菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

夜ふかしの会コントセレクション『楽しい夜ふかし』

夜ふかしの会コントセレクション「楽しい夜ふかし」 [DVD]夜ふかしの会コントセレクション「楽しい夜ふかし」 [DVD]
(2012/12/26)
夜ふかしの会

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キングオブコント2012』ファイナリスト、夜ふかしの会によるコントセレクションDVD。同大会の決勝戦で披露された『学級会』を含めた、全9本のベストコントが収録されている。また、特典映像には、音声だけのラジオコントが5本と、コント『ドッキリ』のNGテイクを収録。副音声解説も幕間映像も舞台裏映像もない、ほぼ全てがコントで構成されている一品だ。自らのコントに自信があるのか、それとも、映像で個人の魅力を引き出すことに自信がないのか。五人の印象の薄さを考慮すると、どうも後者なのではないかと思うのだが……余計な勘繰りである。

結論からいうと、本作はそれなりに面白かった。「面白かった」ではない。「それなりに面白かった」である。否定するほど退屈ではなく、さりとて、絶賛するほど目を見張るものでもない。評する側の人間にとって、こういう作品こそ最も対応に窮する。傑作であれば、こちらも素直に「素晴らしい!」と太鼓判を押すことが出来るし、逆に駄作であれば、これまた素直に「つまらない!」と壇上から蹴っ飛ばすことも出来るのだが、こういう中途半端な作品は実に面倒だ。肯定と否定が平行線を辿った状態で、気が付くと四時間ばかり夜ふかしの会のコントについて考えている。新年早々、これはまことに時間の無駄としかいいようがないので、いっそどちらも書いてしまおうという結論に至った。

まずは肯定的な意見から。夜ふかしの会のコントは、とてもバカバカしい。こんな下らないことをどういう暮らしを送っていれば思いつくのだろう、というようなことをやっている。例えば、『時間割』というネタがある。二人の中学校教師が来学期の時間割を決めていく行程を、別の二人の教師がユーストリームに配信しながら解説するというコントだ。当初、時間割は教師たちのタイムスケジュールに合わせて、丁寧かつ慎重に組み上げられていくのだが、そのうち教師の一人が生徒からの人気を得るために独断的な時間割を組むようになり、その内容が少しずつ噛み合わなくなってしまう。“中学校の時間割あるある”を取り入れつつもそれが破綻していく展開が、たまらなく可笑しい。

この他のネタも同様だ。同じ学校に通う複数の女子たちと浮気している男子生徒を追求することで、意外な事実が発覚し、漠然と関係性が引っ繰り返ってしまう『2股』。ブサイクな男子生徒が突然のモテ期に突入し、告白を迫る女子たちの行列を作ることになるも、ブサイクな自らをハンサムと勘違いしたくないあまり次々に断っていく『モテ期』。ファミリーレストランで休憩することになった上司と部下が、それぞれの食べたい料理を注文した直後、仕事のことで口論を始めてしまうことで一変する雰囲気を利用した『ファミレス』。特異な状況を生み出す発想力と、それを自然に演じる演技力の高さ。これこそ、夜ふかしの会の個性といえるだろう。

その一方で……ここからは否定的な意見になるが……夜ふかしの会のコントは状況の掘り下げが甘い。せっかくの面白い状況を使いきれていないのである(収録時間の都合上、大幅にネタをカットしている可能性は否定できないが……)。例えば、先で取り上げたコント『時間割』にしても、事態の発端となった生徒人気を意識した教師の存在は、終盤になるとさほど有効的に働いていない。オチも、はっきりいって投げやりで、強引にナンセンスな方向へとまとめてしまっている感がある。正直なところ、夜ふかしの会はメンバー個人の個性という意味では圧倒的に弱い。だからこそ、コントで個性を示す必要がある。しかし、『学級会』のようなシステマティックなコントならまだしも、通常のコントで詰めの甘さを見せているようでは、あまり宜しくない。面白い設定を生み出す力はあるのだから、それらをもっと大切にしてもらいたいと思う。

それはそうとして、映像を収録することの出来るDVDという媒体に、音声だけのラジオコントを収録する必要性は、果たして……? いや、もっというと、鬼頭真也の一人コントを隠しトラックにした意味も、果たして……?


■本編(54分)

「時間割」「2股」「ドッキリ」「モテ期」「仁義なき…」「ファミレス」「うしろ姿」「補習だ!やる気先生!!」「学級会」

■特典映像(16分)

ラジオコント:「足つぼマッサージ」「だとしたらおじさん」「アルバイトを休みたい」「道案内」「夜回り先生

『ドッキリ』NGテイク