菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

磁石 単独ライブ『レインボー』

磁石 単独ライブ「レインボー」 [DVD]磁石 単独ライブ「レインボー」 [DVD]
(2012/12/19)
磁石

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THE MANZAI 2012』決勝戦にも進出した実力派漫才コンビ、磁石が2012年8月に開催した単独ライブの模様を収録。単独ライブでは漫才のみならずコントにも力を入れている彼らだが、本作では漫才の時間を大幅に引き延ばしており、『THE MANZAI 2012』本戦サーキットへの気の入れようが伺える。実際、これまでの磁石のDVDの中では、一番面白かった。

漫才のクオリティは相変わらず高い。『結婚』『職安』『同窓会』と、等身大の彼らを反映したかのようなテーマで綴られるやりとりは、どこを切ってもしっかりと面白かった。永沢が自然に放り込むナンセンスなボケと、それを的確な言葉でズバズバッと切り込んでいく佐々木のツッコミは、まったく衰えていない。一方のコントも、漫才に比べて明らかに力を抜いてはいたが、漫才における二人のキャラクターがより自由に表現されていて、また違った面白さが楽しめた。中でも、性格がまったく違う友人同士がちょっとしたことで大喧嘩を始めてしまう『市民革命』というコントは、上手く煮詰めればもっと面白くなるのではないかという余白を感じさせた。コント師としてもハネる可能性があるのでは。個人的には、全盛期のさまぁ~ずを思い出した。

とりわけ、強く印象に残っているのは『ペットショップ』という漫才。ネタ自体は、永沢が店員を務めているペットショップに佐々木がやってくるというごくごくシンプルなシチュエーションコントなのだが、このコントに入る前の段階における、いわゆるマクラのくだりが実に素晴らしかった。佐々木は器が小さい、怒りっぽいという話から、飲み会で気に入った女の子がいた時の状況を二人で演じてみせるのだが……。

永沢「あ、ミキもう帰らないと、こんな時間だ!」

佐々木「え、なんでなんで? ウチ近いしさ、泊まっていきなよ」

永沢「え~」

佐々木「え~じゃないよ、何もしないしさ、泊まっていきなよ!」

永沢「……うん」

佐々木「じゃ、行こうか」

永沢「(二人の間に割って入るように)なに話してるの~? 二人だけで~?」

永沢(ミキ)「タカコちゃん!」

佐々木「いや、あの、ミキちゃんと一緒に帰ろうと……」

永沢(タカコ)「ダメだよ~! ミキ、あたしと一緒に帰るんだもんね~! 約束したんだもんね~!」

佐々木「いや、でも、本人がいいって……」

永沢(タカコ)「ダ~メ~だ~よ! ウチら超仲良しだから! アタシんチ今日泊まりに来るんだもん、ね~!」

佐々木「……ブスどっかいけぇ!!!」

THE MANZAI 2012』で披露していた「ブスは待つ!」を彷彿とさせる佐々木の暴発ぶりに、思わず手を叩いて笑ってしまった。ツッコミとしてのポテンシャルが高く、誇張でなく本当にイケメンの佐々木だからこそ成立する職人芸といってしまっていいだろう。……ちなみに、本作のエンドトークにおいて、佐々木はファンの前で結婚したことを初めて公表。佐々木が身を固めた後でこのネタが作られたのかと思うと、なんだか味わい深いものを感じなくもない。……なお、相方の永沢も、その事実を当日伝えられたらしい。……芸人って、なんか結婚したことを隠したがる人が多いけど、どうしてなんだろう。


■本編(101分)

「コント:虹」「オープニング」「漫才:結婚」「佐々木連続ドッキリ」「コント:ラスパー部」「詩の全国大会」「漫才:職安」「PV」「漫才:ペットショップ」「捨て永沢」「コント:市民革命」「再会」「漫才:同窓会」

■特典映像(19分)

「詩の全国大会 完全版」「佐々木連続ドッキリ ロングバージョン」「エンドトーク~おまけ」