菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『レイザーラモンRG 「Live in Japan」』

レイザーラモンRG 「Live in Japan」 [DVD]レイザーラモンRG 「Live in Japan」 [DVD]
(2013/11/06)
レイザーラモンRG

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レイザーラモンRG「Live in Japan」』を観た。

レイザーラモンRGこと出渕誠よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属するお笑い芸人だ。1997年にプロレス同好会で知り合った住谷正樹とともにお笑いコンビ「レイザーラモン」を結成。『長崎の平和像』『森光子暗殺計画』『総理大臣VS国民』などのアナーキーなコントを生み出し、地下芸人への道を真っ直ぐに突き進む。しかし、相方の住谷がハードゲイのキャラクター“レイザーラモンHG”でブレイクしたことを受け、これに便乗、リアルゲイのキャラクター“レイザーラモンRG”として、バラエティ番組に出演するようになる。当初はHGのコバンザメとして各方面から非難を浴びせられていたが、試行錯誤の末「あるあるネタ」に開眼。名曲に乗せてあるあるを披露するスタイルが注目を集め、2013年3月には初のあるあるDVD『GREATEST HITS』をリリース。本作『Live in Japan』は、それから約8ヶ月後にリリースされた、あるあるDVD第2弾である。

『Live in Japan』には、レイザーラモンRGが2013年8月17日に東京・新宿RUIDO K4で開催した、あるあるコンサートの模様が収録されている。百戦錬磨のお笑い芸人たちが死闘を繰り広げているバラエティ番組でも、平然とした表情で自身のあるあるネタを披露している彼の姿を見ていれば、そのライブが素晴らしい内容になっていることは想像に難くない。しかし半面、不安もあった。その原因となっているのは前作『GREATEST HITS』である。『GREATEST HITS』はRGのあるあるネタをミュージシャンのPV風に映像化した、あるあるネタのプロモーションビデオ集だ。これに収められている、一昔前の名曲に乗せてあるあるネタを繰り広げているRGの面白さを100%に近い形で引き出していく数々の映像を観た後では、どんなに素晴らしいライブパフォーマンスであったとしても、到底敵わないのではないかという不安が生じたのである。

そんなこんなのフクザツな感情を抱きながら、本編をポチッと再生。

画面に映し出されたのは、ステージの上に立つレイザーラモンRG……ではなく、軽妙なトークを展開するマイケル富岡の姿。DVDを間違えたか?とパッケージを確認しそうになったが、何も間違ってはいない。実は『Live in Japan』の本編は、ミュージシャンのライブ映像を放送しているMTVを再現した作りになっているのである。マイケル富岡はそのVJ(ビデオジョッキー)として、本編に出演しているわけだ。前作『GREATEST HITS』でも、あの小林克也をDJに招いてラジオ番組を再現していたが……その徹底したディティール作りに唸らざるを得ない。マイケルもノリノリで、本作がワールドツアーの最終公演だという設定を忠実に守り、「あるあるの知名度が日本に留まらず、今や世界に轟いている現実!」と断言している姿が早くも面白い。

そんな素晴らしきマイケル富岡の紹介コメント、そしてやたらと壮大なオープニング映像を経て、満を持してライブがスタート。一発目に披露されたあるあるは、玉置浩二の名曲『田園』に乗せて、『国際マラソンあるある』と『帰省ラッシュあるある』の2本立て。1曲目に相応しいハイテンションな選曲に対し、ちょっとマニアックなテーマのあるあるというバランス感がたまらない。相変わらずの高い歌唱力で、「あるある言いたい」と訴えかけた言葉に作り直された替え歌が繰り広げられるバカバカしさもサイコーだ。その一方で、サビの直前に放りこまれた「毎日、あるある頑張っていりゃ~♪」という替え歌に、あるあるネタで注目を集めたRG自身を投影しているようにも感じ取られ、ちょっとだけグッときてしまったり。

その後もRGによる至極のパフォーマンスは止まらない。ちょっとだけ涙を誘うWANDS『もっと強く抱きしめたなら』に乗せた『片思いあるある』、「あるあるの森の奥深く……」というナレーションで始まる聖飢魔Ⅱ蝋人形の館』に乗せた『ふるさとあるある』、原曲の哀しさがあるあるによって妙に所帯染みてしまっているTHE YELLOW MONKEY『JAM』に乗せた『社員食堂あるある』など、数々の名曲を完全に自らの“あるある”にしていた。個人的には、DA PUMP『Crazy Beat Goes On!』に乗せた『オージービーフあるある』が印象に残っている。曲の懐かしさもさることながら、「オージービーフ」というコアな狙い目のテーマ、そしてなにより4人の女性ダンサーを従えたキュートなパフォーマンスが似合わない! ……もとい、だからこそ面白い!

鑑賞前に感じていた不安はなんだったのか、映像に頼らずに自らのパフォーマンス能力だけで観客を惹きつけていくRGの地力を楽しむことの出来る、実に素晴らしい作品だった。あるあるネタそのもののクオリティも相変わらず高かったし、歌も上手かったし、曲ごとにいちいち衣装やカツラを着替える様子がまたなんともいえる面白かった。唯一、残念な点を挙げるとしたら、前作の副音声でツッコミを担当していた浅越ゴエが不在であることだろう。前作では、RGの完成された世界観に彼がツッコミを入れてくれたおかげで、作品そのものの持ち味とはまた違った味わいをひつまぶし的に楽しむことが出来たのだが……次回作では是非とも参加していてもらいたい。


■本編(82分)

「『田園』国際マラソンあるある/帰省ラッシュあるある」「『もっと強く抱きしめたなら』片思いあるある」「『サヨナラ』カバンあるある」「『蝋人形の館』ふるさとあるある」「『Bye For Now』係長あるある」「『JAM』社員食堂あるある」「『Crazy Beat Goes On!』オージービーフあるある」「『ENDLESS RAIN』オシャレなカフェあるある」「『星空のディスタンス』みそ汁あるある」「『風になりたい』からあげあるある」「【日本盤限定ボーナストラック】『One more time,One more chance』パントマイムあるある」

■特典映像(24分)

レイザーラモンRG×マイケル富岡 トークセッション」

「予告編集」