菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『サンドウィッチマンライブ2010 新宿与太郎音頭』

サンドウィッチマン ライブ2010~新宿与太郎音頭~ [DVD]サンドウィッチマン ライブ2010~新宿与太郎音頭~ [DVD]
(2011/02/25)
サンドウィッチマン

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M-1グランプリ2007で敗者復活からの優勝という快挙を成し遂げたお笑いコンビ、サンドウィッチマン。ここ数年のお笑いをリードし続ける吉本興業に有利な状況が続いていた同大会において、彼らの優勝はあまりにも大きな事件であった。いや、もし彼らが登場していなければ、M-1はもっと早々に終わっていたのかもしれない。なにせ、彼らがいなかった場合、M-1グランプリ2007最終決戦のメンバーは、キングコングトータルテンボスハリセンボンになっていたのだから。キングコングトータルテンボスはともかく、ハリセンボンは幾らなんでも力不足だろ。

そんなこともあって、サンドウィッチマンM-1において非常に重大な存在となったのだが、それ故に、彼らには今でもM-1のイメージがまとわりついている。少なくとも自分には、サンドウィッチマンという名前に“M-1グランプリ2007で敗者復活から奇跡の優勝を果たした”という見えない枕詞がうっすら見えて仕方ない。無論、彼らが面白いコンビであることは明白で、それはキングオブコント2009で東京03と優勝を争った事実が証明している。しかし、それでも、彼らにはM-1チャンピオンのイメージが残っているのだから、どうにも困ったものだ。むしろ、彼らがM-1優勝後も一貫して“面白いコンビ”であり続けているからこそ、このイメージが払拭されないのかもしれない。ここ数年における、ますだおかだフットボールアワーアンタッチャブルブラックマヨネーズなどの、歴代M-1チャンプたちの活躍ぶりを見ると、どうもそう思えてくる。彼らの様に、サンドウィッチマンにも一度は第一線から潜伏する必要があるのだろう。いや、今の彼らが第一線にいるのかどうかは、ちょっとよく分からないが。

しかし、先日リリースされた『サンドウィッチマン単独ライブ2010 ~新宿与太郎音頭~』を見て、いよいよサンドウィッチマンが潜伏する機会は失われてしまったなと確信してしまった。というのも、ここ数年の彼らは、単独ライブを重ねるたびに、非常にゆっくりとしながらも確実に面白くなってきているからだ。M-1優勝後、以前のブラックな要素を含む笑いを抑えるようになった彼らはまさに片方の翼をもがれたカモメと化していたのだが、今ではそのことを忘れさせるほどにエンターテイメント寄りの(しかしちょっとアウトロー臭さも残した)笑いを生み出せるようになったようだ。今回のDVD、これまでで一番面白かったんじゃないか。どれが特に面白いということがなく、全体的に満遍無く面白かった。

特典映像も充実している。同じ事務所に所属する芸人たちの名前を記憶する「若手芸人の名前を覚えよう!」、某ドキュメンタリー番組に感銘を受けた伊達が脚本無しでパロディ化した「サーズ・デイ 戦力外通告 草野球からメジャーへ挑戦する男」、以前からサンドウィッチマンのコントに登場していた有名人のパロディキャラについて当人に伺ってみる「哀川翔vs哀川鳥 奇跡の対談」など、こちらも捨てるところがない。これだけ面白いことをしているのに、だからこそ突き抜けられないというのも不思議な話だ。むしろ、この状態こそが、彼らにとって最適であるのかもしれない。下手に突き抜けようとせず、この高水準を保ち続けていくことが、彼らには合っているのだろう。


・本編(75分)

「オープニング」「漫才-万引き-」「薬局」「クレーム処理」「職安」「村に住む男」「哀川鳥」「携帯ショップ」「漫才-弔辞-」「エンドロール」

・特典映像(50分)

「若手芸人の名前を覚えよう!」「サーズ・デイ 戦力外通告 草野球からメジャーへ挑戦する男」「ラジオ」「哀川翔vs哀川鳥 奇跡の対談」「ハプニング」