菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

芸人さんのベストDVDとベストコントを聞かれたので、答えてみた。

実は以前から「ザ・インタビューズ」というものをやっているんですが、先日、そこでこんな質問を受けました。

東京03、ラーメンズ、バナナマン、バカリズム、この中で「ベストDVD」と「ベストコント」をそれぞれ一つずつ挙げるとしたら、どの作品を選びますか?

なかなか面白い質問だと思います。お笑いマニアであれば、一組ずつ丁寧に考えて回答を導き出し、ついでに聞かれてもない事細かな解説を掲載することでしょう。ところが、この質問を目にした時の私の健康状態は、あまり芳しいものではありませんでした。それ故に、当時の私はこの質問に対して、非常にザックリとした回答のみを掲載してしまいました。無論、それでも問題は無いでしょう。聞かれていることには、ちゃんと答えているわけですから。

しかし、恐らくこの質問を考えた方は、その理由についても聞きたかったのではないでしょうか? 「あの素晴らしいブログを運営されている素晴らしい人は、どんな素晴らしい理由で素晴らしい回答を送ってくれるのだろう?」と、心を躍らせていたのではないでしょうか。もしかしたら、そんなことはなかったのかもしれませんが、その可能性について考えて、私は悩んでしまいました。「ああ、私はもっとちゃんとした回答を送るべきではなかったのか」「面白い回答に期待されていたのではないだろうか」「質問者はもしかしたら立川流家元の亡霊なのではないだろうか」と、来る日も来る日も夜しか眠れない状態が続きました。嘘ですけど。

と、いうわけで。この質問に対する回答について、ブログの方で補填しようと思った次第です。まあ、質問者の方以外の人たちは興味が無いかもしれませんが、お暇でしたらお付き合い下さいませ。

 

東京03のベストDVD

第12回東京03単独ライブ「燥ぐ、驕る、暴く。」 [DVD]第12回東京03単独ライブ「燥ぐ、驕る、暴く。」 [DVD]
(2011/11/16)
東京03

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当初は『スモール』か『自分、自分、自分。』のどちらかを選ぼうと思ったのですが、最終的に本作を選択することになりました。というのも、彼らのコントは回を重ねるごとに、どこかしらか進化しているからです。なので、どうしても過去の作品よりも、最近の作品になってしまいます。また、本作は全体のバランスがとにかく素晴らしい。失敗談を面白可笑しく演出して語る先輩を言及する『鬼才』のような日常的シチュエーションから、真剣な話が全然違う方向に転がっていく『家族会議』のようなザ・コントなものまで、とにかくバラエティ豊富。それに加えて、特典映像には、従来の東京03とはまた違った味わいのユニットコントも収録。テーマソングの完成度の高さなども考慮して、本作となりました。

東京03のベストコント

第7回東京03単独ライブ「スモール」 [DVD]第7回東京03単独ライブ「スモール」 [DVD]
(2008/11/12)
東京03

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東京03のベストコントといえば、私の中では『卒業生』(from『スモール』)に決まっています。まあ、『コンビニ強盗』や『陰口』、『営業トーク』なども捨てがたいのですが、なにせ初見の衝撃が大きかったので。「卒業生の顔を思い出せない先生」というベタなシチュエーションを、もうこれでもかと掘り下げていく様子がたまりません。ちなみに、このネタは「爆笑オンエアバトル」でも披露されて、無事にオンエアされていましたが、あの短い時間ではこのネタの本質が見せられていなかったように思います。当時、放送を見て「つまんねーなー」と思った人には、この単独公演バージョンを是非ともお薦めしたいです。きっと、本当の面白さを分かっていただけると思うので……。

ラーメンズのベストDVD

ラーメンズ第12回公演『ATOM』 [DVD]ラーメンズ第12回公演『ATOM』 [DVD]
(2009/10/21)
ラーメンズ

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一回一回の本公演を大切に演じているイメージの強いラーメンズ。まあ、他の芸人さんもそうだとは思いますが、その中でも彼らは殆ど舞台でのみ活動しているという特殊なケースなので。とてつもないこだわりを持っていると言っても過言ではないでしょう。そんな彼らの本公演の中でも、ダントツといっても過言ではないクオリティを見せているのが本作。お笑いライブとは思えない独特の緊張感が漂う中で繰り広げられる、喜怒哀楽の感情を刺激する不可思議なステージ。“落語”をパロディした『新噺』でニヤつかされたと思ったら、冷凍保存されて現在の日本に現れた男の発言に涙を禁じえない『アトム』、なんとなしに繰り広げられる雑談から一転……『採集』など、とにかくコントという概念を破壊しかねないコントばかり。ラーメンズのベストを選ぶとしたら、これか『TEXT』になるでしょうね。

ラーメンズのベストコント

ラーメンズ第17回公演『TOWER』 [DVD]ラーメンズ第17回公演『TOWER』 [DVD]
(2010/09/15)
ラーメンズ

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本公演もそうですが、ラーメンズは一つ一つのコントだけでも凄い完成度を見せていることが多いです。その中からベストコントを拾い上げるというのは、なかなか容易ではありません。独自の世界観と片桐という存在を同時に提示する『現代片桐概論』、シュールなようでいて実はキャッチーな『読書対決』、片桐が表現力の限界に挑む『タカシと父さん』など、初期のコントだけでも名作だらけ。その中から私が選んだのは、『名は体を表す』(from『Tower』)です。ラーメンズは初期の頃から、イメージの共感による笑いを重視して来たように思います。「あ、それ分かるなあ」「なんとなく理解できるなあ」と観客に思わせる、絶妙なイメージによる笑い。『名は体を表す』は、それのみで展開しているコントです。オールニュアンス。ハマるかハマらないかは人それぞれでしょうが、当たれば間違いなくホームラン! さあ、あなたも乗り込め、カマンチョメンガーッ!

バナナマンのベストDVD

バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]
(2003/03/26)
バナナマン

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最近はタレントととしての活動も増えてきて、あまりライブに力を入れられなくなってきたのではないかというイメージの強い彼らですが、その単独ライブは変わらず不可思議な世界に包まれています。ラーメンズほどのこだわりを感じさせない、なのに、なんだかんだでバナナマンにしか生み出せないコント。そのコントを言葉で表すのは、どうも難しいです。そんな彼らの単独ライブも、なんだか不可思議。夢の中のようなコントもあれば、青春まっしぐらの青臭さが漂うコント、人間という存在を嘲笑するかのような捻くれたコントなどもあったりして。それなのに、どれもこれもバナナマンなんですよね。もはや彼ら自身が不可思議と言ってしまってもいいのかもしれません。そんな彼らのベストDVDは、『ペポカボチャ』です。近年の口演DVDにも素晴らしい作品は多く、例えば、アングラな世界観に光が差し込んだかのような分岐点を思わせる『Sugar Spot』、月のように幻想的なコントがたまらなく美しい『wonder moon』なども秀逸なのですが、私はどうしてもこの『ペポカボチャ』のことが捨てられないんです。それくらい、凄い。

バナナマンのベストコント

バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]
(2003/03/26)
バナナマン

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『ペポカボチャ』の何が凄いのか。このライブは、それまでアングラ的な世界観のコントを演じ続けてきたバナナマンの集大成であると同時に、新たなる世界への飛翔を感じさせる内容になっているんです。そんな本作には、カボチャを使って設楽が日村を言葉巧みに奴隷にしてしまう『pumpkin』、「泣いた赤鬼」をモチーフとした優しい童話を思わせる『mountain』、雨の日に大人の二人がウェットなやり取りを展開する『rain』など、名作と呼ぶに相応しいコントが幾つも収録されていますが、中でも究極は『secretive person』でしょう。日村と設楽が何気なく繰り広げていた雑談の見えない部分が明らかになっていく様は、推理小説を読んでいるかのような快感を覚えさせてくれます。このネタは『バナナマン傑作選ライブ bananaman Punch』にも収録されていますが、鑑賞する際は是非とも原典を先に見ていただきたく願います。

バカリズムのベストDVD

バカリズムライブ「クイズ」 [DVD]バカリズムライブ「クイズ」 [DVD]
(2010/09/22)
バカリズム

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本作に関しては、ネタのタイトルを見ただけでネタの内容が思いだせるかどうか、というシンプルな基準で判断しました。なにせ、バカリズムのライブは全体のバランスよりもネタの内容を重視しているところがあるので、クオリティの高さでどうこうで考えるのは面倒臭いなあ……と(四組目で疲れてしまった模様)。というわけで、本作。金八先生に憧れている教師の授業が繰り広げられる『暮れなずむ町』、円周率が言える少年の苦悶を描いた『3.14』、正義感が強いだけの男が人を助けようとする『正義感』……どれもはっきり覚えているし、なにより面白かったという記憶が強く残っていました。しかし、その中でも面白かったのが、

バカリズムのベストコント

バカリズムライブ「クイズ」 [DVD]バカリズムライブ「クイズ」 [DVD]
(2010/09/22)
バカリズム

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『正直村と嘘つき村』です。これは、正直村の人間と嘘つき村の人間のどちらか分からない人間に道を尋ねる……そんなクイズをモチーフにしたコントです。細かい部分を説明すると面白さが半減するので書きませんが、バカリズムの意地悪な視点が上手く取り入れられた、物凄いコントになっています。……バカリズムのコントは発想重視だから、説明し辛いのが面倒臭い! とにかく面白いよ!

以上、回答の補填でした。