菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『オードリーのまんざいたのしい』(2014年2月11日)

『オードリーのまんざいたのしい』

2013年8月15日から18日にかけて、紀伊國屋ホールで開催された漫才ライブ「オードリーのまんざいたのしい2013」の模様を収録。こちらで購入可能。

今やテレビタレントとして不動の地位を築き上げているお笑いコンビ・オードリー。その評価を著しく向上させたのは、『M-1グランプリ2008』での活躍が大きなきっかけだった。敗者復活戦を勝ち上がり、NON STYLE、ナイツ、笑い飯U字工事といった実力者たちを抑え、一回戦をトップで通過して最終決戦へと駒を進める姿に、昨年大会の優勝者・サンドウィッチマンを彷彿とした人も少なくなかっただろう。結果、優勝トロフィーはNON STYLEの元へ渡ったが、彼らの存在は多くの人々の記憶に残るものとなった。しかし、オードリーは資格があるにも関わらず、翌年のM-1への出場を辞退。お笑いタレントとしての道を全速力で駆け抜けていった。

そんな彼らが2013年に開催した漫才ライブには、漫才師・オードリーの魅力が凝縮されている。若林の話に春日が的外れなツッコミを入れるベーシックなスタイルから、春日が特定の単語しか言わなくなってしまうポンコツ漫才へと転換する『ハワイ』。春日が様々な媒体の記者を演じて、結婚記者会見を開いた若林を翻弄する『記者会見』。雪山で遭難してしまった若林の前に現れた春日が、持参していたパンを三万円で売りつけようとする『遭難』。若林が富士登山の最中に出会った人たちを春日が次々に演じてみせる『富士山』。自身を芸人に誘った若林のことを激しく責め立てる春日の口調が何故かオネエ言葉な『本性』。同窓会にもしもオードリーが出席したら、どういうことになるのかを漫才コントでやってみた『同窓会』。世間に知られているオードリーから、ラジオリスナーだけが知っているインモラルなオードリーまで、実に様々な側面から切り取られている。

私的には『遭難』がお気に入りだ。雪山で遭難している若林に春日がパンを高額で売りつけようとする様は、春日のケチで打算的な側面を上手く煮詰めている。米倉涼子のくだりのサイテーぶりなどは、腹を抱えて笑った。最初は春日のケチさに焦点が当てられているが、徐々に春日の要求する金額を値下げする流れになっていく、この構成も絶妙だ。だが、このネタの最も注目すべき点は、極限状態に陥っているという設定を利用して、存分にブッ壊れていく若林である。なかなかパンを渡そうとしない春日に対して「パンくれよ!」「パンくれよ!」「パンくれよ!」と壊れたオモチャのように連呼する姿はなかなかのものだった。ただ、若林は他の漫才でもちょこちょこ、普段のバラエティでは決して出さない側面を見せていた。漫才の導入部分でさらりと吐き出される強めの毒……たまらないものがあった。

このライブ本編に加えて、本作には幕間映像として「パジェロvs春日(四本勝負)」「大家×春日 対談」、特典映像として「春日語怪談」「グッズ紹介&お花紹介」が収録されている。若林が運転するパジェロと春日が相撲で勝負するシーンなどはなかなかに狂気的でオススメなのだが、オードリーの二人がそれぞれグッズやお花を紹介しているところにちょいちょい見切れようとするゴン(ビックスモールン)を注意する距離感の良さもなかなか味わい深い。頑張れ吉留明宏。


■本編【97分】

「ハワイ」「オープニング」「記者会見」「パジェロvs春日 ~100m走~」「遭難」「パジェロvs春日 ~綱引き&相撲~」「富士山」「大家×春日 対談」「本性」「パジェロvs春日 ~騎馬戦~」「同窓会」

■特典映像【19分】

「春日語怪談」「グッズ紹介&お花紹介」