菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

平成ノブシコブシ初・単独ライブDVD『御コント ~今宵の主役はどっちだ~』

平成ノブシコブシ 初・単独ライブDVD 御コント ~今宵の主役はどっちだ~平成ノブシコブシ 初・単独ライブDVD 御コント ~今宵の主役はどっちだ~
(2010/10/20)
平成ノブシコブシ

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“破天荒”で知られているお笑いコンビ、平成ノブシコブシ。気が付いた頃には、そんなイメージがすっかりと定着してしまっていた。どうして彼らが“破天荒”であるという認識が出来てしまったのか。答えはハッキリしている。彼ら自身が自らをそう呼んでいたからだ。いや、厳密に言うと、テレビでそのように紹介されていたから、である。少なくとも、僕が平成ノブシコブシのことをテレビで初めて見た時点で、彼らは既にナレーションで“破天荒”なコントをするコンビだと紹介されていた。

ところで、“破天荒”とはどういう意味なのだろうか。手元にある新明解国語辞典を引いてみると、【誰もしたことのないことをする様子。異例の。突拍子も無い】とある。つまり、これまでのお笑い史において、一度も見たことがないような存在のことを意味している、と捉えていいだろう(厳密に言うと間違っているが)。では、平成ノブシコブシが、それに該当するコンビなのかというと、それは違う。当時の彼らが見せていたコントはエネルギッシュで勢いがあったが、決してこれまでに見たこともないと断言できるような、そんな芸風ではなかった。

とどのつまり、彼らは決して“破天荒”ではないにも関わらず、“破天荒”であると自らをアピールし、そのイメージを定着させたわけである。これが結果的なことなのか、それとも意図的なことなのかは分からない。ただ、いずれにしても、この“破天荒”という今の時代ではあまりお目にかかることのない言葉を自らのキャッチコピーにしたことで、彼らはその存在感を今の今まで残すことに成功したのは事実だ。上手いことやったね、しかし。

そんな平成ノブシコブシも、2010年で結成十年目を迎えることとなった。今作はそんな節目の年に行った単独ライブ『御コント』の様子を収録した、彼らにとって初めての単独DVDである。その内容はなかなかSF的。ツッコミを担当している徳井健太の誕生日が一日ズレていたとしたら、彼は今とは全く違った人生を歩むことになっていたのかもしれない……という前提から、平成ノブシコブシ”が存在しないパラレルワールドにおける徳井の半生をコントで表現している。正直、大した内容ではないだろうと高を括っていたので、この凝った設定には些か驚かされた。しかし、設定だけ凝っていても、コントの内容が伴っていないというのもよくある話。どうせ、茶を濁すようなコントが殆どで、大して面白くないんだろうなあ……と、やっぱり高を括っていた……の……だが……。

今作は傑作である。事前にハードルを低く設定していたことも影響しているのかもしれないが、完全にしてやられた。本編141分、まったく手抜きが無い。コントのシチュエーションもそれぞれに凝っていて、時に下らなく、時に無意味で、時に切ない。それぞれに違った面白さが、安定したボケとMADなツッコミで繰り広げられていく。結成十年目は決して伊達じゃないことを感じずにはいられない、キチッと笑えるコントの連打に度肝を抜かされた。本当に、こんなに面白いとは思わなかった。個人的には、事故で意識不明の友人が無理やり参加しに来る合コンコントと、沢山の芸人が出演する某アーティスト追加メンバーオーディションコントが印象的。どちらもゲスト出演のピース又吉が、彼らの世界観に上手く馴染んでいた。そういえば又吉は、平成ノブシコブシと同期でユニット「ラ★ゴリスターズ」でも共演している。馴染むのも当然か。

現在、若手芸人番組『ピカルの定理』に出演している平成ノブシコブシ。かつて、同様に若手芸人番組『コンバット』でレギュラーとして活躍していた彼らにとって、これはまたとないチャンスかもしれない。コンビ結成十年目の節目、彼らは今作と同様に、テレビでも傑作ぶりを見せることが出来るのか。活躍を望む。


・本編(141分)

「漫才」「1980年9月 徳井健太0歳」→「2031年3月 徳井健太50歳」

・特典映像(48分)

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