菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ラバーガールソロライブ『ジェイコブ』

ラバーガール ソロライブ「ジェイコブ」 [DVD]ラバーガール ソロライブ「ジェイコブ」 [DVD]
(2012/05/23)
ラバーガール

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現在、結成十年目を堪能中のお笑いコンビ、ラバーガール。売れそうで売れない状況のまま迎えた十周年だが、コント師としての実力はメキメキと向上しているように思う。その成長過程がこうして毎回DVD化されている現状は、ライブに赴くことの出来ない地方組の一人である私には非常に有難い。彼らの所属事務所である人力舎もまた、彼らには多大なる期待を寄せているのだろう。それにしても、そろそろラバーガール以降の芸人にも台頭してきてもらいたいところなのだが。最近、注目を集め始めているエレファントジョンや鬼ヶ島も、芸歴でいえば彼らの先輩にあたるし……。

話を戻そう。とにかく今、ラバーガールのコントは着実に成熟へと向かっている。『報道スペシャル2012』の様に彼らお得意のシステマティックなコントは勿論のこと、オーソドックスなシチュエーションコントを特殊なお店を舞台に繰り広げる『Tattoo』、ツッコミ無用の世界観で二人がボケまくる『ホスト物語 ~キョウヤと雅~』など、それは様々なスタイルの中で如実に表れている。また、DVD化されることを逆手にとったかのようなコント『宇宙大戦争』のように、遊びの要素が加わったコントも実に上手くなった。かつてはキングオブコメディのフォロワーという批判もあった彼らだが、今や立派にラバーガールの世界を完成させている。大きくなったなあ(父親の様な温かい目で)

そして今、ラバーガールは新しいステップへと踏み出そうとしている。いや、これを新しいステップと呼べるのかどうかは、まだ分からない。ただ、私はこのコントに、これまでのラバーガールのコントには感じられなかった凄味を感じた。もしかしたら、これが一つの突破口になるかもしれない。そう、思えた。その突破口とは、本編の最後に収録されているコント『ラジオ』である。『ラジオ』は、深夜ラジオのDJ(飛永)と彼の出待ちをするハガキ職人(大水)の関係性を描いたコントだ。当初、二人の関係は良好に思えたが、放送の回を増すごとに大水の態度に変化が現れていく。そして事件が……。以前から、ラバーガールのコントでは、大水が異常に不気味な人物を演じることは少なくなかった。が、その中でも彼は、トップクラスの危うさを持っていた様に思う。そして、そのオチから感じられる、業の露呈……。ラバーガールがこういうタイプのコントを作ることが出来るようになったことは、大いなる前進だ。

なお、特典映像には、彼らが2005年に開催した初単独ライブ「パットミベラルーシ」の模様が収録されている。そこに映し出されているのは、今のようにきちっと笑いを掴み取る姿からは程遠い、しかしがむしゃらに笑いを取ろうと奮闘する若き二人の姿だ。そのコントははっきりいって、酷い。だが、ここから彼らが現在地まで這い上がってきたのだと考えると、実に感慨深い。当時を懐かしんでいる現在の二人の副音声と合わせて、楽しんでいただきたい。


・本編(84分)

「ヘアサロン「JACOB」」「オープニング」「報道スペシャル2012」「振り込め詐欺」「Tattoo」「街角にゃんダフル」「宇宙大戦争」「寿司屋」「マネージャーからの呼び出し」「ホスト」「2人で成し遂げよう」「ホスト物語 ~キョウヤと雅~」「ラジオ」「エンディング」

・特典映像:2005年初単独ライブ「パットミベラルーシ」(56分)

「空手部」「オープニング」「マー君」「ピザ屋」「ロボットコンテスト」「ライフセーバー」「エンディング」

・副音声

ラバーガールによるコメンタリー