菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『金環日食の恋』(立川談笑)

金環日食の愛 [DVD]金環日食の愛 [DVD]
(2012/09/05)
立川談笑

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立川志の輔立川志らく立川談春とともに“立川流四天王”と並び称される立川談笑の初DVD作品。にわか和尚が禅問答を挑まれる『こんにゃく問答』の舞台をアラブに置き換えた『シシカバブ問答』、紺屋の職人が手の届かない花魁に恋焦がれるお江戸のラブストーリー『紺屋高尾』をジーンズ工場の工員が人気アイドルに恋をする現代劇にした『ジーンズ屋ようこたん』、壷を安く手に入れるために店主を上手く騙してみせる『壷算』を薄型テレビに置き換えた『薄型テレビ算』などなど、従来の古典落語を現代風に置き換える“改作落語”スタイルが知られる談笑師匠だが、本作ではいわゆる古典落語がそのまま披露されている。しかし、そこは談笑師匠、やはり一筋縄ではいかないようで……。

■『松曳き』(12年5月21日・国立演芸場/23分03秒)

粗忽者の殿様“赤井御門守”と、それに輪をかけて粗忽者の家老“田中三太夫”の二人が繰り広げるやり取りを描いた古典落語。但し、談笑師匠の『松曳き』は従来のモノとは違い、殿様は実はしっかりとしており、三太夫の粗忽を引き出すためにわざと粗忽であるように見せていた……という解釈の元、構成され直してある。それ故に、殿と三太夫のやり取りは単なる粗忽者同士のぶつかり合いに終わらず、どことなく底意地の悪い展開を見せてゆく。その姿はまるで、年末の特番でとことんイジられ倒されるジミー大西の様相。そして終盤、とうとう精神を崩壊してしまう三太夫……! 放送コードには引っ掛からないだろうけど、テレビでは絶対に放送することが出来ないだろうスリリングな口演。こんな『松曳き』、観たことも聴いたこともない!

■『おせつ徳三郎』(12年4月18日・国立演芸場/40分51秒)

ある大店の娘“おせつ”が、どうも奉公人の“徳三郎”と親密な関係になっているらしい……という噂を耳にした主人。今年の花見に二人が出掛けたというので、同行した定吉に話を聞いてみると、どうやら噂は真実らしい。身分の違う二人を一緒にするわけにはいかない、徳三郎にはすぐさま暇を出し、おせつには男を添わせようとするのだが……。あまりにも長い内容のため、前半を『花見小僧』、後半を『刀屋』と区分して、別々のネタとして演じられることの多い演目『おせつ徳三郎』だが、本作では全編がっつりと演じられている。前半の『花見小僧』のくだりは、ちょいとばかりアダルトに。花見で起こった出来事を官能小説じみた口調で語る小僧の早熟ぶりに、将来を心配せずにはいられない。後半の『刀屋』のくだりでは、徳三郎の若さゆえの熱い気持ちを重視。別の落語のキャラクターなんかも登場したりして、原典よりも合点の行く展開に仕上がっている。惜しむらくは、終盤のぐずぐず感。あそこをもっとスマートに進められていれば、とんでもない名作となっていたかもしれない……が、もしかしたら、あれは談笑師匠の照れだったのかも……?

■ボーナスマクラ(12年3月15日・国立演芸場/10分41秒)

談志に認められて、二つ目になった夜のエピソードを収録。