菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

Hi-Hi『靴』

Hi-Hi/靴 [DVD]Hi-Hi/靴 [DVD]
(2012/09/12)
Hi-Hi

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THE MANZAI 2011」決勝戦での活躍から注目を集めたお笑いコンビ、Hi-Hiによる初めてのライブDVD。漫才師としての実力を評価されている彼らだが、本作に収録されているネタはコントがメインで、漫才は三本だけしか収録されていない。以前、彼らと同じ芸能事務所・ケイダッシュステージに所属する漫才師・ハマカーンがDVDをリリースしたときも、確か漫才ではなくコントがメインの構成になっていた。……この事務所は漫才の出し惜しみをしているのだろうか。

ただ、はっきり言って、コント師としてのHi-Hiは平凡の域を出ない。もとい、どっかで観たことのあるようなネタが、やたらと多い。例えば、二人の自殺志願者が飛び降りようと決めたビルが被ってしまっていざこざが生じる『ビルの上で…』は、アンタッチャブルが「爆笑オンエアバトル」チャンピオン大会で披露していたコント『自殺』を彷彿とさせる。同性愛者の告白が思わぬ展開を招く『花火大会』の設定は、おぎやはぎがベストコントライブで披露していた『○○ではない』と被る。ある状況で確実に怒られちゃう行為を提供してくれる寿司屋の模様を描いた『怒られ寿司』は、アルコ&ピース『寿司屋』とフォーマットがほぼ同じ。恐らくはパクっているわけではないのだろうが、それにしても……似てる。もしやリスペクトか。トリビュートか。事情は知らないし、そこまで興味もない。ので、この話は掘り下げない。うん。

その一方で、漫才における上田のテキトーさを上手く盛り込んだ『迷子』は、コントとしてはオーソドックスなシチュエーションながら、なかなかの秀作だったように思う。岩崎演じる子ども(※全然子どもに見えない)を相手に、テキトーを超えてサディスティックにすら見えるボケを放り込んでくる上田の姿は、実に活き活きとしていて面白かった。後半、ちょっとダラけてくるが、きちんと編集すれば「キングオブコント」準決勝進出も夢じゃないのでは(流石に決勝戦進出は断言できない)。

肝心の漫才については、言わずもがな。THE MANZAI 2011」決勝進出以後も衰えない勢いを感じさせる、エネルギッシュで力強いやりとりを楽しむことが出来る。中でも二本目の漫才は必見。現在のテキトースタイルになるまでに作られてきた漫才が次から次へと繰り出されていく様は、まさに圧巻の一言だ。……ただ、こういうベスト的な漫才をやるのなら、事前になにかしらかの説明があった方が観客には親切だったのでは……という気もする。なんというか、ちょっと勿体無い。

総合的に見て、Hi-Hiに対して好意的な印象を持つ人間であれば、きっと満足するであろう出来である。ネタのクオリティもそうだが、オープニング映像で某大物ミュージシャンとセッションする映像や、舞台裏で衣装を着替えながらイチャついている映像などは、ファンなら垂涎モノだろう。特典映像含めて二時間超と、そこそこにボリュームがあるのも良い。幕間に挟み込まれる悪ふざけネタ合わせ映像はちょっとうざったかったが、それもファンであれば楽しく受け入れることが出来るだろう。

ちなみに、個人的に最も楽しめたのは、特典映像に収録されている『パックマン』。岩崎(38歳)が目隠しをした状態でテレビゲーム「パックマン」をプレイするという、ただそれだけの映像である。シンプルながら、実にバカバカしい映像だった。


・本編(105分)

「オープニング」「漫才1」「舞台裏トーク1」「ペットショップ」「ビルの上で…」「舞台裏トーク2」「花火大会」「漫才2」「上斗の拳」「舞台裏トーク2」「伝説レジェンド」「迷子」「怒られ寿司」「取り調べ」「漫才3」「エンドロール」

・特典映像(35分)

「メイキング」「パックマン」「ペットショップ フリ」「花火大会 フリ」「伝説レジェンド フリ」