菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

オンナノコ電力 単独ライブ『純血』

オンナノコ電力 単独ライブ『純血』世界で唯一キャットファイターによる女二人コントユニット エロ+お笑い+涙=スカートの中!!180分 [DVD]オンナノコ電力 単独ライブ『純血』世界で唯一キャットファイターによる女二人コントユニット エロ+お笑い+涙=スカートの中!!180分 [DVD]
(2012/10/15)
夢子、シャッターチャンスわか 他

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キャットファイターとして活動している“夢子”と“シャッターチャンスわか”によって結成されたコントユニット・オンナノコ電力が、2012年7月12日にネイキッドロフトで開催した最初で最後の単独ライブの模様を収録。そもそもはキャットファイターによるイベントで突発的に結成されたユニットのため、芸人としてのポテンシャルは決して高くない。ところどころの台詞は聞き取りにくいし、演技にもメリハリがないため、ちょっとネタの世界観に入り込みにくいところはある。とはいえ、コントそのものは、凡百の若手芸人たちのネタよりもずっと詰められている。人前に出す以上はちゃんとしたものを見せなくてはならないという、パフォーマーとしての誠意が故のことだろう。たぶん。

本編は、オンナノコ電力による渾身のコントを収めた第一部と、MCに落語家の鈴々舎馬るこを迎えてトークを展開する第二部に分かれている。第一部では四本のコントが披露されているが、ライブ終演後の打ち上げ風景を想定したコント『イメトレ』はオープニングアクトとしてしか機能していないし、天国への観光客がこれまでにやってきたことを二人の天使がチェックする『天国ツーリスト』は客イジリの趣が強い。なので、単独のコントとして成立しているネタは、『覆面一家』と『wink』のみと言ってしまっていいだろう。だが、この『wink』というネタが凄い。その内容は、どこかで聞いたことのあるアイドルデュオ“wink”が刑務所で慰問ライブを行うのだが、そこには実は彼女たちと縁遠くない人物が収監されていた……というもの。まったくテレビ向けではない設定にも関わらず、とてもオーソドックスな人情コントになっていて、二人の演技力の無さにダレる場面はあるものの、実に面白かった。ちなみに、このネタは鈴々舎馬るこが新作落語として引き継いでいくと公言している。設定が設定なので音源化される可能性は低いが、いつかお目にかかれる機会があると嬉しい。

但し、本作の最たる見どころは、本作全体から滲み出ているライブ性にある。通常、お笑い芸人のライブがDVD化される際には、余計な場面はカットされていることが多い。アドリブやミスでその場が盛り上がっていたとしても、映像化した際に当時の面白さが視聴者にも伝わるとは限らないからだ。しかし、本作はそんなことなどお構いなし。コントの最中にも関わらず「暗転でーす」と照明に指示を出したり、着替えのシーンで「あ、(着替える)順番間違えちゃった(笑)」と漏らしたり、もうやりたい放題。一回こっきりのライブなので仕方がないところはあるが、滅多にお目にかかれない要素なので、好事家な方は是非にもチェックすべし。

特典映像には、ライブで使用した小道具や衣装をオンナノコ電力自身が紹介する『コスチューム紹介』と、ライブ当日の二人の姿を追った『舞台裏カメラ』を収録。カメラを前にしているにも関わらず、素で笑ったり泣いたりしている二人の姿を楽しむことが出来る。……本作を俯瞰して見ると、コント、トーク、衣装紹介にバックステージ映像と、お笑いDVDとしては実に正当なつくりになっていることが分かる。ことあるごとに個性を見出そうとややこしいつくりにしているお笑いDVDが少なくない昨今、ここまできちんと演者に対する需要に応えている作品はむしろ珍しい。今後、お笑いDVDを作る際には、とりあえず本作を参考にしていただければと願うばかりだ。……フザけるのは、ちゃんとした作品が作れるようになってからな。

なお、オンナノコ電力を解散した後、二人は本職であるキャットファイターを引退。それぞれがそれぞれの道を歩んでいる。……メモリアルな作品だよな、ホント。


■本編

第一部(約90分):「イメトレ」「オープニング」「覆面一家」「wink」「天国ツーリスト」「エンディング」

第二部(約64分):「オナ電トーク」「お絵描きバトル」「写真トーク」

■特典映像(約26分)

「コスチューム紹介」「舞台裏カメラ」