菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ジャルジャルのけじゃら』(2015年11月18日)

2015年10月7日から12月23日にかけて12週連続でリリースされる、ジャルジャル自選コント集の第七弾。

 

タイムカードを押すために事務室へと入ってくるバイトが、いつも押して開けなくてはならないドアを引こうとしてしまうので、その度にガタガタとやかましい音を立てている『ドア』。夏休み中で何もやることのない二人の大学生が、「夏季」「柿」「牡蠣」のイントネーションの違いで戦い始める『暇な大学生~横チンと辻村~』。ロックミュージシャンのライブ中、テンションの上がった客がその勢いに任せて……『熱狂的ファン!』。テーブルを駆使したパフォーマーとイスを駆使したパフォーマーによる夢のコラボレーションが遂に実現!『テーブル職人とイス職人のショー』。雑誌の記者が落語の魅力を若い世代に伝える記事を書くために、とある大御所の落語家へのインタビューを始めると、彼は「落語の魅力は説明して伝わるものではない」と言って、記者に自作の落語を聴かせ始める『創作落語「おでこ合わせ」』。以上、五本のコントを収録している。

 

自身が生み出している騒音に全く気付いていない無神経なバイトに悩まされる神経質な店長を描いた『ドア』は、日常に起こり得る状況を極端に表現することで、その苦悩を笑いへと昇華しているコントだ。とはいえ、きちんと不快感を説明していない時点で、この店長にも問題があるような気がしないでもないが。『暇な大学生~横チンと辻村~』は設定が秀逸。この無駄で無意味な攻防戦は、人生において最も時間が有り余っている大学生という設定だからこそ起こり得る。その適度なリアリティが、コントをよりバカバカしく広げてくれる。『熱狂的ファン!』はネタバレすると面白くないタイプのコント。彼らのネタにしてはオーソドックスな内容で、それが逆に違和感を残すかも。オリジナルのパフォーマンスを実在しているかのように繰り広げる『テーブル職人とイス職人のショー』は、ディティールの細かさから生まれる妙な説得力と、後に何も残らない無意味さが味わい深いコントだ。2012年7月に松山で鑑賞したライブ『ジャルっ10じゃねぇよ!』でも披露されていたらしいのだが、あまりの意味の無さが故か、まったく記憶に残っていなかった。『創作落語「おでこ合わせ」』は落語の問題点(?)の一つである「長さ」を皮肉ったかのようなコントで、落語好きとしてはちょっと心をザワつかせるものだった。漫才、コント、落語、あらゆる芸能に身を置く半端者たちを皮肉る彼らの行きつく先は何処なのか……?

 

これらのコントに加え、『テーブル職人とイス職人のショー』に登場する二人の職人たちの作業風景を追ったドキュメンタリー『日本で唯一の職人~知られざる二人の過去~』を特典映像として収録。かつて袂を分かった師弟がコラボレーションに踏み切るまでの道程が描かれており、本編のコントのディティールをより深く掘り下げた内容になっている。そして、この映像にも、やはりあの男が……。

 


■本編【31分】

「ドア」「暇な大学生~横チンと辻村~」「熱狂的ファン!」「テーブル職人とイス職人のショー」「創作落語「おでこ合わせ」」

 

■特典映像【14分】

「日本で唯一の職人~知られざる二人の過去~」