菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

インスタントジョンソン単独ライブ『阿修羅』

インスタントジョンソン単独ライブ「阿修羅」 [DVD]インスタントジョンソン単独ライブ「阿修羅」 [DVD]
(2010/10/27)
インスタントジョンソン

商品詳細を見る

太田プロに所属するお笑いトリオ、インスタントジョンソン。キャラクターの個性、コントの完成度、そして誰もが自然に覚え自然に使用する「おつかれちゃ~ん」という持ちギャグ……いずれの面においても彼らはそれなりに秀でていた。……にも関わらず、彼らは漠然と売れ損なっている。出演していた番組が悪かったわけではない。「エンタの神様」「笑いの金メダル」「ザ・イロモネア」「爆笑レッドカーペット」等、時代の中心にあるネタ番組に彼らは出演し、きちんと結果を残していた。それなのに、彼らは売れなかった。もしかしたら、ビジュアルが地味だったからなのかもしれない。バラエティ番組でも使い勝手の良さそうなイメージがあるのだが……。

そんなインスタントジョンソンが、2010年に単独ライブを行った。彼らが単独ライブを行うのは、2005年7月に行った単独ライブ『おつかれちゃ~ん!!』以来、およそ五年ぶりのことだという。東京03バカリズムラバーガールエレキコミック等、年に一度以上の単独ライブを行う芸人が少なくない昨今、彼らレベルの芸人が2005年以来一度も単独ライブを行っていなかったという事実はなかなか衝撃的だ。太田プロという事務所があまり所属芸人の単独ライブに対して意欲的ではないという話を聞いたことがあるが、売り出し方を間違えているのではないかという気がしないでもない。まあ、事務所の方針があるのだろうが。

今作には、この2010年の単独ライブ『阿修羅』の様子が収録されている。近年、収録時間が無駄に増量される傾向の強いお笑いDVDだが、今作の収録時間はたったの49分(本編のみ)。特典映像の収録時間を加えても、一時間を切るという超コンパクトサイズ。実際のライブで披露されたネタがカットされてしまった可能性も否めないが、それにしても短すぎる。特典映像も全てライブで披露された幕間映像の様で、なにやらDVD化に対する意欲を感じさせられない。あまり芸人のネタをソフト化したくないのかもしれない。

収録されているコントは、いずれも安定感バツグンの出来栄えだ。前回の単独ライブにも登場した前説コンビのコント『レフト兄弟』を皮切りに、懸賞金のかかった犯人に似ているじゃいを警察に突き出してお金をせしめようというバカコント『懸賞金』、「爆笑レッドカーペット」などの番組で披露された野球応援団コント『応援団』、あるシンガーソングライターによるCM歌録り風景を描いた『ポーキーさん』など、どれもきちんと面白かった。特に個人的に印象に残ったネタは『上下』。先に演じられたコント『プロローグ』と同じネタを、急遽舞台の上下(かみしも)を入れ替えた状態で演じなくてはならないことになり、困惑した面持ちのまま演技を始めることに……というコントだ。普通にコントとして成立している『プロローグ』の出来の良さと、“上下が入れ替わることによって生じる混乱”を取り入れるという舞台芸人ならではの発想が、深く印象に残った。

特典映像も面白かった。じゃいが某有名バンドっぽいノリで熱唱する『ウニの箱舟』、関ヶ原の戦いを眺める民衆たちの心境を現代風に表現した『チャット』、三人のデッサン力が明らかになる『インジョン美術館』、インスタントジョンソンのあるメンバーが会社からクビを言い渡されるドキュメンタリー『戦力外通知』と、如何にも単独ライブの幕間映像といった感じの映像で、程々に楽しめた。再生するたびにいちいち響き渡るゆうぞうの声は、些か鬱陶しかったが(笑)

聞いたところによると、この単独ライブはここ数年で彼らが作り出してきたコントの総集編の様な構成になっているらしい。確かに、全てのコントが安定して面白く、逆に無茶苦茶をやっているような飛び抜けたネタは見られず、単独ライブにしては灰汁の薄い内容だとは思ったが。もっと自由に無茶苦茶な単独ライブが出来るような環境を、もう少し与えられてもいいような気はする。まあ、事務所の方針なのだろうが……なんだかなあ。


・本編(49分)

「レフト兄弟」「オープニング」「懸賞金」「応援団」「かぶる」「ポーキーさん」「プロローグ」「上下」「マナー」「エンディング」

・特典映像(10分)

「ウニの箱舟」「チャット」「インジョン美術館」「戦力外通告