菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

どぶろっく『もしかしてだけど、ミュージックビデオDVD』

もしかしてだけど、ミュージックビデオDVDもしかしてだけど、ミュージックビデオDVD
(2014/07/02)
どぶろっく

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カミツキガメを無許可で飼っていたことがニュースになって、ちょっと向かい風が吹きつつあるどぶろっくのプロモーションビデオ集。『もしかしてだけど』を含むオリジナルソング全9曲が収録されている。ある状態になって初めて気が付いたことを高らかに歌った『わかったことがある』、抑えられない性欲の行き場を犯罪行為に向けるな!と訴える痴漢撲滅ソング『やってはいけない!』、女性のパンティラインに対する熱い思いをぶつけた『魅惑のパンティライン』など、それぞれ多種多様のテーマを取り扱っているが、(案の定)全体的に下ネタ路線の楽曲が多め。加えて、「さわやかなポップ系の曲に載せて、歌唱力の高い二人がバカバカしいことを熱唱する」ギャップによる笑いで構成されていることが多いため、はっきり言って途中で飽きる。かといって、映像にこだわりがあるようでもない。エハラマサヒロレイザーラモンRGのプロモーションビデオ集が発表されて以降の作品としては、正直ちょっと物足りなさを感じた。

その中でも、やはり『もしかしてだけど』の完成度は抜群に高い。日常的に目にすることの多い第三者の言動(フリ)が、全て自分に興味を示しているがための行動として強引に捉えてしまう(オチ)構成は、「なぞかけ」を彷彿とさせる、確実に的を射抜く鉄板のフォーマットだ。また、プロモーションビデオのアニメーションが絶妙でいい。パソコンのイラスト機能か『マリオペイント』を使ったようなヘタクソな絵なのに、女性だけは妙に艶めかしいアンバランスさがたまらない。……とはいえ、『もしかしてだけど』で笑えないという人がいても、それはそれでおかしくない話でもある。あらゆる文化的表現と同様、お笑いのネタも個人の感性との相性に大きく左右される分野だ。故に、痴漢などの性犯罪に関する知識を抱いていようといまいと、彼らのネタで笑える人は笑えるし、笑えない人は笑えない。逆に言えば、中高生だろうとなんだろうと、面白いと思えば笑えばいい。決して異常ではない。お笑いとはそういうものであるし、そういうものでなくてはならない。第三者が「これを笑うということは云々」と口にして、作品に触れたことのない人に余計な先入観を植え込むことにこそ、私は不安を覚える。個人的に嫌いだというのは自由だし、彼らや彼らのネタを批判するのも大いにけっこうだが、第三者が安易に観客の意識に介入することは許されるべきではないと私は思う……おっと、話が逸れた。

『もしかしてだけど』以外では、ある特定の状況にある女性の“あるある”を歌った『○○な女』がなかなかいい。テツandトモの『なんでだろう』の様なコミックソング仕様ではなく、メロディに載せて女性あるあるを歌っているだけなのだが、下ネタに走らずに、なかなかイイ着眼点を見せている。街中の様々な女性たちを撮影した映像もステキだ。ミュージシャンのPV風に作り上げている他の作品よりも、制作者の気合が感じられる。さりげに倉持由香が出ているのも、個人的に高ポイント。……割と好きなの。

特典映像が無いのは残念だけれど、2,000円という価格設定を考えると、むしろ妥当といえるのかもしれない。正直、エハラやRGのプロモーションビデオ集は、値段に対して内容が豪華だったし。ただ、一つだけ不満なのが、パッケージ裏に描かれている相撲取りがプロモーションビデオに登場しないこと! せっかく、あんなインパクトのあるアングルで描いているのに、勿体無いよなあ……。


■本編【約34分】

「もしかしてだけど」「わかったことがある」「僕なりのプロポーズ」「やってはいけない!」「魅惑のパンティライン」「新・もしかしてだけど」「○○な女」「もしかしてだけど ~Maybe…Yes,I’m sure!~」「魅惑のパンティライン(レッスン・バージョン)」