菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD」(2011年11月23日)

千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD

千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD

 

男たちは何故、山に登るのか。それは……白いピアノを頂上に運ぶためだ!

『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD』は、千鳥の二人が白いピアノを山の頂上に運ぶまでの過程を撮影したロケーション映像のみで構成されたDVDである。とどのつまりが読んで字の如し。何の捻りもなく、タイトルそのままの内容になっている。

千鳥といえば、笑い飯NON STYLEと同様、非NSC卒業生であるにもかかわらず、その独創的な発想が高く評価されている漫才師の一組だ。M-1グランプリでは四度の決勝進出を果たしていることからも、その実力の高さが窺い知れる。ただ、先の二組の様に、同大会での優勝経験はないため、個人的には「笑い飯NON STYLEに比べて少し劣るのではないか」という印象もあった。

そんな千鳥だが、近年は大阪でのロケ活動に精力的で、また、そこでの仕事が高く評価されていたという。Wikipediaによると“2年間に200本以上のロケをこなしており、「大阪のロケは全て千鳥だ」といわれるほどのロケ芸人”ぶりを発揮しているのだそうだ。大阪の事情に詳しくない人間には、まったくピンとこない話である。

しかし、本作を観て、その評価の正しさと彼らのロケ芸人としての実力がよく理解できた。本作では、千鳥の二人が「白いピアノを山の頂上に運ぶ」という最終目標を達成するために、「ピアノを手に入れる」「ピアノを白く塗る」「ピアノを運ぶ山を決める」「ピアノ運びのメンバーを探し出す」「登山の訓練をする」など、実に様々なシチュエーションのロケを展開しているが、それらの殆どがお笑いDVD特有のコント的な仕込みを用いていない。まったく素のシチュエーションに千鳥の二人が飛び込み、その場その場で的確に笑いを生み出しているのである。

その笑いの中には、例えば大悟が一度画面から消えて、妖怪になって再登場するというような単純な悪ふざけもあるが、そ多くは、シチュエーションを上手く利用した大吾のボケと、それに対するノブのツッコミによって生み出されている。この大悟のボケが、また上手い。挑発的で攻撃的なのに場の空気を壊さない、絶妙なさじ加減だ。そして、それを処理するノブのツッコミも、これまた上手い。一見すると大雑把に見えるが、ボケに対してかなり的確だ。そこには、コンビとしての互いに対する確かな信用と、数多くのロケをこなしてきた経験によって磨かれた手腕が多分に反映されている。

ロケ映像のみ収録しているという点から、なんとなく本作の鑑賞に尻ごみしている人も多いのではないかと思う。確かに、ロケのみを収録していると聞くと、本当に面白いのかどうかを疑ってしまいがちだ。下手すれば、クソつまらない映像コントもどきを見せられるのではないかと、不安になる気持ちも理解できる(つい最近、そういう作品を観たので……)。だが、本作に関しては、まったく心配の必要はない。本作は“最強ロケ芸人”千鳥の実力とセンスが結集した、まごうことなきお笑いDVDである。

なお、本編の尺があまりにも長過ぎるので、鑑賞する際は小分けに観ることをオススメする。一度に観るよりは、そっちの方が楽しめると思うし……(←本編を一気に鑑賞して、ヘトヘトになった人)。


・本編(171分)
・特典映像(28分)
「千鳥 二人っきりのドライブトーク」
ネゴシックス渾身の4分ネタ」「千鳥の漫才(隠しトラック)」
・副音声
千鳥と若手実力派ロケ芸人によるスペシャル対談