菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

バナナマン×東京03『HANDMADE WORKS』(2013年8月7日)

バナナマン×東京03『handmade works live』 [DVD]バナナマン×東京03『handmade works live』 [DVD]
(2013/08/07)
バナナマン東京03

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2013年に結成20周年を迎えたバナナマンと、同じく2013年に結成10周年を迎えた東京03が、その素晴らしき偶然を祝してユニットコントライブを開催する。……そんな話を耳にしたとき、私はそのスペシャルな響きに打ち震えた。片や、バラエティ番組で圧倒的な人気を博しつつも年に1度の単独ライブは決して欠かさない、東京コント界の至宝。片や、ライブで全国ツアーを展開することが通例となっている、トリオコントのホームランバッター。そんな二組がタッグを組んで、コントライブを開催する。これはもはや“事件”と言っても過言ではない。

しかし、いざ蓋を開けてみると、そこには普段と変わらない彼らの姿があった。真っ白に染められたステージ、より記号的に洗練された小道具、プロジェクションマッピングを駆使した映像パフォーマンスなどなど……二組が合体してコントを演じることの特別さを物語る演出は随所に施されていたが、バナナマン東京03も、まるで通常の単独ライブを演じているかのように、ごく淡々と、それでいて確実に笑いを獲っていた。その様は、一見すると手抜きの様にも見えたが、実のところそうではない。

特別な何かが行われる時は、普段は決してやらないようなことに不用意に挑戦してしまいがちだ。その結果、例え失敗してしまったとしても、それはあくまでも特別なのだから……と、観客のナマ温かい視線でもって許されてしまうことも少なくない。だが、彼らはそれをやらなかった。彼らはバナナマン東京03のコントが自然に融合するように切磋琢磨し、決して違和感が生じない笑いの世界を生み出すことに徹したのである。これぞまさに職人芸、いぶし銀の味わいだ。

“手作り”であることの必要性について考察したオープニングコント『工房』、友情を確かめ合っていた仲間たちが良からぬ人物の参入によって良からぬ状況へと陥っていく様子を交わし合った手紙の文面だけで表現した『手紙』、養鶏場のプリンを作ろうと考えた日村がその試作品を社員たちに試食してもらうも問題点ばかりが浮き彫りになってしまう『日村養鶏場』など、どのネタも非常に面白い。ただ、お互いがお互いを尊重し合った結果なのか、両者の魅力の一つである「シニカルな笑い」が控え目になっていることが、少しばかり残念でもある。東京03のコントでよく目にする日常風景の世界にバナナマンが加わったら、どんな笑いになっていたのか……観たかったなあ。

特別な年に結成された特別なユニットの特別じゃない普遍的な笑い。その根底には、彼らのコントに対する愛と情熱が静かに燃え上がっている。これから10年後の2023年、結成30周年を迎えたバナナマンと結成20周年を迎えた東京03は、このユニットを再結成してくれるのだろうか。彼らがコントを愛し続けていてくれたなら、きっと。

あ、ところでタカちゃんって何してるひ(以下自粛)


■本編【130分】

「工房」「手紙」「何でショー」「日村養鶏場」「手作りアニメ 手作り野郎 handmade workers」「タカちゃんとバンと3人」「ストリート」「逃げ癖のある男」「ゲーム」「工房」