菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『バカリズム案2』

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(2010/12/22)
バカリズム

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バカリズムが思ったことをそのまま絵と言葉にして表現するライブ「バカリズム案」。このライブでは、普段の単独ライブで演じられているような起承転結のあるコントとは違い、バカリズムの真に剥き出しになったセンスを体感することが出来る。素材そのものの美味しさを召し上がれ、と言ったところだろうか。

今作は第二弾。第一弾でもその光るセンスを見せつけられたが、今作ではそのセンスに更なる磨きが掛けられたように思う。『歴史に関する案』では、信長や秀吉といった歴史上の人物たちについて丁寧に解説する。一見すると、非常にまともな解説が行われるような印象を受けるが、その内容は「織田信長の食べたものはどこへいくのか」「秀吉はなぜはなくそがでるのか」というものだ。……この上なく、どうでもいい。『プライバシーに関する案』では、プライバシーを守るために様々な物にモザイクをかけていく。前回のライブでも行われた『順位に関する案』では、「疑問を抱いてるっぽい50音ベスト5」「ヒーローっぽい楽器の名前ベスト5」「「森進一です」に聞こえそうなその他の名前ベスト5」を提案する。……本当に、どうでもいい。だが、そのどうでもいい感覚が、非常に心地良い。

その中でも印象的だった案が、『時間に関する案』。その内容は、日常における無駄な行い、必要性を感じさせられない行い、いわゆる“細かいロス”が人生にどれだけ損失を生んでいるのかを考えてみる……というもの。例えば、「おかずを口に運ぶ際、一旦ごはんにワンダウンドさせる時間…約1秒」「(イタリアンレストランなどで)目の前でチーズを削っている時間…約10秒」などの時間が、どれほど無駄な時間であるかを解説している。察しの良い人ならばお気づきだろうが、つまりこの『時間に関する案』はバカリズムが日頃「無駄だ!」と思っていることを、そのままぶつけているクレームの様な案なのである。

そんなバカリズムの感情が爆発する案が、これだ。

「続いて、こちら。「混んでいるコンビニで、2つあるレジの1つを休止し、研修中のアルバイトに、社員がレジのレクチャーをすることによって生じる、客の余分な並び時間…約3分」。まぁー!バカバカしい時間ですよね。皆さんも(経験したことが)あるのではないでしょうか」

ここまではまだ落ち着いている。だが、ここからだんだんと盛り上がっていく。

「もう、本当に僕は、これがもう意味が分からないですね。わざわざ混んでいるときにやる必要ないんですよね。全部お客さんをさばいてから、余裕があるときにやればいいんですよ。わざわざ混んでいるときに、研修中のアルバイトに、レジ休止してまでやっているんですよ。なんなんでしょうかね。研修中のアルバイトが未熟だということは、我々関係無いですからね。向こうの問題ですから。そっちで解決すればいいだけの話なのに。わざわざ、その時にやってんの。バカみたいな顔して。「うぇ~」(バカな顔をしながら)っつって!」

ここで話は“案”とは無関係な方向へ流れ始める。

「そんなバカな店員に限って、「弁当、温めますか」って言わないんです。「温めどうなさいますか」って聞くんです。分かります?「温めますか?」って聞けば「はい」か「いいえ」で答えられるんです。「温めどうなさいますか?」って言ったら、「お願いします」か「結構です」と、多めの時間喋らなくちゃいけないんです。非常に無駄なんです!無駄だらけなんです、コイツらは!24時間ずーっと、無駄なんですコイツらは!」

もはやバカリズムのクレームショーだ。ちなみに、バカリズムはこの行為を「バカレクチャー」と吐き捨てる。余程、そういう状況に腹を立てているのだろう。その後、この「バカレクチャー」が人生80年として8日間のタイムロスを生んでいると、バカリズムは解説する。

「どうですか、皆さん。立っているだけですよ、この8日間皆さん。8日間立たされているんですよ、あの「バカレクチャー」のために!8日間、あの「バカレクチャー」ですよ!しかもですよ、我々にとってはただ立たされているだけの無駄な8日間ですけども、こいつらにとってはこの時間しっかり時給が発生しているんですよ!僕、計算しましたこれ!時給800円だとした場合、15万3,600円もこれで儲けているんですよこいつらは!」

激昂するバカリズムも、またいつもと違った趣があって面白い。

通常、芸人の単独ライブは自身がやりたいことをやれる大切な場所だが、バカリズムにとってのそれは「バカリズム案」であるように思う。コントでは表現できないこと、トークでは語り切れないこと、そういったものが沈澱し始めた頃、またバカリズムは新たなる案を提出することだろう。……って、もう既に『バカリズム案3』のリリース情報が出ているらしいのだが。すぐ溜まるのね。


・本編(80分)

「自分に関する案」「歴史に関する案」「運勢に関する案」「プライバシーに関する案」「時間に関する案」「記憶に関する案」「順位に関する案」

・特典映像(17分)

「没案」「雑案」