菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

2丁拳銃『百式2010』(1,200字)

百式2010 [DVD]百式2010 [DVD]
(2011/09/28)
2丁拳銃

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近年、日常生活の中にあるしっくりとくるシチュエーションを、「丁度ええ」という言葉とともにあるあるネタとして昇華するスタイルを見出した漫才師、2丁拳銃。更に、最近では浮気癖のある小堀のことを、芸人として先輩にあたる修士の嫁が説教するという妙な芸風(?)まで身に付けた。しかし、彼らの本質は、あくまでも漫才である。特に、2002年から現在に至るまで、年に一度のペースで開催されている百分間ノンストップ漫才ライブ「百式」は、彼らの漫才師としての魅力が詰まったライブとして、高い人気を集めている。本作はその2010年版を収録したものだ。

修士モンスターペアレントとなって、小堀演じる不謹慎な教師に詰め寄る漫才コント『モンスターペアレント漫才』、子どもの頃に憧れていた職業を演じる修士が、それに対して繰り出される小堀のボケへノリツッコミし続ける『憧れの職業漫才』、模様替えしたという修士の部屋に出来たデッドスペース(※どうしようも出来ない中途半端な隙間)について、小堀が強く言及する『デッドスペース漫才』など、百分という時間を有意義に使用したバリエーション豊富な漫才群は、とにかく圧巻の一言。言葉遊びに終始する『心掛けライム漫才』、二人が内容のない小芝居を繰り広げる『罠だ!!漫才』など、「百式」ではお馴染みのスタイルによる漫才も演じられており、その内容はとても充実している。しかし、最大に見どころは、やはり「丁度ええ」を用いた漫才だろう。ただ、それはテレビなどでも披露されている『丁度ええクイズ漫才』のことではない。その後に披露されている、『丁度ええコンパ漫才』のことである。

『丁度ええコンパ漫才』とは、「丁度ええ」のスペシャリストである小堀が、コンパの席における「丁度ええ」を修士に講義するというもの。とどのつまりは“コンパあるある”である。しかし、小堀が提示するコンパあるあるは、なかなか修士(と客)の共感を得られない。どうしてそれが「丁度ええ」のか、まったく説明しないためである。ところが、小堀の講義が進むにつれて、そんなことはどうでもよくなっていく。何故ならば、その内容が物凄い勢いで、下衆な方向へと雪崩れ落ちていくためである。気が付くと、修士は相方の下衆な姿に冷たい視線を浴びせ、女性客はドン引きするという悲惨な状況に。「丁度ええ」という完成されたフォーマットを使って、修士の嫁に叱られているという現状に説得力を与えるネタを演じているという意味で、まさに今の彼らを直球に表現しているネタだといえるだろう。この塩梅、実に「丁度ええ」。

ちなみに、特典映像には、小堀が「スピードワゴン井戸田潤presents 井戸田企画vol.5」へと出演した際に披露した創作落語『ハンカチ』が収録されている。仲が悪く見える夫婦の絆を描いた人情噺で、18分と短いながらも、なかなか悪くない内容となっている。……さっきの下衆い人と同一人物とは思えない!


・本編(115分)

「ツカミ漫才」「心掛けライム漫才」「丁度ええクイズ漫才」「丁度ええコンパ漫才」「モンスターペアレント漫才」「憧れの職業漫才」「デッドスペース漫才」「罠だ!!漫才」「強盗漫才」

・特典映像(81分)

修士「生活の中にある“丁度ええ”を100個見つける一日ロケ」

小堀「イベントに参加したときの創作落語「ハンカチ」を披露」