菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「小林賢太郎テレビ1・2 DVD-BOX」(2011年3月16日)

小林賢太郎テレビ 1・2 DVD-BOX

小林賢太郎テレビ 1・2 DVD-BOX

 

2009年1月と2010年8月にNHKで放送された「小林賢太郎テレビ」がDVD化されたので、観る。小林賢太郎がやたらと持ち上げられるナレーションに辟易としたが(自分にとっての小林賢太郎は、あくまでも“ラーメンズ小林賢太郎”なので)、内容はちゃんと面白い。小林の一人ライブ「ポツネン」で披露されたパフォーマンスをテレビ仕様に再構築したものもあれば、テレビオリジナルのコメディもある。小林賢太郎を知らない人は勿論のこと、小林賢太郎を知っている人でも楽しめるだろう親切設計だ。

ただ、全体から漂ってくるカリスマアピールぶりに、拒否反応を示す人もいるのではないかと思う。小林がもはや物凄い表現者になっているということは、DVD越しではあるが、これまでラーメンズの活動を見てきた僕だって分かっている。とはいえ、その原点となっているのは、あくまでも笑い。「どうぞ、私の笑いを見て下さいませ」とまで低姿勢であるべきだとは思わないけれども、「さあ、俺の笑いを見て、笑いやがれ」といわれるのは、何かが違うような気がする(それも、ナレーション越しに)。立川談志松本人志などの前例もあるけれど、彼らはそれをちゃんとテレビで見せつけてきたという経緯があるわけだし。舞台人として評価されているという事実を、そのままテレビの中に持ち込もうとする演出には、どうしても違和感を覚えてしまった。とどのつまり、この番組にはエレ片的な要素が足りない!(まあ、NHKにそんな無茶な期待をしちゃいけないんだろうけど)

とはいえ、既にラーメンズとしての小林を知っている人間にしてみれば、この番組は素直に楽しい。舞台とテレビの違いを確認するという意味でも楽しいし、なによりテレビならではの多額の予算を使っているだろう小道具を用いたコントが面白い。例えば、 “腑に落ちない展”なる展示会では、「乱暴に書かれた【丁寧】」「NO MORE PLACARD!と書かれたプラカード」「ズボンと書かれたTシャツ」など、観ている人間の脳味噌をくすぐるナンセンスな小道具が次々に繰り出してくる。かと思えば、“マヨネーズをマネようぜ”では、様々な物質をマヨネーズに似せようとする。ビジュアルの面白さだけで、何の意味もない。でも、その徹底的に意味がないところが、妙に面白い。

また、この番組では、小林にお題を提示し、限られた期間内でコントを作り上げてもらおうという挑戦的な企画も行われている。これまで舞台を中心に活動し続けてきた小林にとって、こういったテレビバラエティ的な企画は初めての試みだったのではないだろうか。それでも、その期間内のうちに、ちゃんと難解なお題に沿ったコントを作り上げてしまうのだから、実に恐ろしい。ちなみに、第一弾のお題は「テレビ」、第二弾のお題は「3D」だった。編集も何もない状態で、小林がどんな世界を作り出すのか……実際に観て、確かめてもらいたい。

……と、あれやこれやの映像や企画で満載の本作。二枚組の割に収録時間が短いので、購入当初はなんだか損をしたような気持ちになったのだが、この映像の密度を考えると、むしろ納得の値段といえるのかもしれない。なお、「小林賢太郎テレビ」はその後、2011年8月に第三弾を放送。しかし、現時点ではDVD化される予定はない。待ち遠しいな。