菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「爆笑問題カーボーイ」「バナナマンのバナナムーンGOLD」(2010年11月4日)

JUNK 爆笑問題カーボーイ [DVD]

JUNK 爆笑問題カーボーイ [DVD]

 
JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD DVD

JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD DVD

 

テレビとラジオとでは、表現規制の範囲が違うと言われている。確かに、テレビ番組で行われているトークと、ラジオ番組で行われているトークとでは、その自由度がまったく違う印象を受ける。テレビで口にしたら確実にピー音が入るだろう単語も、ラジオではごく当たり前に飛び交っている。視聴者の数の違いもあるのだろう。撮影された素材が過剰なテロップやナレーションで分かりやすく編集されているテレビ番組と比べて、ほぼ出演者の対話のみで構成されているラジオ番組は、どうしてもメディアとしてハードルが高く感じられてしまい、それ故に視聴者の数も段違いだ。だからこそ、ラジオは自由でいられる。

そんなラジオ番組の中でも、オールナイトニッポンと同様に、若者に高い人気を誇るTBSラジオ“Junk”がDVD化された。2002年に放送を開始した同枠では、過去にコサキン小堺一機関根勤)、雨上がり決死隊、さまぁ~ず、極楽とんぼアンタッチャブル等、数々の芸人たちによって喋り倒されてきた。そして現在も、伊集院光爆笑問題山里亮太南海キャンディーズ)、おぎやはぎバナナマンエレ片エレキコミック片桐仁)によって、喋り倒されている。

ラジオ番組のDVD化といえば、2010年にリリースされた『オードリーのオールナイトニッポン』が思い出される。同作はオードリーが初めて放送したオールナイトニッポンの様子を撮影した映像作品で、彼らの人気も手伝ってそれなりに良い売上を記録していた様だ。僕は、今回の“Junk”DVD化に、同作のリリースが少なからず影響していると見ている。実際はどうか分からない……まあ、そこを掘り下げたところで、何がどうなるということもないのだが。

今回、DVD化されたのは、爆笑問題による「爆笑問題カーボーイ」とバナナマンによる「バナナマンバナナムーンGOLD」の二番組。どうしてこの二つの番組が選ばれたのかは、よく分からない。どちらも人気番組であることには違いないのだろうが、別に他の番組でも良かったような気がする。……ひょっとしたら、DVD化するのも難しいようなトークが展開しているのだろうか。個人的には、いつか他の番組もDVD化してもらいたい。その為にも、今回の二作品にはヒットしてもらわなくてはならないわけだが。

一つずつ見ていこう。まずは『爆笑問題カーボーイ』。この作品では「2010年上半期傑作トーク集」と題して、爆笑問題の二人によるトークがエピソードごとにぶつ切りになって収録されている。いわゆる番組企画などはまったく収録されていない。ただひたすらに純粋なトーク集だ。トークの中心となっているのは、主に彼らが目撃・体験した有名人たちのこと。太田の楽屋に悪戯を仕掛けるビートたけし、太田にボケを振られて困惑する小泉純一郎、太田を一目置いている渡辺謙など、様々な有名人たちの姿が、爆笑問題(というか太田光)を通して語られている。

ラジオならではのトークが繰り広げられているわけではないが、太田が時折テレビでも見せている強いコクのトークが好きな人なら、必見の一枚だろう。個人的にはなかなか楽しめた。特に、彼らが「情熱大陸」で特集されたことについて語っているトークは面白かった。田中の回(注釈:同番組では爆笑問題がそれぞれ別に特集されていた)の視聴率に嫉妬する太田……面白すぎる。特典映像には「ディレクター小塙治男インタビュー」「初公開!リスナーの顔」「田中の落書き」を収録。単なるトーク集で終わらせずに、こうしてヘビーリスナー向けの映像も収録しているのは、良い配慮だと思う。

続けて『バナナマンバナナムーンGOLD』。この番組では、バナナマンの二人によるラジオでのトークが、おおまかにカットされて収録されている。やはり番組企画は収録されていない。有名人たちとのエピソードを中心としたぶつ切りトークで構成されている『爆笑問題カーボーイ』に対し、今作はバナナマンの天然大王こと日村勇紀に関するだらだらトークが主。如何にも一部のリスナーを相手にしているラジオらしい局地的な内容だが、些か内輪に偏りすぎている気もする。なにせ、オープニングから、盛り上がっている話題が「日村が地元の友達からバイブと呼ばれていた」エピソードだ。これは狭い。

そりゃ、ラジオ番組のDVDなんて、観る人間の殆どはリスナーだろうけれど、もうちょっと入りやすいテーマからでも良かったのではないだろうか。少なくとも、初めて『バナナマンバナナムーンGOLD』に触れる、バナナマンならではの視点によるトークを期待していた人は、脱力することだろう。というか、した。別に、無理に視点を外に向けてほしいというわけではないが、収録されているトークの殆どが日村中心というのはちょっと……しかも、基本的に日村のダメなところを指摘するトークなのは……。それでも、日村とアンジャッシュ児嶋がダメ人間エピソードで対決するくだりは、なかなか面白かった。ただダメなところを指摘されている姿は見ていて切なくなるが、ダメな人が二人揃うとパワーアップして面白い。ダメとダメが渦を巻き、平常心を飲み込んでいく……!

有名人たちの裏エピソードを語っているという意味でラジオ的な『爆笑問題カーボーイ』と、内輪向けのトークをひたすらに展開しているという意味でラジオ的な『バナナマンバナナムーンGOLD』。まったく違った方向性ながら、ラジオならではのものを表現しているこれら二作、それぞれの芸人のファンならば、抑えておいて損はないかもしれない。


・収録時間
爆笑問題カーボーイ』(117分)
バナナマンバナナムーンGOLD』(142分)

・『爆笑問題カーボーイ』特典映像(33分)
「ディレクター・小塙治男インタビュー」「初公開!リスナーの顔」「田中の落書き」

・『バナナマンバナナムーンGOLD』ゲスト
バカリズム(電話出演)、スピードワゴン井戸田潤アンジャッシュ児嶋一哉