菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

パペットマペットライブ act.2『井の中の蛙の胃の中の牛』

パペットマペットライブact.2 井の中の蛙の胃の中の牛 [DVD]パペットマペットライブact.2 井の中の蛙の胃の中の牛 [DVD]
(2011/03/16)
パペットマペット

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日本の演芸史上初にして唯一の“うしとカエルのお笑いコンビ”パペットマペットの姿をテレビで見かけなくなってから、もう随分と経ったように思う。なにせ、最後に彼らの姿を目撃したのがいつだったかまったく思い出せないのだから、これはもうとても以前ということだ。……とはいえ、この状況は別に悲観すべきものではない。何故なら、パペットマペットがそもそもテレビバラエティ向きの芸人ではないということは、誰の目から見ても明らかだったからだ。うしはいい。カエルもいい。ただ、その後ろにいる覆面の……あ、なんでもないです。そうだね、中の人なんていないね。

とにかく、すっかりテレビへの露出が少なくなってしまったパペットマペット。「爆笑レッドカーペット」を中心としたお笑いブームの波に乗ることもなく、彼らの存在はすっかり過去のモノへとなってしまった……と、思っていた最中、パペットマペットの最新単独ライブがDVD化されるという話が飛び込んできた。驚くべき事態である……という表現は、彼らを愛するファンの人に申し訳ないが、それが素直な感想だったのだから仕方ない。……というのも、彼らの様に、率直に言ってイロモノと呼ばれるタイプの芸人の多くは、DVDをリリースしても一枚こっきりで終わってしまうことが多かったからだ。ところが、パペットマペットのライブがDVD化されるのは、今作で四度目。もはや、ラーメンズザ・プラン9などと肩を並べる、れっきとしたライブDVD芸人である。凄いぞ。

とはいえ、パペットマペットがライブでやっていることは、彼らがテレビで見せてきた、例えば「爆笑オンエアバトル」のステージで披露してきたショートコントの類いと大して変わらない。実際、最新作である『パペットマペットライブ act.2 井の中の蛙の胃の中の牛』で披露されたコントには、過去に何度か目撃したことのあるボケが幾つか見受けられた。つまり、そこに新しさは殆ど見られない。うしはうしらしく、カエルはカエルらしく、素朴に自らの個性を主張した笑いを生み出しているだけだ。それなのに、彼らのライブはこうしてDVD化される程に、確固たる人気を集めている。

そんな彼らの状況を見て、ふと僕は吉本新喜劇を思い出した。吉本新喜劇のステージといえば、お馴染みのキャラクターがお馴染みのギャグを携えてお馴染みの笑いを提供することで、人気を博している。そこには新しさはない。だが、その一方で、下手な誤魔化しや言い逃れもない。それぞれがそれぞれの個性を誇らしげに掲げ、舞台に臨んでいる。パペットマペットもまた同様だ。彼らのステージにも、誤魔化しの笑いなど存在しない。その実直ともいえるスタンスが認められているからこそ、旬が過ぎた今でも、彼らのネタを支持する人間が今もまだ数多く存在しているのかもしれない。

ところで、『パペットマペットライブ act.2 井の中の蛙の胃の中の牛』の収録時間は、非常に短い。昨今、お笑いDVDの収録時間は増幅の傾向にあり、今や二時間を越えた作品が当たり前になりつつあるが、今作の収録時間はなんと68分しかない。この情報はリリース前から公開されており、個人的にも少し不安があった。こんなにも短い収録時間で、きちんと満足できるのだろうか、と。しかし、それは杞憂に過ぎなかった。この一見すると短い時間の中、彼らは自らの笑いをふんだんに見せつけてくれた。つまり、この68分という時間が、最適なのである。無駄な映像を追加して収録時間を水増ししようなどという考えは、彼らにはない。これでいい、これでいいのだ。


・本編(68分)

「辞書」「オープニング」「マナー教室」「裏切り者」「カエル隊長の嫌いなところリスト」「落語(寿限無)」「流出動画」「神の力」「うしくん救出作戦」「声が変わる薬」「路上詩人」「エンディング」「特典映像:犬の散歩」「特典映像:ショートコント」