菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ラバーガールsolo live+「GAME」』

ラバーガールsolo live+「GAME」 [DVD]ラバーガールsolo live+「GAME」 [DVD]
(2013/11/27)
飛永 翼、大水 洋介 他

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ラバーガールsolo live+「GAME」』を観る。

ラバーガールスクールJCAで出会った飛永翼と大水洋介によって、2001年に結成された。その不思議なコンビ名は、ロックバンドGRAPEVINEの楽曲に由来している。結成当初はボケとツッコミがあやふやなナンセンスなコントを演じていたが、後に大水がボケ・飛永がツッコミと役割を明確にしたシチュエーションコントへとシフトチェンジ。少しずつ評価され始める。

若手芸人の登竜門『爆笑オンエアバトル』(その後『オンバト+』に改題)には2005年より参戦、レギュラー放送を終了する2014年3月まで出場し続けた。2010年には日本一のコントを決する『キングオブコント2010』決勝戦に進出、1回戦では8組中3位という高評価を得るも、2回戦で失速し、総合順位は5位という結果に終わった。それから4年後の2014年、『キングオブコント2014』で二度目の決勝進出を果たす。4年の月日を経て、彼らがコント師としてどのような成長を遂げたのか。期待が寄せられている。

本作には、ラバーガールが2013年8月19日に銀座博品館劇場で開催した、1回限りの単独公演の模様が収められている。過去のソロライブとは違い、作・演出に細川徹氏を迎えているところが注目点だ。細川氏といえば、関東のコント界をリードし続ける大御所トリオ“シティボーイズ”や自身プロデュースによるコントユニット“男子はだまってなさいよ!”、大堀こういちと温水洋一によるユニット“O.N.アベックホームラン”など、様々な笑いの舞台を手掛けてきたナンセンスコントの名手だ。そんな細川氏が、オーソドックスもナンセンスも上手く演じてきたラバーガールと、どのような舞台を繰り広げるのか。期待に胸を膨らませながらの鑑賞となった。

端的に言うと、面白かった。面白かったとしか言いようがないほどに、面白かった。あまりに面白かったので、誰かに本作のことを薦めたいと思い、いつもの様にこうしてブログの記事にしようとしたのだが、どうにも上手くいかない。思うに、無意識のうちに私は、この面白さを文章で説明することを惜しいと感じているのだろう。世の中には、語りやすいお笑いと、語りにくいお笑いがある。例えば、ラーメンズのコントなどは、あちらこちらで頻繁に語られている印象を受ける。彼らの笑いは明確な理論に基づいているため、非常に語りやすいからだ。だが、本作は、実になんとも語りにくい。もちろん、そこで描かれている笑いにも、ラーメンズのそれと同様に確固たる理論が存在しているのだろうが、それを暴きたくないのである。それを暴くことで、私は二度とこのコントで笑えなくなってしまうのではないか、という恐れが、このコントの魅力を語りたくない気持ちにさせているのだ。

例えば、オープニングを飾るコント『リアルパックマン』で、パックマンに扮した大水があのアイテムを模しただろうシュークリームを食べ続ける姿の、何処がどう面白いのかなんて、いちいち説明したくない。リアリティを追求したためにゲームならではの面白さが失われてしまった恋愛シミュレーションゲームをプレイする様子を描いた『恋愛シミュレーションゲーム ラブリアル』は、リアルしか認めないような懐の狭い人たちの意見に対するパンチラインの様に思えなくもない、なんて深読みしたくない。大金を得るために闇のゲームに参加する『ゲーム』が、どっかのなんとかいうマンガのパロディなんじゃないかという分析もしたくない。無意味なことに意味があるように語ってみせることこそが無意味なのではないか、と感じさせられるほどに無意味な笑いとして思考停止していたい。ちなみに、一番面白かったのは、「この前の飲み会で大水が急に帰った理由」を、パワーポイントを使って詳しく説明する『パワーポイント』。ちょっとした説明で片付いてしまうような話を紆余曲折に掘り下げていく姿は、しかし病的な狂気を感じさせない、ただただ面白いコントだった。今度の『キングオブコント2014』でやらないだろうか。間違いなくウケると思うのだが。

ところが、これらの語りたくないバカバカしい笑いの数々が、最後のコント『ゲームセンター』で思わぬ終結を迎える。巧みな構成で観る者を魅了するシティボーイズのコントを愛して止まない私は、いわゆる大団円的なオチを迎えるコントに対して厳しい評価を下すことが少なくないのだが、この塩梅は実に見事だった。ところどころで放り込まれる、聞き覚えのある音やキャラクター、とはいえ、そこに押しつけがましい感動はない。『ゲームセンター』というコントは、あくまで『ゲームセンター』というコントとして自立している。だからこそ、それは安心して笑い飛ばせる。その大団円をニヤニヤしながら受け入れられる。こういう粋な配慮が鈴木おさむの演出には欠けているんだよなあ……まあ、あれはあれで、あのくらい露骨な方が観客には伝わりやすいということなのかもしれないが……って、余談。

これまでのラバーガールを知らない人はもちろんだが、知っている人にこそ観てもらいたい作品である。ここにいるのは確かに私たちの知っているラバーガールなのだが、演じているラバーガールは私たちの知らないラバーガールだからだ。その変わらない笑い、でも確かに違う食感の面白さを楽しんでもらいたい。


■本編【84分】

「リアルパックマン」「恋愛シミュレーションゲーム ラブリアル」「サッカーと二万」「ゲーム」「妖精がいる部屋」「パワーポイント」「ギャル男たちの発想が世界を救う」「ゲームセンター」