菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『よゐこライヴ ~もしものfromA~』

よゐこライヴ ~もしもの from A~ [DVD]よゐこライヴ ~もしもの from A~ [DVD]
(2012/08/22)
よゐこ

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元祖おバカ芸人・濱口優と元祖ぬるゲーマー芸人・有野晋哉から成るお笑いコンビ、よゐこが2012年5月に開催した単独ライブの模様を収録。よゐこのライブDVDがリリースされるのは、彼らと親交の深い芸能人をゲストに招いたライブの模様を収めた『よゐこと一緒にコントライヴ ~カッちゃんテッちゃん千秋ちゃん。ついでに来たのがTKO~(2010年2月発売)』以来のこと。但し、『よゐこと一緒に~』で披露されたコントがいずれも過去に創られたネタの改変だったのに対し、本作に収録されているコントは全て新ネタ。実は、既にタレントとして確固とした存在感を放っている今現在も、年に一度のペースで単独ライブを開催し続けている彼ら。本作は、そんな二人のコント師としての姿を収めた、貴重な作品といえるのかもしれない。

よゐこのコントといえば、とにかく“シュール”のイメージが強い。彼らの代表作である『新米美容部員』における、頭にたくあんを乗っけた客が美容室にやってくる姿が印象に残っている人は、決して少なくないのではないだろうか。しかし、本作におけるよゐこのコントは、決してシュールな印象を与えるものではない。当時のように、棒読みでコントを展開する様なことも無ければ、分かる人にだけ分かればいいというような難解さをコントに含ませることも無い。むしろ、今のよゐこのコントは、かなり分かりやすい。二人の等身大のキャラクターが反映されていることが多く、テレビでの彼らしか知らない人でも、きっと気にならずに楽しめるだろう。とはいえ、その分かりやすさが故に、かつてのシュールコントに見られた鋭利なセンスが控えめになっているのは、少しばかり残念でもある。

本作のテーマは「アルバイト」。様々な職業に就いている人たちのことを、よゐこの二人が演じている。……というと、なにやらシチュエーションコントばっかり収録されている様に聞こえるかもしれないが、決してそうではない。そこには、元シュール芸人としての意地か、捻くれた発想が少なからず反映されている。例えば、ちょっと変わった人たちの数をカウントするアルバイトの風景を描いた『交通量調査員』、コンビニ店員のジャマをしてその仕事ぶりを調査する“ジャマする調査員”の模様を実況中継する『コンビニ』、言葉が規制されている未来の世界で誕生した不思議な仕事をモチーフとしたシチュエーションコント『いい言葉の展示会』などは、彼らならではのコントだといえるだろう。

……ただ、これらのコントは、ちょっと“シュールのよゐこ”を意識し過ぎているきらいもある。むしろ、余計な情報ばかりを提供して乗客のテンションをどんどん落としていくバスガイドを描いた『バスガイド』、サービスセンターにかけた電話の音声案内に惑わされる『テレホンオペレーター』など、コントの形式としてはステレオタイプなネタの方が彼らの色合いを上手く引き出していたような気がする。そういう意味で、いいバランスが取れている作品といえるのかもしれない。

総評。肩の力を抜いて楽しめる作品になっている。よゐこというコンビが好きな人は勿論、濱口・有野それぞれのファンにもオススメできる。コント好きにはちょっと物足りないかもしれないが、鈴木おさむ演出ではお馴染みの構成で、それなりに満足感は得られるだろうと思う。ただ、親子での鑑賞はオススメしない。もしも親子で鑑賞するならば、濱口扮する吉川コウジがライブトークでアダルトビデオについて熱く語る『吉川コウジ』だけ飛ばせば、なんとかなるんじゃないかと思う。「ナンパモノのビデオっつうのはね、過程が大事だと思うんですよね……」じゃねーよ!

最後に余談。OverDriveの緒方さんは、いつから“オキャディー”なんて名前に……?


・本編(98分)

「占い師」「オープニング」「バスガイド」「テレホンオペレーター」「交通量調査員」「かまたま」「バイトの達人」「コンビニ」「吉川コウジ」「いい言葉の展示会」「占い師 ~その後~」「エンディング」

・特典映像(23分)

「オキャディーのよゐこライヴ2012 舞台裏を覗いちゃおう」

・音声特典

よゐこの音声解説」