菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『2700 BEST ALBUM「SINGLES」』

2700 BEST ALBUM 「SINGLES」 [DVD]2700 BEST ALBUM 「SINGLES」 [DVD]
(2012/02/07)
2700

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音楽を取り入れた独特の芸風が注目を集めているコンビ、2700のネタを集結したベストライブDVD『2700 BEST ALBUM「SINGLES」』が先日リリースされた。彼らがこれまでにテレビやライブなどで発表してきたネタが収録されているから、「SINGLES」。なかなかシャレたタイトルである。パッケージも、明らかに某ロックバンドを意識したデザインで、これまたシャレている。自らのネタを楽曲として捉えている彼らならではのこだわりが、こういうところにもきちんと反映されているわけだ。徹底しているなあ。

収録されているネタ……もとい、楽曲は全24曲。彼らの代表作である『つまさきのアイドル』『右ひじ左ひじ交互に見て』『僕はこのダンスをする』は勿論のこと、爆笑レッドカーペットで披露された『ショートコント』、“ロックの祭典”キングオブコント2008で厳しい評価を受けた『ジョニーマーキュリー』、三年後のキングオブコント2011で賛否両論となった『キリンスマッシュorレシーブ』などの楽曲も、しっかりと抑えられている。これが全てなのかどうかは分からないが、少なくとも、僕が知っている2700の楽曲は全て収録されていた。なかなかにとんでもないボリュームである。これ以上詰め込むとアンコが出るね。

それらの中には、かなりディープな楽曲も見受けられる。特に、八十島が思わず「ついてきてる?」「これからどんどん難解になっていくから……宜しく」と客席に呼びかけてからは、まるでアルバム収録曲の様にアーティスティックな楽曲が続いている。それらの中でも強烈なのが、深夜の時間帯にテレビで放送されてしまったというエロティシズムソング『エクスタシー』。その驚くべき内容は、ツネがしゃべる○○○に扮して女性の悩みに答えていくというもの。一見すると、単なる下ネタにしか見えないが、これを実際にやってのけたというところに彼らの天才性が表れている。ただ、この曲のせいで、本作は家族一緒に観ることをオススメできない作品になってしまっている。しかし、それでもこの曲を収録したかったという、彼らの頑なな意思は尊重されるべきだろう。……うん。

ところで、2700のステージを見ていると、なんとなくテツandトモのことを思い出す。一見すると、両者には“音楽を扱っている”という共通点しかないように見えるが、どちらもボーカルとパフォーマンスのユニットで、またリズム重視で歌詞の内容に深みがない(瞬間的に“言葉の意味”を理解できる)点も似ている。「めちゃ×2イケてるッ!」の1コーナー「笑わず嫌い王決定戦」にテツandトモが出演してからおよそ10年、見た目は違えども共通点の少なくないコンビが再び注目を集めているという事実は、なかなか興味深い。歴史は繰り返す……とはよくいったものである。

こういったパフォーマンスに加え、本編には今回のライブに至るまでのドキュメンタリーも収録されている。そこで映し出されているのは、これまでの二人の歴史、ライブに向けて行われたレコーディングやリハーサルなどの風景、そしてテレビやライブでは目にすることの出来ない二人の素顔だ。外国人スタッフとのすれ違いに怒りを隠せない八十島、「本当は漫才をやりたかった……」と想いを告白するツネの姿は、彼らと彼らのサウンドを愛して止まないファンには些かショックが強いかもしれない。しかし、カメラを意識しようとはせずに、ただありのままの姿を見せている二人の姿は、自らのファンに対する確かな信頼を思わせた。……いや、多くのファンは恐らく、「なんだこれ?」って思うだろうけど。中でも、八十島の音楽愛が故の壊れぶりは、なかなかにアレである。

そんな本編だけでも十分に満足できる(なにせ収録時間が146分もある!)のだが、そこへ更に特典映像として2700とBoseスチャダラパー)のスペシャルコラボが収録されている。先のドキュメンタリーとは違い、こちらは完全にガチだ。インタビューでも、Boseは「生半可なカタチでは上手く噛み合わないと思う」「ちょっと挑戦というか、トライだな」とかなり真剣なコメントを残していたが、実際にコラボしている楽曲を聴くと、本当にガチンコで思わず驚いてしまった。緊張のあまり喉がカラカラに乾いてしまっている八十島の姿も含めて、是非とも観てもらいたい映像である。

ちなみに、特典映像にはもう一つ、ツネがやりたかったことを映像化した「ツネのこれがやりたかってん」が収録されている。ここでは、ツネがやりたかったこととして、世にも珍しい2700のしゃべくり漫才が披露されている。しかも、ネタを書いているのは、八十島ではなくツネ当人。楽しそうにツッコミを入れるツネに対し、気恥ずかしそうにボケる八十島の姿は、Boseとのコラボとは違った意味で必見。願いが叶って良かったネ、ツネ。

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・本編(146分)

2700による全24曲パフォーマンス

【曲間VTR】DOCUMENT OF BEST ALBUM “SINGLES”#01~#10

・特典映像(38分)

「~2700×Boseスチャダラパー)特別対談&スペシャルセッション~『右ひじ左ひじ交互に見て/2700 featuring Bose』」

ツネが追い求めた笑いの形「ツネのこれがやりたかってん」