菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

うしろシティ・さらば青春の光『cafeと喫茶店』

cafeと喫茶店 [DVD]cafeと喫茶店 [DVD]

(2013/02/27)

うしろシティさらば青春の光

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うしろシティさらば青春の光『cafeと喫茶店』を観る。

うしろシティは別々のコンビとして活動していた金子学阿諏訪泰義によって、2009年に結成された。一方、さらば青春の光はこれまた別々のコンビとして活動していた森田哲矢東口宜隆によって、2008年に結成された。同じ松竹芸能に所属する二組は、それぞれ独特の味わいがあるコンビとしてお笑いファンの間で評価されていたが、『キングオブコント2012』で共に決勝進出を果たしたことをきっかけに、世間の注目を集めるようになる。本作には、そんな二組が2012年12月30日に開催した、収録用合同ライブの模様が収められている。

収録されているネタの内訳は、うしろシティさらば青春の光のコントがそれぞれ三本ずつと、二組によるユニットコントが四本の計十本。そのうち三本が『キングオブコント2012』決勝戦で披露されたネタ(うしろシティ『メンツ』、さらば青春の光『ぼったくりバー』『公園』)で、残りも『オンバト+』や『新人演芸大賞』などの番組で観たことのあるものが殆ど。ベストネタが揃っていると考えるべきなのか、それとも、新鮮味に欠けるラインナップと考えるべきなのか。……少なくとも、『キングオブコント2012』決勝戦の模様はDVD化されているので、わざわざ改めてソフト化する必要は無かったんじゃないかという気はしないでもない。

とはいえ、個人的に大好きな、うしろシティの『太陽』が収録されていたのは嬉しかった。この『太陽』というコントは、金子演じる極端に善良な少年と阿諏訪演じるヘンにワルな少年が入学式へと同行する姿を描いたもので、特にストーリーがあるわけではないのだけれども、なんだか妙に惹きつけられる。思うに、キャラクターが表面的ではなく、その更に深淵があることを匂わせているところに、魅力を感じるのだろう。「みんなが幸せ! それが僕の幸せ!」という台詞に至るまでの、彼の人生が知りたい。一方の、さらば青春の光のコントでは、唯一の未見ネタ『速読』がバカに面白かった。ちょっとでも説明してしまうとネタバレになってしまうコントなので、これは是非とも実際に観ていただきたい。超下らないから。一部の女性は引いちゃうかもしれないけれども、この発想はたまらない。

ただ、本作の見どころはやっぱり、二組によるユニットコントだろう。普段のライブでは披露されない、特定の舞台だから観ることの出来る“ユニットコント”は、そのプレミア感が故に、多少はクオリティが低くても許されがちだ。しかし、本作に収録されているユニットコントは、その全てが上出来だ。カフェと喫茶店のニュアンスの違いを模索する表題作『cafeと喫茶店』を始めとして、路上販売のサクラがターゲットに選んだ少年を中心に巻き起こる波乱を描いた『腕時計』、子どもが学校で殴り合いのケンカをしたと聞いて、慌ててやってきた父親が耳にしたその驚くべき原因とは『ケンカ』などなど、二組それぞれの個性を漂わせる特別なネタが目白押し。個人的に気に入ったのは、『居酒屋』。したたかに酔っ払った二人のサラリーマンが、近いうちに合併するという会社について、机の上の様々なモノで例えようとするネタで、正直言って大した内容じゃないんだけれども、酔っ払った二人とちょっと距離を置いた阿諏訪のツッコミがたまらなく面白かった。

うしろシティさらば青春の光。二組のコントは、似ているようでまったく似ていない、でも根っ子では繋がっている様な不思議な関係にある。それはなんだか、おぎやはぎバナナマンが気まぐれに復活させたりさせなかったりしているお笑いユニット“宇田川フリーコースターズ”を彷彿とする。これからも、この二組によるユニットとしての進展を楽しみにしていきたかった……のだが、御存知の通り、既にさらば青春の光は事務所を離れることが決定している。事務所離脱の理由は今でも不明だが、恐らく本作の特典映像「好きな芸人独り占め・ドキドキバーチャルデート」で、森田が中途半端にボケている姿が松竹芸能上層部の逆鱗に触れたのだろう。……冗談はさておき。それでも、いつか二組はまた舞台で再会するんじゃないかという気がしないでもない。というか、そうあるべきだろう。これで終わりっていうのは、ちょっとねえ……。


■本編(73分)

「cafeと喫茶店(ユ)」「ぼったくりバー(さ)」「メンツ(う)」「公園(さ)」「美容室(う)」「速読(さ)」「太陽(う)」「腕時計(ユ)」「ケンカ(ユ)」「居酒屋(ユ)」

■特典映像(42分)

「好きな芸人独り占め・ドキドキバーチャルデート」