菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『バンビーノ「#ダンソン」』

バンビーノ #ダンソン [DVD]バンビーノ #ダンソン [DVD]
(2015/03/31)
バンビーノ

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キングオブコント2014』決勝のステージで演じたコント『ダンスィングフィッソン族』でのダンスが話題のお笑いコンビ、バンビーノの初めての映像作品集。同時期にリリースされた8.6秒バズーカー『ラッスンゴレライ』がプロモーションビデオ風の凝った作品になっていたのに対し、本作は無観客状態のステージでコントが演じられる様子をシンプルに撮影している。8.6秒バズーカーの方に予算を持っていかれてしまったのだろうか。

本編には、『ダンスィングフィッソン族』を含む六本のコントを収録。パッケージには“世界に通用する実力派コント師”というとてつもない煽り文句が明記されているが、そのクオリティは比較的粗め。セルフタイマーで記念写真を撮影しようとするたびに何処からともなく幽霊が現れて写り込んでくる『記念写真』、最初から出てきた単語を全て記憶しなくてはならない“覚えしりとり”の要領で“覚え効果音”というゲームで争う二人のやりとりを描いた『サウンドバトル』、ステップを踏んでいれば誰でも受け入れられる街“ステップストリート”にギャングがやってくる『ステップストリート』など、設定が独創的で面白いのに対し、それらがしっかりと咀嚼し切れていないように感じられた。肝心の『ダンスィングフィッソン族』も、オチに使われている曲が版権上の理由からか、似たようなオリジナル曲と差し替えになっていて、しっくりこない。姫神のあの幻想的な曲だからこそ、オチが引き締まるのに……。

そんな中、妙に印象に残ったネタが『鈴おばちゃん』。捨てられた赤ん坊を、足に大きな鈴を結わえ付けた“鈴おばちゃん”が拾って帰ろうとしているところへ、慌てて母親が引き止めにやってくる……という、とてもシンプルな設定のコントだ。とにかく、大きな鈴を足に結わえ付けている“鈴おばちゃん”のビジュアルが独特の不気味さを放っていて、どうにも忘れられない。鈴という和風のアイテムを選んでいるところがまた土着的で、なんとも味わい深いのだ。ことによると、彼女は妖怪か何かの類なのかもしれない……。

特典映像は「みんなで踊ろう“ダンソサイズ”」「ダンソン in シドニー」「ダンソンやってみた」「ダンソン大解剖」とダンソン尽くしのラインナップ。エクササイズ風にダンソンの動きをレクチャーする「みんなで踊ろう“ダンソサイズ”」とダンソン中の二人の目線を小型カメラで撮影した「ダンソン大解剖」に関しては、ただただ『ダンスィングフィッソン族』という名作コントを消費しているだけで、特に感想は無い。バンビーノがオーストラリアでパフォーマンスを敢行するまでの道程を追った「ダンソン in シドニー」は、ドキュメンタリーというよりもオフショット集といった印象を与える映像になっていて、全体的にかなりユルめ。ただ、カンガルーにダンソンを仕掛ける場面はなかなか面白かった。バンビーノが周囲の芸人たちにダンソンをやってもらう「ダンソンやってみた」はお笑い好きなら必見。アクティブな動きをするイメージのない山添寛(相席スタート)やじろう(シソンヌ)がダンソンに挑むという、なかなか珍しい映像が楽しめる。とりわけ西村ヒロチョのキレの良さは一見の価値あり。ヒロチョはダンスやってるからな。

映像作品として完成されていた8.6秒バズーカー『ラッスンゴレライ』と比較すると(同時期にリリースされているので、否が応でも意識せざるを得ない)、どうしても見劣りする本作。特にコントを無観客状態で撮影している本編が致命的だ。どんなにエネルギッシュにコントを演じていても、観客のリアクションと合わさって生じるライブならではのグルーヴ感には程遠い。実に勿体無い。とはいえ、コントの粗さから察するに、彼らにはまだまだ伸びしろがある。更なる飛躍の後に、是非とも非の打ち所がない傑作を送り出してもらいたいものである。いや、ホント……。


■本編【18分】

「記念写真」「サウンドバトル」「鈴おばちゃん」「ステップストリート」「セクシーショータイム」「ダンスィングフィッソン族」

■特典映像【55分】

「みんなで踊ろう“ダンソサイズ”」「ダンソン in シドニー」「ダンソンやってみた」「ダンソン大解剖」