菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『爆笑問題のツーショット ~2011年総決算~』

2012年度版 漫才 爆笑問題のツーショット~2011年総決算~ [DVD]2012年度版 漫才 爆笑問題のツーショット~2011年総決算~ [DVD]
(2012/01/25)
爆笑問題

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爆笑問題の漫才を収めたDVDシリーズ“爆笑問題のツーショット”最新作が、今年も発売された。2006年から発売を開始した同シリーズも、今回でとうとう8枚目。恐らく、太田と田中のどちらかが亡くなるとか、或いは、サザンと佐野元春の取り合いでケンカしてコンビ解散でもしない限り、延々と発売され続けることだろう。ロボット工学が発達していれば、未来世紀でも二人の漫才が観られたりしてね。いや、僕は死んでるけど。……一番可能性が高いのは、レーベルの解散なんだけどね。コンテンツリーグには、どうにか頑張ってもらいたいよ、ホント。

2011年の話題を総括している、今回の“爆笑問題のツーショット”。パッケージには、同年話題となった芦田愛菜鈴木福の“マルモリコンビ”に扮した、爆笑問題の姿が掲載されている。40半ばでなんつー格好だよ、まったく。芦田愛菜の格好をしているのが田中で、鈴木福の格好をしているのが太田だ。初めてコレを見たときは、ただただ女装をしている田中の姿にニヤついたが、今では、満面の笑顔でこちらを見ている太田の姿がたまらなく面白い。撮影現場では「もっと福くんみたいに、笑って!」と指示されたんだろーなー、とか考えると更に面白くなってくる。毎回、このシリーズでは、二人がその一年の話題になった人たちに扮装した姿をパッケージにすることが定番となっている。確か、2010年版のパッケージでは、二人はチリの鉱山落盤事故の生還者に扮していた。そういえば、その時も田中は女装をしていたような……嫌な予感がしてきたね、どうも。

パッケージはそんなフザケたことになっているけれども、収録されている漫才は極めてマジメ。2011年の色んな時事ネタを、太田のナンセンスな発想で、次から次へとバカバカしくて下らない笑いへと昇華している。誹謗中傷に逃げやしない、たまに暴言吐くけれど。聞いたところによると、爆笑問題は多数のレギュラー番組を抱えている現在でも、自社ライブ“タイタンライブ”に欠かさず出演、必ず新ネタを下ろしているという。漫才師としての了見を見失っていない二人のネタは、特別でもなんでもない、現役バリバリの空気を発散し続けている。カッコイイね。

ところで、本作を観るにあたって、ちょっと気になっていたことがあった。それは、太田光が敬愛していた立川談志の死を、漫才でどのように扱うのかということ。時事ネタを得意とする彼らにとって、談志の死は決して避けることの出来ない重大事件。それを果たして、彼らはどのタイミングで、またどのようにして、ネタに昇華するのか。そんなことを意識しながら本編を再生してみると、なんと開始二分と経たないうちにブッ込んできた。

太田「今年はもう、激動ですよ」

田中「本当そうですよ」

太田「ラディンで、カダフィで、金正日で、談志でしょ?」

田中「そこに並べんな!なんでその並びに入れちゃったんだよ、あの人をよ!」

ネットでも散々言われていたことだけれど、太田がいうと味わい深いネ。考えてみたら、冒頭からいきなり談志の死について触れたのは、観客が少なからずそのことを意識していると配慮したからなのかもしれない。それほどまでに、談志と太田の距離は近かった。なにせ、談志は太田のことを“隠し子”と呼ぶ程に認めていたし、一方の太田も、談志の凄さを知らしめるために師匠の落語を収めたオリジナルDVDを手掛けたほど、彼を敬愛していた。全員ではないだろうが、何人かの観客たちは、太田が談志の死についてどう触れるのか、緊張の面持ちで見つめていたのだろうか。その意味で、こうして冒頭から、談志の死をネタにしてくれたことは、観ている側としては非常に有難かったことだろう。少なくとも、僕はなんだか安心した。

その後も漫才は、時事ネタを絡めたギャグを連発させながら進行していく。金正成はマックユーザーだったらしい、だからジョブズを神と崇めていた……ラディンを最近見なかった、この前「あの人は今」に出ていた……AKB48が世界に進出、モンゴル800とか……。数々の時事を、毒や皮肉で安直に批判することなく、自らのセンスだけで昇華していく様が、とっても心地いい。二人もリラックスしているようで、ちょっと珍しいアドリブを見せたり。

(清武の乱について)

田中「(略)直前で、ナベツネさんが引っ繰り返しちゃった」

太田「ハゲの一声っつってね」

田中「鶴の一声! ハゲの一声って、お前やめろよ、俺らは微妙な立場でハゲの一声とか怒られんだから!」

太田「(笑)微妙な立場って……ちゃんと説明してくれる? 別のことを想像する人がいるから。CMやってるからだよね」

田中「そう、CMやってるからだね。お医者さんに相談してください」

太田「お医者さんに♪」

二人「「(振り付きで)相談だ♪」」

太田「……古い漫才みたいになっちゃった(笑) これは別にやる予定じゃ無かった!」

微笑ましいね、どうも。

マルモリ、AKB48家政婦のミタ、なでしこJAPAN、島田紳助引退、自転車事故……こうして振り返ってみると、2011年も色々なことがあったなあ。来年は、もっと平和で穏やかな一年になればいいなあ……って、その来年はもう既に今年で、しかも一ヶ月過ぎちゃってるんだけどね。なんだかマヌケだなあ。まあ、来年……じゃねえや、今年もどうなるか分からないけれどね。どんなに辛い一年だったとしてもさ、爆笑問題がちゃーんと漫才にしてくれるって考えたら、どうにか乗り切ってみようって気持ちになるんじゃないかな、うん。

ちなみに、本作の特典映像には、爆笑問題と映画監督の犬童一心による対談が収録されている。お察しの通り、「爆問学問」みたいな雰囲気になってるぞ。でも、話の内容は、多くの爆笑問題ファンが気にかけている「太田は本当に映画を撮影するつもりなのか?」という疑問(疑惑?)についてのもので、かなーり興味深い。他の映画監督の話なんかも飛び出して……北野武竹中直人三谷幸喜はともかく、松本人志の話も出してくるとはね。こういう話に盛り上がっちゃう、三流週刊誌の様な私。最後の最後に反省。猿っ。


・本編(68分)

・特典映像(47分)

爆笑問題×犬童一心 対談」「山中秀樹のニュースコーナー」