりも圧倒的に『ジャルジャルの戯』をオススメしたい。今作でもネタを堪能することは出来るが、バリエーションという意味ではまったくもって宜しくない。ただ、ロンドンの観光名所ではしゃぎまわる二人の姿は、なかなか和やかで楽しげではあった。そういう一面が見たい人には、向いているかもしれない。


・本編(94分)

「ハンドイートマン」「ゲロ吐く言うて屁こく奴」「サイン長い奴」「水泳部部活紹介」「着信あり」「デッサン」「柔道」「理解不能者 ~野球部入部~」「手押し車」「ジェンガ」「ストリップ」「くしゃみとゲップとあくび」「JARUJARU IN LONDON 完全密着ドキュメント」「AIRLINE」

・特典映像(41分)

ジャルジャルのロンドン観光」

ジャルジャル VS ロンドンの人々」

「シチュエーションコント「監督と助監督」「写真撮影」「サイン長い奴」「タツヤとジョージ」」

・副音声

「JARUJARU LIVE IN LONDON 解説」