菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『2700 NEW ALBUM 「ラストツネミチ ~ヘ長調~」』

2700 NEW ALBUM 「ラストツネミチ ~ヘ長調~」 [DVD]2700 NEW ALBUM 「ラストツネミチ ~ヘ長調~」 [DVD]

(2013/05/15)

2700(八十島弘行・ツネ)

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「彼らは歌ネタだから……」という理由で放任し続けた結果、そこに生み出されてしまった混沌に、誰が責任を取ってくれるというのだろう。『右ひじ左ひじ交互に見て』『キリンスマッシュ』などの名曲を収録した傑作選『2700 BEST ALBUM 「SINGLES」』からおよそ1年3か月後にリリースされた本作は、2700の“歌ネタ”というカテゴリーに収まっているが故に自由すぎる世界観が暴発した、なんともアヴァンギャルドな作品になっている。

とにかく意味が分からない。ツネを色んな角度から紹介し続ける『ツネミチヒロシ』が熱唱されたかと思えば、続けざまにまあまあ嬉しい時にだけやるという『オリジナルガッツポーズ』をゆるやかに連発。そして、修行で行き詰まって寿司職人になることを諦めた弟子に、親方が『足だけチアガール』でエールを送り、八十島が週末に見かけた『スマート最強高校生』のことをラップで紹介し、『アイアムリズムナンバーワン』を自称するタマネギ先生はパンチばかりを繰り出し続ける。……何を言っているのか、自分でもよく分からない。何も分からない。分かりたくもない。演っている当人たちも分かってもらえているのか不安だったようで、ネタ中に八十島が思わず「付いてきていますか?」と観客に語りかける場面も。しかし、この意味の分からないパフォーマンスの数々が、どれもこれも非常に面白い。意味の分からなさを構造のシンプルさが上手くフォローしているおかげだろうか。いや、むしろ、構造がシンプルであるからこそ、この意味の分からない世界を笑いへと昇華できているというべきか。

個人的には『お風呂の入り方』が印象的。八十島が『お風呂の入り方』を熱唱し、その後で歌詞の内容の通りにツネが動いてみせるというネタで、少しずつテーマからかけ離れていく様が非常に面白かった。ツネがただのツネじゃなくて外国人に扮しているツネだったことも、その可笑しさに繋がっていたように思う(単にカタコト日本語が私のツボというだけなのかもしれない)。特典映像に収録されているMilkey Bunny(益若つばさ)とのスペシャルセッションも、2700のネタとは違う意味で混沌の様相を呈しており、非常に充実した作品になっているといえるだろう。どういう人選だ、しかし。

ただ、ライブ映像の幕間に収められている、制作ドキュメンタリーの長さには不満が残った。少しくらいなら許容できるが、本編の収録時間のうち、半分がライブ映像で半分がドキュメンタリーというのは、流石にちょっと長すぎる。前作『SINGLES』でもドキュメンタリーが幕間に収録されていたが、あれはライブで披露されている歌の曲数(全24曲!)が多いから、まだ受け入れることが出来た。しかし今回は新曲が10曲のみ。それも一曲ごとに挟み込まれる。流石に多い。多いし長い。長い割には面白くない。いいとこ無しだ。おかげで、せっかく2700の混沌とした楽曲に打ちのめされていても、すぐさま正気に戻ってしまう。最初から最後まで彼らの音楽に狂わせておくれよ! ……まあ、チャプター画面から、本編ネタだけ観られるように設定出来るんだけど。そういうことじゃないような。


■本編【121分】

「ツネミチヒロシ」「オリジナルガッツポーズ」「秘密」「足だけチアガール」「強く咲く花」「スマート最強高校生」「お風呂の入り方」「アイアムリズムナンバーワン」「心の声」「ラストツネミチ~ヘ長調~」

■特典映像【33分】

「2700×Milkey Bunny(益若つばさスペシャルセッション」

「ツネのこれがやりたかってん」

「2700 JAPAN TOUR「THIS IS 2700」横浜公演ライブダイジェスト」