菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ラッスンゴレライ』(8.6秒バズーカー)

ラッスンゴレライ [DVD]ラッスンゴレライ [DVD]

(2015/03/18)

8.6秒バズーカー

商品詳細を見る

『ラッスンゴレライ』で注目を集めているお笑いコンビ、8.6秒バズーカーの初めての映像作品集。彼らの代表作であり不朽の名作となるであろう『ラッスンゴレライ』を、いわゆるライブ映像ではなくプロモーションビデオとして収録している。ネタの面白さよりもリズミカルで楽しいパフォーマンスの方を前面に押し出していこうという考えなのだろうか。実際問題、彼らのネタがやたらとYouTubeなどで一般の人たちにカバーされているのは、その耳心地の良さによるところが大きい。プロのミュージシャンが世に送り出した楽曲をカラオケや路上で熱唱するように、彼らは芸人のネタをご陽気に歌い踊っている姿を配信するのだ。お笑い好きとしては違和感しか覚えない状況だが、先輩芸人たちに『ラッスンゴレライ』をカバーされても平気そうな顔をしている彼らは、どうやらそんな現状を素直に受け入れているらしい。プロ意識の問題なのか、時代の変化によるものなのか、色々と考え込んだ果てに諦めてしまったのか、いずれにしても興味深い。

本作には、通常の『ラッスンゴレライ』に加えて、馬と魚とコラボした『ラッスンゴレライ ~アコースティックVer.~』、AFRAヒューマンビートボックス)とエグスプロージョン(ダンサー)とコラボした『ラッスンゴレライ ~クラブRemix~』を収録。3パターンも同じネタを見させられたら流石に飽きそうなものだが、それぞれまったく違った色合いになっていて、完全に別モノとして楽しめた。個人的にはクラブRemixが最高にクールで、本当に格好良かった。クラブハウスと相性バツグンだ。映像も凝っていて、通常の『ラッスンゴレライ』はカットごとに場所が変化(街中だったり、銭湯だったり、水族館だったり……)していて、それぞれの場所ごとに起こるちょっとしたアクションがたまらなく可笑しかった。

これら3パターンの『ラッスンゴレライ』だけではなく、『お弁当』『イマジネーション』などのネタも収録されているところも嬉しい。ただ、これらのネタはプロモーションビデオ仕様ではなく、何故か部屋の片隅で撮影されたものが収録されている。これまでの『ラッスンゴレライ』の映像を観た後だと、なんだかPV撮影の合間にちょこっと披露されたような印象を受けてしまうのだが、これもまた、なかなかどうして面白い。お弁当に詰め込む作業で二人が揉め始める様子を歌にした『お弁当』は、ネタの中身の無さを楽曲の切り替えの上手さでフォローしている一品。とにかくキレ味が最高で、その勢いでついつい笑ってしまう。『イマジネーション』は二人が有りそうで無いものを演じて、観客に想像させるショートコント。こちらは内容に未熟さが見られたが、やたらと軽快なブリッジや途中で二人が素の状態になってしまう構成に、今は無き底ぬけAIR-LINEの流れを感じさせられた。いつかテクノに合わせて体操とかやってくれないかな。あの衣装でテクノとか言い始めたら、物凄くYMOっぽいけど。

というわけで、28分という短い収録時間ながら、なかなか満足の出来る内容だった。正直、鑑賞する前は、3パターンの『ラッスンゴレライ』に不安しか感じられなかったのだけど、それぞれゲストがいい仕事をしてくれていたし(特に馬と魚はエンディングテーマまで担当。8.6秒バズーカーのDVDなのに!)、映像もきっちり凝っていて、差別化されていたのが本当に良かった。……とはいえ、これはあくまでも、自己アピールするための映像作品としての評価に過ぎない。ちゃんとした芸に対する評価は、この時点ではまだまだ決めつけられない……と思っていた矢先、8.6秒バズーカーの単独ライブの模様を収めた映像作品がリリースされることが決定したらしい。いやー、楽しみだ。


■本編【28分】

「ラッスンゴレライ」「ラッスンゴレライ ~アコースティックVer.~ featuring 馬と魚」「ラッスンゴレライ ~クラブRemix~ featuring AFRA & エグスプロージョン」「お弁当」「イマジネーション」「INTERVIEW」