菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『オリエンタルラジオ LIVE 2011 ~絶賛、再ブレイク中。オファーお待ちしております~』

オリエンタルラジオ LIVE 2011 ~絶賛、再ブレイク中。  オファーお待ちしております~ [DVD]オリエンタルラジオ LIVE 2011 ~絶賛、再ブレイク中。 オファーお待ちしております~ [DVD]
(2012/08/15)
オリエンタルラジオ

商品詳細を見る

最初は、思い出話から。

中田「そんなこんな言いながらね、我々ももう芸歴七年目になりましてね」

慎吾「七年目! もう本当、あっという間でしたよコレね」

中田「思い出してみると、やっぱ言えるのがね。順風満帆だったな、と……」

慎吾「どこがだよっ!違う違う違う! 色んなことがあったでしょ!?」

そう。オリエンタルラジオの七年間は、とても順風満帆といえるものではなかった。オリジナルの芸でブレイクし、数々のバラエティ番組に引っ張りだこになるだけではなく、幾つかの冠番組も持っていた全盛期の彼ら。自他ともに認めざるを得ない、押しも押されぬ大ブレイク。しかし、諸行無常の言葉が表すように、あっという間に状況は変わっていく。冠番組は全て終了し、CMや雑誌の取材も少なくなっていった。それはまさしく盛者必衰。凡百の一発屋たちと同じ道に、彼らもまた飲み込まれようとしていたのである。

最初の漫才は、そんな二人の思い出話から始まる。

オリエンタルラジオ LIVE2011 ~絶賛、再ブレイク中。オファーお待ちしております~』は、そのタイトルの軽さに反して、オリエンタルラジオにとって非常に重大なライブといえる。少なくとも、彼らはこのライブでこれまでとは違ったスタンスを見せている。冒頭に挙げた、漫才の中で繰り広げられる思い出話もその一つだ。彼らが自身のキャラクター傾向をモチーフとした漫才を披露したことはあったが(特に前作『VS』では、その傾向が顕著)、明確に思い出話と分かる話題を漫才にした記憶は私にはない。ブレイクし、若くして頂点を間近に捉え、落ちていき、また駆け上がる。恐らく、本作は七年の紆余曲折の果てに辿り着いた、オリエンタルラジオの一つの集大成だ。

では、それ以降の本編も集大成と呼ぶに相応しい内容だったのかというと……些か断言し辛い。中田敦彦のカリスマ的(ナルシスト的?)なキャラクターは最高に面白かったし、そんな中田の狂気に物怖じしながらもツッコミ続ける藤森慎吾のダメ男ぶりもまたたまらないものがあった……が、それでも本作は傑作と呼べるレベルではなかった。ただ、以前に比べて、中田の狂気的な発想がよりネタに昇華されていた様に思う。これは単なる憶測に過ぎないが、もしかしたら次の単独ライブはより素晴らしい内容になっているのではないだろうか。そう考えると、むしろ本作は集大成というよりも分岐点に近い作品なのかもしれない。

それでも本作が集大成としての堂々とした雰囲気を醸し出しているのは、最後にあのネタが収録されているからだ。そのネタとは、彼らがブレイクした最大の要因……『武勇伝』である。しかも、それはただの『武勇伝』ではない。彼らが現在に至るまでに経験して来た全ての出来事をまとめた、メモリアルな『武勇伝』だ。その内容がどのようなものなのかは、ここでは書かない。ただ、はっきり言って、笑いを誘うものではない。笑う前に、じーんときてしまうからだ。最後の最後にあれは卑怯だと思う。でも、嫌いじゃないぞ。

ちなみに。本作には二人によるオーディオコメンタリーが収録されているのだが、これが本編と同じくらい面白い。こういうコメンタリー特有のグダグダさが皆無で、終始キレがある。中でも、“よしもと男前ランキング”の件について語る場面はたまらない。……とどのつまり、「ラジオのオファーもお待ちしております」ということだ!


・本編(105分)

「MANZAI 1」「PROLOGUE」「CONTE MISSION」「MANZAI 2」「CONTE APERTMENT」「MANZAI 3」「CONTE COMICS」「CONTE YUMEMIZAWA」「EPILOGUE」「武勇伝」

・音声特典

オリエンタルラジオ中田敦彦×藤森慎吾)オーディオコメンタリー」