菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ジューシーズ パウダー、吸盤、モッツァレラ!』

パウダー、吸盤、モッツァレラ! [DVD]パウダー、吸盤、モッツァレラ! [DVD]
(2011/09/14)
ジューシーズ

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ジューシーズは2006年に結成されたお笑いトリオである。幼稚園からの友人である赤羽と児玉、そして東京NSCで知り合った松橋の三人によって結成された。お笑いブームの波に押されて、「エンタの神様」「あらびき団」「爆笑レッドカーペット」などの番組に出演するも、ブームの波には乗れなかった。その後、「板尾ロマン」のレギュラーとなるが、2011年9月に番組が終了。現在はジャングルポケット・パンサーとともに深夜バラエティ番組「333 トリオさん」にレギュラー出演中である。

ジューシーズが演じているのは主にコントだ。ジューシーズのコントというと、どうしても思い出さずにはいられないのが『ネタ合わせ』である。漫才師のツッコミが相方とは別のボケに浮気してコンビ活動を始めようとする様子を、男女の修羅場に置き換えて演じてみせるという、なんともバカバカしいコントであった。ただ、当時、ホリプロコム所属のお笑いトリオ“ななめ45°”が、既にこれとまったく同じフォーマットのコントを持ち芸としており、彼らのそれは単なる二番煎じにも見えた。きっと、両者が共通したフォーマットとなってしまったことは、単なる偶然なのだろう。

事実、それから後に目にした彼らのコントは、決してフォーマットに捉われない自由奔放な世界観に満ちていた。牛丼屋のバイトとバイトリーダーが「無料サービス期間が終了しているのに、牛丼に生卵をつけるべきか否か」を激しく言い争う『牛丼屋』。新しくやってくるという担任を前の担任と同様に追い返してやろうと企む二人の不良の前に、あまりにも想定外の教師が姿を表す『新任教師』、真面目な話をしている社員と社長の間で、社長の息子が暴れ回る『社長室』など、それぞれまったく違った持ち味のコントばかりである。それでもジューシーズらしさが失われないのは、体重100キロを優に超えるという赤羽の存在感が大きい。見た目のインパクトもさることながら、時折こぼす可愛らしい口調が強烈な個性となって、ただただ達者なコントを明確にジューシーズのコントとして昇華している。

しかし、ジューシーズの個性となっているのは、なにも赤羽の存在ばかりではない。彼らのコントの根底には、“ふざける”の精神がある。その分かりやすい例となるのが、『休み時間』というコントだ。このコントでは、中学二年生に扮した三人が、休み時間を使って徹底的に「演技ごっこ」を繰り広げている。「演技ごっこ」とは、さりげない会話から突然に演技を始める、というもの。ちょっとした演技をして、その度に「楽しぃ~!」とはしゃぎ回る三人の姿……これこそ、ジューシーズというトリオの根幹なのだ。きちんと作られたコントでも、その根底にはふざける精神がきちんと残っている。

最後に、個人的に好きなコントを紹介しよう。そのコントのタイトルは『同窓会』。久しぶりに集まった、かつての高校の同級生たち。あまりの懐かしさから、当時のあだ名が思わず口からこぼれていく。「じゃがいもマン!変わらねえなあ!」「そういう地球防衛軍こそ!」「おー!オカマの大群!」。やがて会話の中身はかつてのクラスメートたちの話へ。「おじさまコール、今度結婚するらしい」「誰と?」「お尻プリンセスと……」。どこまでも意味のない言葉遊び、でも、それがなんだか愛おしい。


・本編(57分)

「牛丼屋」「ネタ合わせ」「同窓会」「新任教師」「社長室」「クイズ」「休み時間」「言い間違い」「研究所」

・特典映像(60分)

ジューシーズのわくわくのんびりツアーズ」(出演:ライス、しずる池田、かたつむり林)

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