菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ユリオカ超特Q『Q展』

ユリオカ超特Q -Q展- [DVD]ユリオカ超特Q -Q展- [DVD]
(2011/05/25)
ユリオカ超特Q

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ピンクのスーツを着こなしながらマイク一本で笑いを獲り続ける男、ユリオカ超特Q「らっしゃい」という言葉ともに現れて、「発車の時刻です」という言葉ともに消えていく。そんな彼の芸風は、漫談だ。ピン芸人といえばコントか一言ネタという印象が今でも強いが、ユリQはお笑いブーム黎明期から現在に至るまで、ひたすら漫談スタイルを追求している。もしも彼とスマイリーキクチが存在しなければ、今頃は“漫談=綾小路きみまろ”という間違った認識が世間に浸透していたに違いない。いや、別にいいんだけどさ。

そんなユリQの漫談ライブを収めた『Q展』がリリースされた。ユリQのライブがDVD化されるのは、2005年にリリースした『らっしゃい!ベイベー』以来六年ぶりとのこと。まあ、ユリQの知名度を考えると、仕方のないことではある。「みなおか」「アメトーーク」などの番組でプロレスマニア芸人として奮闘しているものの、やはり世間一般的にユリQは無名だ。もし、ユリQの宣材写真を一般の人に見せたとしても、三谷幸喜に似ているハゲとして捉えられるだけだろう。良いんだか悪いんだか。

『Q展』は、ライブが行われた当時(2010年12月)の時事ネタで開始する。某歌舞伎俳優の暴行事件、某ロックシンガーの結婚騒動、同性愛疑惑があった某有名俳優の結婚などを、ユリQが下世話な視線で斬り捨てていく。その切れ味はなかなかに鋭く、時に頷いたり時に笑ってみたり。『爆笑問題のツーショット』に引けを取らない、実に安定感のある下世話ぶりを見せていた。ただ、一つ一つの事件をネタにしていくため、なんとなく時事ネタをつまみ食いしているような印象も残る。なんだか少し、惜しいような。

ライブ中盤からは、テレビで見せたこともあるユリQお馴染みのネタが始まる。DVD収録を意識した、ベスト的構成だ。日常におけるちょっとイラッとする出来事への言及に始まり、辞書の説明文に含まれる個人的思想へ止め処無きツッコミ乱打を繰り出す。更に、敬愛して止まない藤波辰巳アントニオ猪木の事件“飛竜革命”を完全再現したかと思えば、ハゲであるからこそ体験することをカラッとボヤいてみせる。まさにベストと呼べる構成に、見ているこちらは満足せざるを得ない。ここには漫談家ユリオカ超特Qが築き上げてきた全ての笑いがある! ……つまり、後には何も残らないということか(んなこたない)。

キレのあるしゃべりに細かいくすぐり、不毛地帯に照明を反射させながらカラッとした笑いを構築していくユリオカ超特Qの芸は、もうちょっと多くの人に知られるべきだと思うのだが、なかなかお目にかかる機会がない。どうも宜しくない。ユリオカ超特Qスマイリーキクチは、お笑いブーム黎明期に漫談というジャンルを守り続けてきた。その完成された芸も込みで、もっと評価されるべきである。


・本編(88分)

・特典映像(18分)

「プロレス界が震撼した「飛龍革命」の真実が、今明かされる!?」

「昭和ハゲ歌謡「たたいて赤坂」プロモーションビデオ」