菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『さまぁ~ずライブ8』

さまぁ~ずライブ8 特別版 [DVD]さまぁ~ずライブ8 特別版 [DVD]
(2011/11/25)
さまぁ~ず

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三村マサカズ大竹一樹によるお笑いコンビ、バカルディが“さまぁ~ず”へと改名してから8度目となる単独ライブを収めたDVDが、2011年11月25日にリリースされた。前作『さまぁ~ずライブ7』がリリースされたのは2010年1月6日なので、およそ一年と十一ヶ月ぶりのリリースとなる。しかし、さほど前作からのスパンを感じさせないのは、彼らが出演する番組関連のDVDが多数リリースされていたからだろうか。「モヤモヤさまぁ~ず2」「さまぁ~ず×さまぁ~ず」「内村さまぁ~ず」「主演さまぁ~ず ~設定 美容室~」「トゥルルさまぁ~ず」「マルさまぁ~ず」などなど……もはやさまぁ~ずを抜きにしてテレビバラエティを語ることは出来ない、といっても過言ではないだろう。そんな最中であっても、さまぁ~ずはライブに出演することを決して止めようとしない。売れない時代でも定期的に単独ライブを行っていた彼らにとって、ライブは決して欠かすことの出来ないホームグラウンドなのかもしれない。

ただ、そんなさまぁ~ずによる近年のライブを観て、僕は不安を感じていた。というのも、ライブできちんと練り上げられたコントを演じているさまぁ~ずよりも、圧倒的に、テレビで大喜利やフリートークやロケに興じているさまぁ~ずの方が面白かったからだ。考えてもみれば、これは至極当然の結果なのかもしれない。ありとあらゆる展開が事前に計画されているライブに対し、ロケやフリートークなど、芸人としての地力が求められているテレビ番組では、想定以上の面白さを見出すことも起こり得る。“事実は小説よりも奇なり”という言葉が示すように、人間が想定している面白さよりも、交通事故的に発生する面白さの方が、時にとんでもない爆発を巻き起こすのだ。それに加えて、近年のさまぁ~ずライブで披露されているコントは、はっきりいって落ち目だった。両人の才能は様々なテレビ番組で如何なく発揮されているが、コントの送り手としては、明らかに筋肉が衰えていた。

そういう意味では、今回の『さまぁ~ずライブ8』は及第点といえるのではないだろうか。正直、以前の様な斬新さもなければ、さまぁ~ずならではの世界観を体感できる内容でもないが、少なくとも、現代に見合ったコントをやろうという意欲は感じられた。……まあ、ひょっとしたら、気のせいなのかもしれない。単なる僕の気まぐれな思い違いである可能性は否定できない。ただ、前回のライブよりは、面白いと感じたことだけは事実だ。

本作において、さまぁ~ずが披露しているコントは、オープニングコント『上司のヒミツ』を加えた全五本。それぞれ、まったく違った面白さが追求されている。例えば、『お見舞い』というコントでは、入院した後輩社員(三村)の元に元上司(大竹)がお見舞いにやってくるのだが、持参したお見舞い品が全て病室にある……という物悲しさが、なんとも面白い。ちょっと哀しい人を演じると抜群に上手い、大竹の真骨頂ともいえるコントだ。続く『教頭先生』は、生徒に柔軟な発想を持ってもらいたいという教師(三村)が準備したなぞなぞを、教頭先生(大竹)が一つ一つチェックしていくというコント。なぞなぞの一つ一つに「分かりにくい!」と文句をつけて無理やり内容を改正していく様は、以前に彼らが演じていたクレーム防止のコントを彷彿とさせた。三本目の『復活』は、以前に彼らがシリーズ化していたコント、“マイナスターズ”を彷彿とさせるミュージシャンコント。歌は少ないが、楽器を背景にやりとりをする二人の姿に懐かしさを覚えた。四本目の『鶴の恩返し』は、お馴染みの童話を現代風に改変したコントだ。大竹が演じる奇妙な女性キャラが、ここぞとばかりに活躍している。

こうして振り返ってみると、以前に彼らが演じていたコントのシチュエーションを焼き直しているネタが多いことに気付く。少なくとも、『お見舞い』や『教頭先生』に似た内容のコントを演じていたのは確かだ。だから、以前よりも安定した面白さを感じたのだろう。ただ、これを単なる手抜きであると、僕は思わない。むしろ、ここにきて、彼らが以前のコントを(意識的にか無意識的にかは分からないが)振り返ったという事実が興味深い。新たなる笑いへの準備段階に入っているのか、それとも単に過去を振り返っているだけなのか。今後の展開が気になるところではある。

ところで、本作には「おまけ」が付いている。正直、DVDに「おまけ」を付けること自体は決して悪くはないのだが、それに高いお金を払わされるというのが、どうも納得できない。余程の内容でなければ、満足することは出来ないだろう……と、購入当初は思っていたのだが、いざ「おまけ」を開封してみると……まあまあ、納得できるものが入っていた。ただ、まあまあ、である。どうしても欲しいというものではない。ただ、幾らかのお金を払っていることを考慮しても、そこそこ納得できるものが入っている。……彼らのライブが好きな人は買ってみてもいい、かもしれない。

追記:さまぁ~ずのコントライブが、テレビでの彼らに比べて面白味に欠ける要因の一つに、三村がツッコミ役に徹している点が挙げられるかもしれない。テレビでのさまぁ~ずには第三者のツッコミ役が設けられていることが多く、大竹は勿論のこと、三村もボケ役として立ち回る機会が多い。その制限が、少なからずライブとテレビの差を生んでいるのではないだろうか。


・本編(99分)

「OP/上司のヒミツ」「OPENING VTR」「お見舞い」「紙相撲」「教頭先生」「カプチーノアート」「復活」「つる」「鶴の恩返し」「ENDING VTR」

・特典映像(16分)

VTR撮影風景&バックステージ