菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

bananaman live『DIAMOND SNAP』

DIAMOND SNAP [DVD]DIAMOND SNAP [DVD]
(2010/12/15)
バナナマン

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バナナマンのコントは面白い。設楽が生み出す独特の世界観と日村のアクターとしての才能が爆発する彼らのコントは、その単独ライブが行われるたびに新しい笑いを放っている。それは時にバカバカしく、時に緊張感を漂わせ、時に切ない感動を与える。しかし、その根底にあるものは、バナナマンならではの人間性が交錯した笑い。彼らは決してそのスタンスを変えることなく、しかし常に留まらないコントを演じ続けてきた。それはきっと、これからも変わらずに続いていくのだろう。

前作「wonder moon」では、タイトル通りの幻想的な世界観に満ちたコントを演じていた彼らだが、今作「DIAMOND SNAP」は全体的に統一感が無く、バナナマンらしいコントが満遍無く演じられている印象を受けた。アホと呼ばれている丁稚の元に子孫がタイムマシンに乗ってやってくる『dumb cluck』、テレビ局の警備員二人が「もしも上戸彩と付き合えたとしたら、どうやって楽しませる?」という妄想に花を咲かせる『a guard』、話し合いをしている二人の関係が“善の椅子”“悪の椅子”で表現される『good and evil』など、とてもバリエーションに富んでいるが、実にバナナマンらしいコントばかりだ。

その中でも秀逸なのは、やはり『すぐ立つ』だろう。

設楽「おっ」

日村「ちょっオマエ~、ねぇ~、「おっ」じゃないわよ、「おっ」じゃさ、ねぇ~。今何時だと思ってんのよ、ちょっとさぁ~、お会計するぞ?」

設楽「ああ、ゴメン。わりぃわりぃ、ゴメン」

日村「ホント、もうアンタのそういうトコ、お会計してほしい~」

深夜バラエティ番組「ゴッドタン」の企画で誕生したキャラクター“ヒム子”が登場するこのコントは、番組を見ている人間は勿論のこと、番組を見ていない人間でも楽しめるネタに仕上がっている。企画の中で生まれた“お会計”という言葉も、まったく統一感の無い使われ方をしているにも関わらず、不思議と納得してしまう説得力がある。実際、この正月の特別番組で、彼らがこのコントが演じている場面を目撃したが、そのスタジオの観客たちはこの“お会計”という言葉に笑っていた。

一方、コントの間に収録されている幕間映像のクオリティも、非常に高い。ある歌の歌詞を違って覚えている二人のラジオ的なやりとりが心地いい「地域性」、ピアノを演奏することが出来るiPhoneの機能“フィンガーピアノ”を使って二人で盛り上がる「フィンガーピアノ」、毎度お馴染み日村が身体を張る「日村は爆発する前に導火線を切れるか?」など、バナナマンの二人が大好きな人にはたまらない映像ばかりだ。

バナナマンらしさがきちんと抽出されているコント、バナナマンの二人が好きな人ならば間違いなく楽しめる幕間映像、どちらも揃っている今作は非常に素晴らしい作品である……のだが、一つだけ不満がある。それは、ライブの最後に必ず演じられているロングコントだ。毎回、仄かに感動できるコントをライブの最後に準備している彼らだが、今回のネタは少し物足りなかった。良いネタではある。村ではぐれ者扱いになっている通称パンメンと、そんな男と付き合っている幼馴染の警察官が織り成す切ないストーリー。設定も流れも実に素敵。それでも物足りなさを感じるのは、コントの中に散りばめられた言葉の数々が、今一つ活かしきれていない気がするためかもしれない。面白いんだけどね。

コントの最前線を突っ走り続けているバナナマン。ここから更に飛躍する日が来るのだろうか?


・本編(102分)

「wonderful moment」「dumb cluck」「地域性」「a guard」「フィンガーピアノ」「good and evil」「冷蔵庫のあまりもので作るおかず」「すぐ立つ」「日村は爆発する前に導火線を切れるか?」「are you satisfied now?」