菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『サンドウィッチマンライブ2011 新宿与太郎完結篇』

サンドウィッチマン ライブ2011~新宿与太郎完結篇~ [DVD]サンドウィッチマン ライブ2011~新宿与太郎完結篇~ [DVD]
(2012/02/03)
サンドウィッチマン

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サンドウィッチマンが2011年に行った単独ライブ『サンドウィッチマンライブ2011 新宿与太郎完結篇』を収録したDVDが、先日リリースされた。

サンドウィッチマンの単独ライブがDVD化されるのは、これで五回目。M-1優勝後から、年に一度のペースでリリースされ続けている。しかし、今回のタイトルには、“完結篇”の三文字が。これは恐らく、単独ライブを止めるわけではなく、これまでライブタイトルに冠し続けてきた“新宿与太郎”の文字を外してしまうことを意味しているのだろう。今回の単独ライブは、東京、札幌、和歌山、大阪、名古屋の五都市で行われており、本作には東京公演の模様が収録されている。

M-1グランプリ2007優勝」「キングオブコント2009準優勝」などの功績を見ても分かるように、サンドウィッチマンは芸人として高く評価されている。オーソドックスなシチュエーションに真正面から切り込む骨太さを持っていながら、ところどころでマニアックなボケを放り込んでしまう芸人としての欲望を決して抑えようとしない彼らのネタは、まるで遊び心を失っていない素敵な大人の魅力を放っている。だからこそ、こうして長い年月をかけて、彼らのネタは愛され続けているのだろう。こういう大人になりたいもんですな、ホント。ただ、芸人にとっての独壇場といっても過言ではない単独ライブとなると、彼らの芸人としての欲望は通常の何倍にも膨れ上がり、最終的には単なる悪フザケとして終わってしまうことも少なくなかった。また、そういうネタに限って、妙に長いんだ。

そういう意味では、本作のバランスは絶妙。安定感のある漫才でオープニングを飾り、伊達(ツッコミ)が客に回る『結婚相談所』、富澤(ボケ)が客に回る『占い師』、シチュエーション自体がボケになっている『トイレ』、伊達がボケを演じる単独ならではのコント『癒す男』、オーソドックスなシチュエーションコント『紳士服店』、そして最後にまた安定感のある漫才で締め。ライブ全体の構成として、申し分のないバランスである。なにせ、サンドウィッチマンのネタの形式が、全て高いクオリティをもって収められているのだから、文句のつけようがない。近年、彼らの単独ライブは、少しずつ完成形へと近付いている様に思ってはいたが、ここにきて、一つの頂点に辿り着いてしまったといってもいいかもしれない。流石、完結篇。個人的には、『トイレ』が印象に残っている。トイレットペーパーを探して、股間を抑えながら徘徊する二人の姿は、とてつもなくドイヒーで面白かった。

ただ、大声を出してしまうほどに笑ってしまったのは、特典映像として収録されている『サンドウィッチマンのラーメン道』。これは、「芸人なんかやっててもいつか食えなくなるわけですから」という理由で、サンドウィッチマンの二人がラーメン作りに挑戦するVTRなのだが、そうして完成した“ザ・メン(富澤:女性客が増えるといいですね)”を、彼らはこともあろうに佐野実のところへ持って行くのである。佐野実といえば、ラーメン店“支那そばや”の創業者であり、ラーメンの鬼という異名を持つ人物。そんな佐野の元を訪れ、「のれん分けしてもらおうかと……」と冗談半分で迫る二人の姿は、まさに悪フザケの極致。対する佐野はというと、二人の言動に対して激しいゲキ(という名のツッコミ)を飛ばすのだが、その結果、新しいドイヒーな言動を引き出してしまうことに。そこへ更にゲキを飛ばし、更に更にドイヒーな言動を引き出し……絵に描いたような悪循環がそこに繰り広げられていく。あまりのドイヒーぶりにちょっと笑いそうになっている佐野の表情も含めて、是非とも見てもらいたい。ホント、笑えるぞ。

最後に。恐らく、サンドウィッチマンの二人が、最も笑いに変えたかった、笑いに変えざるを得なかっただろうネタを取り上げて、今回のレコメンドを終了したい。はっきりいって、ここで例の一件について触れるのは些か無粋かとも思ったのだが、彼らがこの件をネタにしていたという事実だけは、ここに書き留めておきたかったのである。僕もまた、欲望を止められない人間らしい。サンドウィッチマンの様な骨太さは無いけれどね。

以下のくだりは、最後の漫才『タイムカプセル』で披露された。小学生の頃の富澤が、大人の富澤に送った手紙の内容とは……。

富澤「「毎日、学校では楽しく過ごしていますが、担任の先生はあまり好きではありません」」

伊達「ああ、そうだったの」

富澤「「この間、クラスのお楽しみ会の出し物について話している時、だらだらと聞いていた僕に先生はこういいました」」

伊達「うん」

富澤「「知恵を出さないヤツは助けないぞ」

伊達「おお、何? えっ? えっ? 最近聞いたぞ、お前それ」

富澤「「あと、これはオフレコな」

伊達「最近聞いたわ、俺それ! スゲー聞いた俺!」

花も嵐も、踏み越えろ。


・本編(68分)

「漫才~グルメリポーター~」「結婚相談所」「占い師」「トイレ」「癒す男」「紳士服店」「漫才~タイムカプセル~」

・特典映像(79分)

サンドウィッチマンのラーメン道 ~前篇~」「サンドウィッチマンのラーメン道 ~後篇~」「ちょう散歩 ~哀川ちょう 板橋・大山へゆく~」「ちょう散歩 ~哀川ちょう 原宿へゆく~」「ラジオ」「伊達どっきり」「ライブツアーSPECIALメイキング」