菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

第十一回東京03単独公演『正論、異論、口論。』

第11回東京03単独公演 「正論、異論、口論。」 [DVD]第11回東京03単独公演 「正論、異論、口論。」 [DVD]
(2011/05/18)
東京03

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東京03の最新公演を観に行く直前、東京03の去年の公演『正論、異論、口論。』のDVDを観た。前回の公演を観ずに最新の公演を観るのは、なんだか片手落ちになっている気がしたからである。で、実際に観て、それから最新の公演を観て、そして今、副音声込みの本編を観ているわけだが……どうも、古臭く見えて仕方がない。たかが去年の公演なのだが、それがすっかり過去のモノになってしまっている。それだけ、現時点における最新の公演『燥ぐ、騙る、暴く。』が素晴らしい内容だったから、ということなのだろう。では、本作が面白くないのかというと、そんなことはない。少なくとも初見時には、第十回単独公演『自分、自分、自分。』から更に面白くなったと確信していた。

東京03のコントといえば、一般の生活を送る上で見過ごしがちな小さなストレスを徹底的に掘り下げて、そのちょっとした不条理を日の元に曝け出す様が笑いになっていることが多い。例えば、本作の二本目に収録されている『お礼させて下さい』などは、その典型例だ。その内容は、仕事を成功させた男(角田)がそれを手伝ってくれた先輩(飯塚)と後輩(豊本)にすぐさまお礼の場を設けようとするのだが、二人とも用事があるので今日は行くことが出来ないと言われ、思わず本音がこぼれてしまう……というもの。その後、どうにか言い訳をしようとして壊れていく角田の様は、まさに生々しき人間の真の姿を捉えているといえるだろう。ちなみに、副音声によると、この『お礼させて下さい』にはモデルがいるとのこと。それが誰なのかは、是非DVDで確認して頂きたい。

この他にも、マニュアル対応し続けるコンビニのバイト店員にイライラが止まらない『融通』、友人に紹介してもらった女性が巻き起こしたハプニングが思わぬ事態を招く『そういう人』、上司の趣味で作ったものを受け取り続ける後輩たちの姿を描いた『課長の趣味』など、人間性が浮き彫りになったコントが今回も盛り沢山だ。中でも、同棲生活一日目に彼女が友人に告白するという大事件が勃発する『入居日』の追い込まれ感は、必見である。

その一方で、本作ではこれまでの東京03のコントではあまり観られなかったような、一風変わったコントも見られた。『ゴンとのお別れ』が、それである。その内容は、亡くなったペットの埋葬に行ったら、担当者がおじいちゃんだった……という、非常にオーソドックスなコントの様相を呈している。角田演じるおじいちゃんの演技があまりにもリアルで、実に面白かった。副音声によると、このコントは角田の実体験を基にして作られたのだという。……コント的なリアル、とでもいうのだろうか。

この『ゴンとのお別れ』に見られるような“コント的な笑い”が、次の公演『燥ぐ、騙る、暴く。』では少し増幅していた点を、今となっては興味深く感じている。というのも、その公演で僕が非常にコント的だと感じたネタも、実は角田が発端となって作られたネタだったからだ(パンフレット参考)。これまで、飯塚先導の元、リアルなシチュエーションのコントを作り続けてきた彼らだが、今後はそういうコント的なコントもだんだんと増えていくのかもしれない。その鍵を握っているのは、もしかしたら角田なのかもしれない。なにはともあれ、今後の更なる進化に注目だ。


・本編(120分)

「キャスト紹介 ピアノ曲「正論、異論、口論。」」「融通」「オープニング曲「雷電口論」」「お礼させて下さい」「フセイジツ 戯言の流出」「そういう人」「第3回そういう人大会・大会要項」「課長の趣味」「つくりかけのきりんくん」「入居日」「ナットクデキナイアニメ」「ゴンとのお別れ」「プロモーション 商品の告知」「それぞれの災難」「エンディング曲「異口同音」」

・特典

メンバー三人(+α)による副音声